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2013.08.13  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

今後、働き方はこう変わる

──今後の働き方はどうなると思いますか?

もっといろんな働き方があっていいと思っています。他者からはおかしいと言われることも多々あるかもしれませんが、それでも自分の心がワクワクする働き方をすればいいのでは? と思います。実は軽井沢にオフィスを移転するときも、英会話事業だけでなく他の事業をスタートするときも、体育の講師を始める時も、周りからけっこう反対されたんです。でも私自身がワクワクする働き方、仕事づくりができると思ったので、そうしました。

今後は私みたいに若い世代が東京ではなく地方に行く時代が来るんじゃないかな、既にその流れが来ているんじゃないかな、と感じています。実際に最近は地方に眠っている可能性や価値に惹かれて地方に行きたいと言ってる仲間が多いんです。

また、都会の熾烈な競争の中で他者を蹴落とし、勝ち残って成功したいというのではなく、利益追求以上に自分の能力や技術を使ってこの国や社会に貢献したいという人が特に若い世代に増えているように感じています。そうなると、個人のハッピーと社会のハッピーが繋がる形で新しい仕事が生まれていくんじゃないでしょうか。それに今ある職業のほとんどは自分の子どもの世代にはない職業かもしれないですしね。特に今の若い人たちは自分の一つひとつの仕事が社会のどこにつながっているかという意味をすごく見出そうとしてると感じます。

それと、複数の仕事で収入を得るという働き方も増えるんじゃないかなと思います。私自身もワクワーク・イングリッシュを経営したり、ワクワークセンターをつくろうとしていたり、大学で教えたり、湯河原の子どもたちのリーダー育成事業を手がけたりと、いろいろな仕事をして、いろいろなところから収入を得ていますが、こういう自由でフレキシブルな働き方は増えているし、今後もっと増えると思っています。

愛にあふれたコミュニティをつくりたい

──今後の目標や夢を教えてください。

ワクワーク・イングリッシュに関しては、2014年度からまた新しい大学でオンライン英会話の授業をやる予定なので、そこに照準を合わせて現在40人の講師を100人にしたいと思っています。でも我々は大量に雇って、いらなくなったからすぐ解雇ということは絶対にやらないので、採用もこれまで通り、慎重に行います。今のワクワークファミリーとしての文化を維持していくためにも、講師は100人がマックスだと思っていて、それ以上増やすつもりはありません。

大きな目標として、フィリピンで100の事業を創出するというのがあります。そのため、英会話事業に続き、カフェや美容院(9月正式オープン予定)を立ち上げました。そしていよいよ今年の9月にもっと多くの子どもたちや若者、ママ・パパが通うことができるワクワークセンターの建設が開始されます。起業して以来の夢がひとつ形になるので楽しみです。

フィリピンの若者たちと一緒に夢を叶えるべく奮闘する山田さん(写真前列中央)

また、個人的な夢としては、家族が大好きなので大好きな祖母(88歳)に自分の子どもを見せてあげたいですね。そして、ワクワークセンターの1階にはお母さんが安心して幼い子どもを預けて働けるように託児所のようなものをつくる予定で、もし私にも子どもができたらこのロレガのコミュニティで育てたいと思っているんです。ロレガの子どもたちに「私の子どもを受け入れてくれる?」と話したら「もちろん! 早く連れてきて」と笑顔で答えてくれています。愛にあふれたコミュニティをつくることが、自分の将来の子どもにもすごく影響するだろうなと感じています。

あるがままの自分を自分自身で受け入れて、そのあるがままの自分を受け入れてくれる、愛にあふれるコミュニティ。そして自分はこれでいいんだ、自分には可能性があるんだと自信をもって、夢に向かって一歩踏み出せるようなコミュニティを日本でもフィリピンでもつくりたい。それが私の究極の夢であり目標ですね。

山田貴子(やまだ たかこ)
1985年神奈川県生まれ。株式会社ワクワーク・イングリッシュ代表。

慶應義塾大学環境情報学部卒、2009年同大学院政策・メディア研究科修士課程在学中に株式会社ワクワーク・イングリッシュを設立。フィリピンの貧困層の若者と一緒に、生まれた環境に関係なく、誰もが夢と自立を実現できる社会を目指してさまざまな事業を立ち上げ中。日本では軽井沢に拠点を置き、地域活性活動に取り組むほか、慶應義塾大学の非常勤講師や「湯河原子どもフォーラム」の講師も務めている。2012年、世界経済フォーラム・ダボス会議により、20代30代のリーダーGlobal Shapersに選出。2013年、第1回日経ソーシャルイニシアチブ大賞の国際部門でファイナリスト選出。

初出日:2013.08.13 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの