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2014.09.01  取材・文/山下久猛 撮影/大平晋也

コ・ワーキングスペースの新たな可能性

──確かにこれまでもコ・ワーキングスペースやシェアオフィスにオフィスを構える人に取材しましたが、いろんな業種の人が集まっているから、そこで話してると新しいアイディアが生まれたり、新しい仕事につながったりという話はよく聞きます。

KOILでは定期的にイベントを開催しており、大勢の参加者でにぎわっている(写真提供/ロフトワーク)

猪熊 そうですね。運営側がわざわざプロデュースしなくても、たまたま今度仕事を一緒にやるということはたくさん発生しているみたいで、すごくいいことですよね。過去に関わったコ・ワーキングスペースでも、会社員だけど自分の家の書斎よりは周りにおもしろい人たちがいた方が楽しいし仕事にもいい影響が出るという考えでセカンドオフィスとして利用するという人はけっこういました。

また、KOILもそうですが、定期的におもしろいイベントを開催しているコ・ワーキングスペースは多いですからね。先日もKOILでCCCの増田社長と武雄市の樋渡市長を呼んでトークイベントを行ってとても盛り上がりました。会員になるとそういうイベント情報がすぐに届くのがすごくいいですね。

シェアハウスの新しい可能性

──生活の場という意味ではシェアハウスの方も増えているようですね。

成瀬 どんどん増えていますね。これからもますます増えると思います。未経験な人でもいきなりシェアハウスに住む人、特に女性が増えていますよね。

猪熊 僕の周りでもシェアハウスに住む人は増えていますね。

成瀬 『第四の消費』の著者で社会デザイン研究者の三浦展さんが、「シェアハウスは独身の働く女性に適合的な住まい方だ」とおっしゃっているくらい、女性の方がフィットするという傾向はあるみたいですね。大抵の場合、女性は男性よりも他者とのコミュニケーションを取るのが上手だし、一人で住むより安心だという理由でシェアハウスに住む女性が多いようです。

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撮影/西川公朗

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撮影/筒井義昭

名古屋にあるシェアハウスLT城西。共用部と個室の配置を同時に検討し、個室の立体的なレイアウトによって、共用部に異なる居心地の居場所が複数作り上げられている

──今後流行りそうなシェアハウスのトレンドというのはあるんでしょうか?

成瀬 シェアハウスを運営している方たちと話していて、今感じているおもしろいトレンドとしては、シェアハウスに独身の時に住んでいた人たちが、結婚してそこを出るときに次に住む集合住宅がないと言われている、ということです。


──なるほど。夫婦や家族で住めるシェアハウスはないと。

成瀬 そうなんです。結婚してもシェアハウスのような集合住宅に住みたいのに、それがなくて、選択肢が普通のマンションしかないから、つまらないということです。

猪熊 シェアハウスのように仲良くなろうと思えばいくらでもチャンスがあるような、気の利いた集合住宅が今ひとつもないんですよね。

成瀬 だからカップルや家族で住めるシェアハウスがこれからたくさん出てくると思います。通常の集合住宅よりいろいろな面でもう少しゆるいマンションのようなものが。

猪熊 各住戸ごとにプライバシーは守られていても、例えば今日はみんなでバーベキューをやろうというと敷地内にすぐ集まれる、みたいな。

成瀬 そういうシェアハウスに慣れた世代が大人になったときに、どういう集合住宅が必要とされるのかと考えると、自然と高齢者用のものも浮かび上がってきますよね。老人ホームの一歩手前の集合住宅ってどんなものがいいかな、などとよく考えます。

猪熊 シェアハウスが増えていくという話をすると、「いずれは若い人の半分くらいがシェアハウスに住むようになるんですか?」というような話になりがちですが、そうではなくて、ある年齢層の中での割合が今と変わらなくても、シェア的な住まい方が許容できる世代が上がっていくので、全世代に渡って全体の一割くらいがシェアハウスになるまでは増え続けると思うんですよね。

様々なタイプのシェアハウス

──そうなるとさまざまな年代の人たちが混ざって、20代と70代の人が同じシェアハウスに入る可能性も出てきますよね。

猪熊 そうですね。年代がミックスされたシェアハウスも生まれると思うし、世代ごと、例えば子育て世代に適したものや、おひとり様の高齢者用のものなど、特徴をもったものも出てくると思います。


──老人ホームよりシェアハウスの方が入居のハードルは低いでしょうしね。

猪熊 そうですよね。また、今できているものとしてはシングルマザー用のシェアハウスがあります。共同でベビーシッターを雇うなどして入居者同士で子育てを助け合っているようです。中には夜は子どもを預けて彼氏とデートに行って早めに再婚するといったようなポジティブな人もいて、退去のスピードが早いらしいです。そういうケース含めて、さまざまなタイプのシェアハウスが増えると選択肢も増えるのでとてもいいことだと思います。


インタビュー後編はこちら

猪熊純(いのくま じゅん)
1977年神奈川県生まれ。一級建築士/成瀬・猪熊建築設計事務所共同代表/首都大学東京助教。

東京大学工学部建築学科、東京大学大学院工学系研究科建築学修士修了後、千葉学建築計画事務所へ入社。2年間勤務後、07年成瀬友梨と成瀬・猪熊建築設計事務所を設立。成瀬とともに、主にシェアハウス、シェアオフィス、コ・ワーキングスペースなどを手掛ける。08年から首都大学東京助教。1児の父。

成瀬友梨(なるせ ゆり)
1979年愛知県生まれ。一級建築士/成瀬・猪熊建築設計事務所共同代表/東京大学助教。

東京大学大学院博士課程単位取得退学後、05年成瀬友梨建築設計事務所を設立。07年猪熊純と成瀬・猪熊建築設計事務所を設立。10年から東京大学助教。

受賞歴:JIA東海住宅建築賞 優秀賞(2014年)、 グッドデザイン賞(2012、2007年)ほか多数。 メディア掲載、講演、シンポジウム出演、審査員経験多数。共著に『シェアをデザインする:変わるコミュニティ、ビジネス、クリエイションの現場』(学芸出版社)、『やわらかい建築の発想‐未来の建築家になるための39の答え』(フィルムアート社)などがある。 東日本大震災で被災した陸前高田では、支援でコミュニティカフェ「りくカフェ」の設計、運営を担当。現在本設のカフェとして建て替え中だが、工事費の高騰で費用が足りず、備品費を集めるためにクラウドファンディングを行っている。2014年10月5日にオープン予定。

初出日:2014.09.01 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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