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2016.08.17  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

生き方に関する3つのポリシー

──鯉渕さんが生き方や働き方に関して大切にしていることは何でしょうか。

鯉渕美穂-近影7

3つのことを大切にしています。まず1つ目は、社会人として社会に貢献すること。2つ目は、親から命を授かった感謝の思いとして、受け継いださまざまなことを家庭人として今度は自分の子どもに伝えていくこと。3つ目は、女性としての心の柔らかさを大事にすること。この3つは、社会人になった頃からずっと大事にしていて、これらのバランスをうまく取りつつ生きていきたいと思ってきました。

もちろん人生のある時期は、この中の1つにウエイトが集中することもあったり、なかなかうまくいかないこともあったりしますが、その時に周囲や環境のせいにしてあきらめたりせずに、自分でどうやったらうまくいくか試行錯誤を繰り返してきました。例えば、バランスが崩れていると感じた時は、週末にお茶のお稽古で精神的に落ち着ける時間を取るようにしてみたり、仕事で行き詰まった時にはしばらく会っていなかった友人に連絡して会ってみたりと、壁にぶつかったら何かしら自ら行動を起こして突破口を探すなど、自分から環境をつくっていくことが大事なのだと思います。これまでに出産の件なども、何度も家族や友人にも相談したり、自分で行動を起こすことで前に進めてこられたのだと思います。

あとは失敗を恐れないということでしょうか。失敗しても命がなくなるわけではないので、一度しかない人生ならやりたいことがあれば取りあえずチャレンジしてみる。ダメだったらその理由を考えて、次は成功できるようにまたチャレンジしてみる。その繰り返しでこれまで来た気がします。


──基本的にポジティブですよね。ネガティブなことは考えないのですか?

いえ、考えることもありますよ。ただ考えている時間がもったいないので、「違うこと考えよう!」って、ネガティブ思考を意識的に停止させることはありますね。できない理由よりもどうしたらできるかを考えている方が楽しいですね。とはいえ、私もそんなに人間ができていないので、友人や主人にグチって発散することもありますよ(笑)。特に主人は聞き上手なので、たくさん助けてもらっています。お互いが人生を楽しむことを全力で応援し合えるのが主人であり、絶対的な安心感のある場所が主人ですね。そんな自分の強さの源がそばにいてくれるのは、ありがたいです。

仕事は人生を豊かにしてくれるもの

──鯉渕さんにとって働くということはどういうことでしょうか。

鯉渕美穂-近影8

自分の人生を豊かにしてくれるものです。仕事を通じて知り合ったすばらしい友人・知人がたくさんいますし、仕事をしていなかったら経験できなかったことがたくさんあります。その経験が次の新しい道につながることも多々ありました。社会にインパクトを与えたいという今の夢も仕事をしてなかったら気づけなかったと思います。そういう意味で、私にとって仕事とは、「人生っておもしろい! と思えるたくさんの出会いをくれるもの」とも言えるでしょうね。

仕事そのものは、趣味の1つと言ってもいいかもしれません。趣味のテニス、ゴルフ、茶道、ドライブと同じように、自分の人生を豊かに、楽しくしてくれるものですね。仕事で得られる喜びと、テニスなどの趣味で得られる喜びは近いものがあります。今は環境的に土日に仕事をするのが難しくなりましたが、もともとは土日に仕事をしたりすることも多く、きっと苦ではなかったからなのだと思いますね。


──生きている間はずっと働きたいですか?

「働く」ということが「お金を稼ぐ」というのであればNOかもしれませんが、「社会と関わる活動」と考えるとYESだと思います。おそらく死ぬまで何らかの活動はしている気がしますし、社会をよりよくしたいとか人の将来をよりよいものにしたい、それに関わることで自分の人生も豊かになれば、という思いはずっともっているのではないかと思います。

徳島県でのドローン実証実験にて

徳島県でのドローン実証実験にて

幸せなキャリアの作り方

──幸せなキャリアをつくるためにはどうすればいいと思いますか?

前職で人材育成に関わってきた立場から申し上げれば、単純にやりたいことをやるというだけじゃなくて、20歳過ぎくらいから50年間仕事をすると仮定すると、まずは30年後にどういう自分になっていたいかというロングスパンの目標を設定することをおススメします。もちろん30年後というのは固定ではなく、例えば40歳とか50歳とかでもよくて、そのためにどうするべきかを考えることが大切ですね。そして、それまでの期間をいくつかのフェーズに区切って、最初の10年間は○○、そして次の10年では□□、というように少し具体的なイメージをもたせていくと、それまでにしなければならないことや、やっておきたいことが明確になると思います。

私個人的には、最初に就職してからの10年間はとにかく仕事に打ち込むのがいいと思います。というのは、それによって職業人としての土台が築かれ、社会人基礎力が培われ、その力はその後、仕事だけでなく自分の人生の前に立ちはだかる壁を突破する武器になりえるからです。最初の10年間は基礎力を身につけることで、その後の人生で達成したい目標が実現できるのだと考えられれば、どんなにつらいことでも耐えられると思います。逆に言えば、この時期にサボってしまうと後々苦労することにもなるでしょうね。


──今後の目標を教えてください。

鯉渕美穂-近影9

まずは、まごころサポート事業の拠点を全国47都道府県で1000エリア以上に増やすことです。そして、2018年までに地域限定でもドローン宅配を実用化することで、日本の社会問題の解決の糸口を見出したいと思っています。大きなビジョンとしては、地域でのシェアリングエコノミーをもっと広めて活性化することで、人々の生活を豊かにしたいと思っています。そのためにもまごころサポート事業をもっと全国に広めていきたいですね。


──今後もドローン以外にもどんどん新しいことにチャレンジしていくつもりですか?

はい、おそらく5年後はまた新しいことに取り組んでいるだろうなと思います。一つ階段を登ると、また新しい世界が広がります。なので、基本的なビジョンは変わりませんが、まごころサポートの広め方が変わっていたり、ドローンだけではなくて別の新しいテクノロジーを取り入れているかもしれません。また、自分自身の環境変化ともリンクしていることなので、子どもの成長やタイミングにも合わせて変化を楽しんでいきたいですね。


インタビュー前編はこちら

鯉渕美穂(こいぶち みほ)

鯉渕美穂(こいぶち みほ)
1977年東京都生まれ。MIKAWAYA21代表取締役社長

雙葉学園中学・高校卒業後、東京理科大学経営工学部へ。卒業後、外資系大手コンサルティング会社入社。 国内大手製薬会社や公団民営化に伴うプロジェクトに会計コンサルタントとして参画。外資系ソフトウェア会社を経て、人材育成コンサルティングに入社し、法人向けの教育研修事業部のマネジャーとして部署を統括後、シンガポール現地法人のディレクターとして海外拠点を立ち上げ、新規事業推進に従事。2014年10月、シンガポール駐在時代に知り合った友人に請われ、地域密着で子供からシニアまで安心して暮らせる社会の実現に取り組むベンチャー企業「MIKAWAYA21」株式会社の代表取締役社長兼COOに就任。2014年12月に長女を出産。現在は経営者、一児の母として仕事と育児の両立に励む日々。趣味はテニス、ゴルフ、車、茶道。

初出日:2016.08.17 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの