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2013.10.01  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

家族のサポートが重要

──先ほど子どもの保育には家族の存在が重要だというお話がありましたが、子どもの親ともよく話すのですか?

こどもみらい探求社「こどもとおとなの七夕会」にて

はい。私たちにとっては家族のサポートも非常に重要で、保育の仕事と表裏一体といえます。日々保育士として子どもと接する中で困ったことが起こった場合、子どもの何がダメということではなく、起こっている問題を保育園と家庭とで共有して一緒に解決していこうというのが大切だと思っています。

たとえば、親の定番の悩みとして「子どもが言うことを聞かなくて困っている」とか「子どもがごはんを食べなくて」というのがあります。それらの問題について、これを読めば解決できるとうたっているような本は巷にあふれています。しかし、紹介されている事例が自分の子どもにうまく当てはまらなければ、どうすればいいかわからず頭を抱えてしまう。そんな自分にイライラして子どもに当たる、子どもはますます言うことを聞かなくなる、という悪循環に陥る状況も考えられます。子どもは生き物なので1パターンではないですからね。

とはいえ、お母さんやお父さんも人間ですから、子どもに対してマイナスの感情を抱くことも当然あります。大事なのは、親と子であるけれど、決して子どもは大人の所有物ではなく、自分と同じひとりの独立した人格をもつ人間として接し、向き合うこと。もし子どもに対して強い言葉を浴びせるような状況になっていたら、だれかがサポートして違う解決法を一緒に考えてあげなくてはいけません。

保育園でもお母さんやお父さんと密に話す機会を積極的に設けて、その辺の気持ちのバランスがわかると、保育現場で子どもの振る舞いを見てそうする理由がわかることもあります。親が困るような子どもの行動には必ず理由があり、そこは親子関係の問題や家庭環境とつながっていることが多いんですよね。

育児と仕事の狭間で

asobi基地では大人も子どももみんな笑顔

保育園にいて、仕事と子育ての両方をしているお母さんたちを見ますが、本当にすごいなと思うんです。仕事と子育ては対の関係ですよね。子どもとずっと一緒にいたいと思っても、お金がなければ子どもを育てられないし、お金を稼ぐためには外で働かざるをえません。でも、子どもとの時間も、自分の時間も大事にしたい。どんな人でも、時間だけは24時間決まっています。

「子どもを生んで、不自由になった」そんな言葉をある日どこかで聞いたとき、なんだかとても悲しくなりました。自分の様々な選択が新しい命につながっているのに。現代ではなんだか「子育て=大変」というイメージがついていて、子どもをもつことが自分の人生にとってマイナスになると感じている人もいると思うんです。 子どもが生まれたら自分の生活が激変しちゃうとか、やりたいことができない、夢をあきらめないといけないとか。逆にそんなつらそうな親を見て、大人ってたいへんだなあとか親にはなりたくないとか仕事したくないなどと思っている若い人たちもたくさんいると思います。

でも、そもそも命が生まれるってとても素敵なことですよね。いろんな出会いがあり、奇跡があり生まれる命。もちろん命を育てるということは楽しいことばかりではありませんが、子どもと関わる前からいろいろと決めつけてしまう姿勢はもったいないと思うんですよね。

そうじゃなくて子どもをもつから自分の世界が広がる、人生が2倍楽しめると思える社会。みんなが当たり前に子どもを生み、育てることを含めてちゃんと生きることを楽しめるような社会。そんな社会にしたいと思って活動しているわけです。

小笠原舞(おがさわら まい)
1984年愛知県生まれ。合同会社「こどもみらい探求社」共同代表。

大学卒業後、数社を経て、2010年、子どもたちの素敵な未来を創るために、「オトナノセナカ」(2013年6月にNPO法人格を申請)の立ち上げに関わる。2011年、「まちの保育園」の保育士としてオープニングから勤務。2012年6月には、子ども視点で社会にイノベーションを起こそうと「Child Future Center」を立ち上げる。同年7月には新しい子育て支援の形として「asobi基地(2013年8月にNPO法人格を申請)」をスタート。2013年6月、「オトナノセナカ」代表のフリーランス保育士・小竹めぐみとともに「こどもみらい探求社」を立ち上げる。保育士の新しい働き方を追求しつつ、子どもたちにとって本当にいい未来を探求するために奮闘中。

初出日:2013.10.01 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの