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2014.11.17  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

働きたくて仕方がなかった

──19歳の若さで自分で考えて企画書を作って、すぐ行動するのはすごいですね。

小学生の頃から働きたくてしかたがなかったのです。母が小学校の時に起業していたので、日常的に大人が働く背中を見ていました。お金を稼ぐのって大変そうだけど、自分のやりたいことを仕事にするのはとても楽しそうだな、と感じていました。ですから、自分の好きなことを仕事にして働きたい、そして自分が生きていくのに必要なお金は、早く自分で稼げるようになりたいなあと思っていました。

当時は毎月決まったお小遣いをもらえるわけではなかったので、ほしいものがあるときは、なぜそれが必要なのかを両親に伝えていました。それが伝われば買ってもらえるという感じでしたね。また、お正月にもらったお年玉で、年間で必要な分を考えて計画的に使っていました。大学の学費も入学して最初の1年分は母が払ってくれたのですが、その後の大学2年生から4年生まで、大学院の2年間分は教育ローンを組んで借りて今、毎月返済をしています。

あとは、ほしいものがあれば懸賞に応募して当てていました。例えば、クリスマスツリーやホテルの宿泊券などもその一つでした。そのとき、少しでも当選の確率を上げるためにハガキのコメント欄に、なぜクリスマスツリーがほしいのか、なぜ父と旅行に行きたいのかという思いを一生懸命に書いていました。何もしなければ可能性が0なので、小さい頃からとにかくやってみようという考え方でした。どうしたら自分の想いや夢を叶えられるかを一生懸命に考えて、行動するということが習慣化していたのかもしませんね。


──なるほど。その辺が職人探訪の企画書を書いてプレゼンすることにつながるわけですね。

矢島さんの著書『和える-aeru- (伝統産業を子どもにつなぐ25歳女性起業家)』(早川書房)。矢島さんのこれまでの人生の歩みと仕事にかける情熱などが詳しく書かれている

子どもの頃から、日常的に自分の想いを実現させるためには、どうしたらよいのかを考えて実行していたので、職人さんを取材するために企画書を書いて連載の機会を探しに行くことは、私にとってはあまりハードルが高いことではありませんでした。

先日、早川書房さんから『和える-aeru- (伝統産業を子どもにつなぐ25歳女性起業家)』を出版させていただいたのですが、執筆にあたり幼い頃のことをいろいろ思い出して、こういうことも今の私につながっている要素なのかもしれないな、と気がつきました。

伝統産業の魅力と問題点に気づく

──全国の職人を取材して得たものは?

2009年から約3年間、全国の若手職人を取材して回ったのですが、このときの経験が、和えるを立ち上げる直接のきっかけとなりました。このとき取材をした職人さんの中には今、一緒にお仕事をさせていただいている方もいます。

やはり自分の目で直接職人さんの仕事ぶりを見て、伝統産業の技術や仕事にかける想い、その手で作り出される伝統産業品の魅力に惹きこまれました。一方で、年々衰退しているという事実にも直面しました。その要因については、後継者不足、伝統産業品が売れない、今の時代に合わないなど、職人さんたちは、いろんな理由を教えてくださったのですが、本質的、根本的な原因は伝統産業について多くの人々が「知らない」という一言に集約されると感じました。

私は中学生の時に、「職人」という職業を知らなかったので職人になろうとは思いませんでした。もし茶華道部に入っていなければ、伝統産業を知らないまま一生を終えていたかもしれません。私の多くの友人たちも、「日本に生まれながらにして、日本のことを知らない。もっと日本のことを知りたい」と話していました。このままでは、日本の伝統産業の後継者も、伝統産業品をほしいと思う人も少なくなるし、今の時代に合わないという以前に、存在自体を忘れ去られてしまうのではないかと思いました。

人はまず、知ることで興味を持ち、そこから何かしらの行動を起こします。ですから、日本の伝統産業について知る機会を増やすことで、興味を持つ人が増えます。その結果、自分自身が作り手になる人、買い手になる人、伝え手になる人など、何かしらの行動が生まれてくるのではないかと思いました。だからこそ、「知ること」がすべての出発点で、まずやらなければならないのは、その機会を増やすことだと思いました。では誰に知らせるのが一番良いのかと考えたとき、自分の価値感、文化や習慣が完成された大人よりも、今日生まれて地球にやってきたばかりの赤ちゃんからスタートするのが、実は遠回りなようで一番早い解決策なのではないかと思ったのです。

矢島里佳(やじま りか)
1988年東京都生まれ。株式会社和える(aeru)代表取締役。

職人の技術と伝統の魅力に惹かれ、19歳の頃から日本の伝統文化・産業の情報発信の仕事を始める。「21世紀の子どもたちに、日本の伝統をつなげたい」という想いから、大学4年時である2011年3月株式会社和えるを設立、慶應義塾大学法学部政治学部卒業。幼少期から職人の手仕事に触れられる環境を創出すべく、子どもたちのための日用品を、日本全国の職人と共につくる“0から6歳の伝統ブランドaeru”を立ち上げる。また、全国の職人とのつながりを活かしたオリジナル商品・イベントの企画、講演会やセミナー講師、雑誌・書籍の執筆など幅広く活躍している。『青森県から 津軽塗りの こぼしにくいコップ』『福岡県から 小石原焼の こぼしにくいコップ』が2014年度グッドデザイン賞を受賞。 2013年3月、慶應義塾大学院 政策・メディア研究科修士課程卒業。2013年末、世界経済フォーラム(ダボス会議)のヤング・グローバル・シェイパーズに選出される。2014年7月、書籍『和える-aeru- 伝統産業を子どもにつなぐ25歳女性起業家』を出版。

初出日:2014.11.17 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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