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2016.08.01  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

MIKAWAYA21とは

──鯉渕さんが代表取締役を務めているMIKAWAYA21とはどのような会社なのですか?

鯉渕美穂-近影1

当社のミッションは「子どもからシニアまで安心して暮らせる社会を作る」こと。その実現のために地元企業と提携して、新しい価値を創っていくことを目指しています。

当社が取り組んでいることをひと言で説明すると、「地域密着の会社を活用したシェアリングエコノミーを広める」です。誰かの空いた時間を別の人にとっての有益な時間にすることで地域に暮らす皆さんが幸せになれる。それを地域の会社が実現するためのサポートをしています。

例えば現在の日本が抱える深刻な社会問題として「超高齢化」があります。特に地方の山間部の限界集落は年々増加し、買い物や家の片付けなど通常の生活を営む上でお困り事を抱えたお年寄りが増えています。そんなお年寄りをサポートするために当社が展開しているのが「まごころサポート」で、全国の新聞販売店や地域密着ビジネスを行う会社を拠点に60歳以上のシニアのお困り事を解決するお手伝いをしています。


──まごころサポート実施の流れは?

まず、新聞販売店は「ちょっと困った事があったら私たちにご相談ください!」という折込チラシを新聞に入れます。それを見たシニアの方が、ちょっとしたお困り事があった時に電話かFAXで新聞販売店に連絡します。すると、地域の新聞販売店のスタッフがご自宅まで訪問し、サポートを行います。料金は新聞契約者は30分500円、非契約者は30分700円となっています。


 

──例えばどんな困り事の依頼があるのですか?

主な依頼は
・ お庭のお掃除(草むしり、草刈り)
・ 重たい家具の移動、高いところの電球交換
・ 入院中や旅行中のお花の水やり
・ 重たいものやかさばるものの買い出し
・ 難しいサポートや、高い技術が必要なサポートをお願いされた時の地域の専門業者への依頼代行
などです。また、一部の店舗では、障子や網戸の張り替え、エアコンクリーニング、介護タクシー(要資格)などのサービスも提供しています。

新聞配達店はまさに地域密着型の会社の代表格で、配達員の業務内容も基本的に新聞のお届けや集金などで、地域に住んでいる方のお家へ毎日訪問しています。それらの業務の空き時間を活用できるので、このまごころサポートを行う業態としてぴったりなんです。

まごころサポートを依頼したおばあちゃんと

まごころサポートを依頼したおばあちゃんと


──確かに過疎地域に暮らすお年寄りにとっては便利なサービスですね。

おかげさまで年々ニーズが高まっています。まごころサポート実施件数は、1販売店あたり月に平均15~20件ですが、多い店は200件にのぼります。全体の総数としては毎月5000~7000件ほどになります。現在、当社はこの全国の新聞配達店をメインに、まごころサポートのノウハウを提供していますが、それ以外にも全国の各家庭にモップや玄関マットなどのレンタルや販売を行っている企業など、クライアントは異業種にも増加中です。また、最近は出産・育児で退職したママさんや定年退職した方がまごころサポートのスタッフになってくださっています。地域の人たちが、自分の空いている時間に、できることを少しお手伝いする。そんな小さな「まごころ」が集まってシニアのたくさんのお困り事を解決しているんです。

まごころサポートのビジネスモデル

──現在メインとなっている新聞配達店向けのまごころサポートのビジネスモデルを教えてください。御社と契約している新聞販売店数はどのくらいあるのですか?

鯉渕美穂-近影3

2013年12月から全国に広がり始め、現在(2016年7月現在)は37都道府県345店舗にまで広がりました。現在も増加中です。ビジネスモデルとしは、基本的には当社がまごころサポートを適切かつ効果的に行うためのノウハウを新聞配達店に提供し、その対価として新聞配達店から料金をいただいています。料金プランは月額1万5000円、3万円、6万円の3つのコースがあり、料金が高くなるにしたがってきめの細かいサービスを受けられるようになります。お年寄りが支払う30分500円のまごころサポートの利用料はすべて新聞配達店に入る仕組みになっています。


──新聞販売店に提供する具体的なサービス内容は?

例えば、まごころサポートを行う上での基本的なマニュアルです。お年寄りの困り事といってもいろいろありますが、その中には法的にやっていい仕事といけない仕事があるのでその解説や、草むしりでも取っていい草といけない草の見分け方や抜き方などを写真入りで細かく解説しています。他には、チラシなどの販促ツールの作成や、映像でより詳しく活動がわかる研修動画の提供、エアコンや洗濯槽のクリーニングの実技指導、月に1回の対面でのコンサルティングなどがあります。


──先ほど新聞販売店のスタッフ以外にも育児中の女性やリタイヤしたシニアの方もスタッフとして働いているとおっしゃいましたが、どのように募集、管理しているのですか?

新聞に「スタッフ募集」の折込みチラシを入れるなどしてその地域で募集しています。ある新聞販売店様ではFacebookを活用して募集を行ったこともありますが、折込みチラシの反応が一番よかったそうです。希望者は募集した各販売店が面接して採用、登録、管理、派遣しています。多い地域では20~30人がまごころサポートスタッフとして働いています。

鯉渕美穂(こいぶち みほ)

鯉渕美穂(こいぶち みほ)
1977年東京都生まれ。MIKAWAYA21代表取締役社長

雙葉学園中学・高校卒業後、東京理科大学経営工学部へ。卒業後、外資系大手コンサルティング会社入社。 国内大手製薬会社や公団民営化に伴うプロジェクトに会計コンサルタントとして参画。外資系ソフトウェア会社を経て、人材育成コンサルティングに入社し、法人向けの教育研修事業部のマネジャーとして部署を統括後、シンガポール現地法人のディレクターとして海外拠点を立ち上げ、新規事業推進に従事。2014年10月、シンガポール駐在時代に知り合った友人に請われ、地域密着で子供からシニアまで安心して暮らせる社会の実現に取り組むベンチャー企業「MIKAWAYA21」株式会社の代表取締役社長兼COOに就任。2014年12月に長女を出産。現在は経営者、一児の母として仕事と育児の両立に励む日々。趣味はテニス、ゴルフ、車、茶道。

初出日:2016.08.01 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの