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2014.09.16  取材・文/山下久猛 撮影/大平晋也

事務所内フリーアドレス

──働き方についてお聞きしたいのですが、仕事と趣味の境目がほぼないというお話でしたよね。特に休日は決めていないという感じですか?

猪熊 一応は土曜日の半分と日曜は休もうということにはしています。

──平日はどのような働き方なのですか?

成瀬 曜日によりますね。私たちは建築設計の仕事の他に大学で建築を教えてもいるので。私は週3回ほどの昼間、大学で講義をして、18時くらいに事務所に戻って打ち合わせをします。講義がないときは1日複数のクライアントと打ち合わせをしていることが多いですね。1日中事務所にいることはまずありません。

猪熊 僕の場合は担当している講義は週に1、2回程度ですが、その他に会議やゼミや論文チェックがあるのでちょこちょこ行かなければならない。1日中事務所にいることはないというのは同じで、建築設計のプロジェクトが大小含めると常時10個ほど同時並行で動いていて、我々はそのすべてに関わっているので、ひとつの打ち合わせが終わると別の打ち合わせ先に向かうというふうに外に出っぱなしなんです。

成瀬 打ち合わせのはしごですね。午前中プロジェクトAの打ち合わせ→午後大学で講義→プロジェクトBの打ち合わせ→事務所に戻ってスタッフと打ち合わせ、というのが普通です。

猪熊 だから僕たちは事務所内に自分の席がないんですよ。事務所の中でフリーアドレス状態なんです(笑)。

成瀬 ノートパソコンがあれば自席がなくてもどこでも仕事ができますからね。

移動時間を有効活用

猪熊 トータルすると移動時間が長いので、移動中によく仕事をしています。設計業務としては図面のチェックが多いですね。

成瀬 スタッフが書いてくれた図面をメールで送ってもらって、電車で移動中に見たり。特に猪熊は新幹線の中でチェックしてくれたりしています。

猪熊 目的地に着くとメールで送ってもらった図面を全部ダウンロードしてその場でチェックして、電話でスタッフに修正指示を出しています。

成瀬 明日までに図面を工務店に送らなければいけないというようなスピードを求められるケースがよくあります。いちいち事務所に来て確認していたら間に合いませんからね。

切り替え自体を楽しむ

──お二人ともいろいろな種類の仕事をお持ちですが、それまでやっていた仕事から全然別の仕事へと移行するとき、切り替えは問題なくできるのですか?

猪熊 僕は切り替えが大変というよりは、今まで取り組んでいた仕事から別の仕事へ移行するとき、それがいい気分転換になる。同じ仕事を延々やらなくて済むので、それが性に合っているんです。だいたいいつもひとつの仕事を2時間くらいやったら別の仕事にシフトする。それを繰り返して、夜中に、朝最初にやってた仕事に戻っているみたいなことが多いんです。なるべく気分転換のスピードが早い方が仕事がはかどりますね。特に執筆系の仕事は電車の中がはかどるので、あえて電車の中でやるようにスケジュールを組みます。前の晩にあらかじめ自宅や大学で資料を全部集めて印刷して準備万端整えて、翌朝起きた時に、移動時間も含めてどのタイミングで何の仕事をやるかというスケジュールを組んでその時間でそれをやってどんどん切り替えていくというやり方ですね。

講師としてイベントに参加することも(写真提供/FabCafe Tokyo

成瀬 それを見ていてすごく効率的だなと思います。確かに朝、スケジュールをチェックするのは大事ですね。朝起きた時に、今日は何をしなきゃいけない日だっけとチェックすると、ここに空き時間ができるな、なんかやろうかなと考えるから。でも私は猪熊みたいに切り替えが上手にできるタイプじゃなくて、ひとつのことを時間をかけてじっくり考える方が得意なので、1日の間でいろいろな仕事をするのは苦手なんです。文章も電車の中では書けなくて。

猪熊 え、そうなの? 初めて知った!

成瀬 そうなのよ。だから書き仕事は眠い眠いと言いながら夜中や早朝に起きて自宅でやっているんです。アイディアを出すスピードも早い方じゃないので、なんとかやってるという感じです。ただ、場所の移動は気分転換にはなりますね。学校に行くと学生の相手をするうちに先生の顔になるし、事務所に帰ってくる途中でメールをチェックすると段々と建築家の顔になります。移動時間に気持ちを切り替えているというのはありますね。

猪熊純(いのくま じゅん)
1977年神奈川県生まれ。一級建築士/成瀬・猪熊建築設計事務所共同代表/首都大学東京助教。

東京大学工学部建築学科、東京大学大学院工学系研究科建築学修士修了後、千葉学建築計画事務所へ入社。2年間勤務後、07年成瀬友梨と成瀬・猪熊建築設計事務所を設立。成瀬とともに、主にシェアハウス、シェアオフィス、コ・ワーキングスペースなどを手掛ける。08年から首都大学東京助教。1児の父。

成瀬友梨(なるせ ゆり)
1979年愛知県生まれ。一級建築士/成瀬・猪熊建築設計事務所共同代表/東京大学助教。

東京大学大学院博士課程単位取得退学後、05年成瀬友梨建築設計事務所を設立。07年猪熊純と成瀬・猪熊建築設計事務所を設立。10年から東京大学助教。

受賞歴:JIA東海住宅建築賞 優秀賞(2014年)、 グッドデザイン賞(2012、2007年)ほか多数。 メディア掲載、講演、シンポジウム出演、審査員経験多数。共著に『シェアをデザインする:変わるコミュニティ、ビジネス、クリエイションの現場』(学芸出版社)、『やわらかい建築の発想‐未来の建築家になるための39の答え』(フィルムアート社)などがある。 東日本大震災で被災した陸前高田では、支援でコミュニティカフェ「りくカフェ」の設計、運営を担当。現在本設のカフェとして建て替え中だが、工事費の高騰で費用が足りず、備品費を集めるためにクラウドファンディングを行っている。2014年10月5日にオープン予定。

初出日:2014.09.16 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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