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2015.07.08  取材・文/山下久猛 撮影/大平晋也

謙虚に、一所懸命

ビザスクのスタッフのみなさんと

ビザスクのスタッフのみなさんと

──夢や目標はいつも自分には絶対に達成できると信じて挑戦しているのですか?

大抵のことは努力すれば叶うとは思いますが、自分が絶対に実現、達成できると思っているわけではありません。そもそも私が立ち上げたビザスクというWebサービスはいろんな人にアドバイスをもらってやりたいことを実現させようとか問題を解決しようというのがコンセプトなので。自分自身も一所懸命努力して知恵を振り絞って、それでも足りない部分はそれをもっている人から謙虚に学ばせていただきたいと思っています。すごく努力したら、きっとより遠くまで到達できるはずだし、それは誰にでもできうることだと思います。


──すごく前向きですね。落ち込むこともないのですか?

もちろん私も人間なので失敗したり嫌なことがあれば落ち込むことも娘に愚痴ることもありますが、あんまり引きずらないですね。そもそも落ち込んでも何にもいいことないですからね。1日落ち込むと時間をひどく無駄にしたような気がして。これはよくメンバーにも話すんですが、失敗は目標設定が間違っていたか、努力のやり方が間違っていたか、努力の量が足りなかったかのどれかが原因で起こるもので、全部改善できるから落ち込む必要なんてない。間違っていたところを変えればいいだけなんですよね。だからあんまり落ち込まないし、気持ちを切り替える必要もあまりないんです。あとは、何事もこうあらねばならないとは極力決めないようにしています。それも落ち込まない理由の1つかもしれないですね。

今後の女性の働き方

──起業家の立場として、これから女性の働き方がどう変わるか、感じていることがあれば教えてください。

端羽英子-近影9

最近、特に女性活用の話が活発化しているのは肌で感じています。女性が結婚や出産などで一度会社を辞めてもまた戻ってきやすくなる社会になることが重要だと思っているのですが、今は1回会社から出たら終わりなので、会社も個人もお互いにすごく気を遣わないといけない。それが会社も個人も不幸にしていると思います。

また、いくら働き方が自由になっても、フルタイム勤務がなくなるわけではないので、それをコアとして一定期間休んだり1回辞めたり戻ったり、副業が自由になったりと、もう少し企業における人の出入りや働き方が柔軟になればいいと思います。そういう意味では一部の大企業には、女性がいったん辞めても5年以内ならいつでも会社に復帰できるという制度が設けられていますが、すごくいい制度ですよね。

また、産休・育休はまさにその人をトレーニングする絶好のチャンスなので資格を取るために勉強する機会を与えるとか他の会社に短時間出向させるなどすればいいと思います。例えば私たちベンチャーは猫の手も借りたいほど忙しいので、2時間でも毎日手伝ってくれたらすごく助かるしうれしいわけです。働く方も長期間全く働かないよりは1時間でも2時間でも働いている方が社会との接点ができて精神的にもスキル的にもプラスになるわけですしね。出産は働き方を考えるタイミングなので、新しい働き方は女性が作っていくんじゃないかなと思っています。

働くシングルマザーへ

──働くシングルマザーに伝えたいことがあればお願いします。

端羽英子-近影10

「働くシングルマザー」とひと口にいってもさまざまな状況、事情を抱えている人がいるのですごく難しい問題だと思います。ただ、母子家庭はパパとママの両方がそろっている家庭と比べたら1つ欠けているかもしれないですが、周りに応援して手伝ってくれる自分の親や親戚、ママ友など頼りになる人がたくさんいるような状況を作っておくことが大事だと思いますね。私の場合も、夫がいた頃よりよっぽど助けてくれる人が増えて幸せだなと思います。ほかに助けてくれる人がたくさんいたらシングルじゃないってことですよね。その方が、両親がいるけれど社会的に孤立している家庭よりも全然ハッピーだと思いますよ。

だから私は娘に「パパがいなくてごめんね」とは絶対に言いません。いつも「みんなに愛されてよかったね、みんなに育てられて幸せだね」と言っています。極力、子どもに足りないものに目を向けさせないようにしようと思っていて。不幸だと言えないような雰囲気を作っているんです(笑)。


──手伝ってくれる人を増やすためにはどうすればいいのでしょう。

まずは遠慮せずに「手伝って」と言葉で伝えることですね。日本人は困ったときに誰かに助けを求めることが苦手なのでどんどん言っていいと思います。助けてもらったらちゃんとお礼を言うことと、逆にその人が助けを欲しているときは必ず手伝ってあげること。あとは、子どもは社会の宝だからみんなで協力しながら育てようって言えばいいと思います(笑)。

究極の目標

端羽英子-近影11

──端羽さんを動かしている原動力は?

一番は「社会にいい影響を及ぼしたい」という思いですね。そのためにどうすればいいかをいつも考えています。自分が死ぬときに「私はこれを成し遂げたんだ」と思いたいですね。そうすれば自分の人生に満足できますから。だから子育てでもなんでもやれることは全部やっておきたい。死ぬときに自分がいたことで社会が何か少しでもよりよく変わったと感じることができればすごくうれしいと思います。


──最終的な夢や目標は?

子どもの頃は歴史の年表に載るような人物になりたいという野望をもっていました(笑)。今はひと言でいえば幸せだなと感じることですかね。どんなときに一番幸せを感じるかというと、新しいものに出会ったり新しい刺激をもらったり、自分や娘、会社も含めて成長したと感じたとき。だから死ぬまで働きたい。うん、生涯現役。これが究極の目標ですかね。

端羽英子(はしば えいこ)
1978年熊本県生まれ。株式会社ビザスク代表取締役社長

東京大学大学経済学部卒業後、結婚。ゴールドマン・サックス証券に入社。投資銀行部門で企業ファイナンス等に従事。入社半年で妊娠し1年で退社。その後女児を出産。USCPA(米国公認会計士)を取得後、日本ロレアルに入社。化粧品ブランドのヘレナルビンスタインの予算立案・管理を経験。夫の留学に同行し家族で渡米。1年間主婦をした後、MIT(マサチューセッツ工科大学)のMBA(経営学修士)コースに入学。2年後MBA取得。帰国後離婚、以来シングルマザーとして働きながら子どもを育てる。帰国後すぐに投資ファンドのユニゾン・キャピタルに入社、企業投資を5年間経験後、2012年株式会社ビザスクを設立。2013年ビザスク正式オープン。知識と経験の流通を変える新しいプラットフォームの構築に日夜奔走している。

初出日:2015.07.08 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの