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2015.11.02  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰 イラスト/フクダカヨ

デザインを通してつながる

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細谷らら-近影1

細谷らら(以下、細谷) 私は今年(2015年)からCMFデザイナーとして働き始めましたが、玉井さんはCMFという概念を日本に導入した先駆者で、私にとっては師匠みたいな存在です。そんな方と対談させていただけるのはとても光栄で恐れ多いのですが、本日はどうぞよろしくお願いします。

玉井美由紀(以下、玉井) いえいえ、そんな大層なものでもありませんよ(笑)。こちらこそよろしくお願いします。

細谷 私、一方的ですが、玉井さんと初めてお会いしたときのことをすごく覚えているんですよ。

玉井 いつ、どこでですか?

細谷 私が入社してすぐの頃だから6~7年前、場所は当社の会議室です。素材の専門家を招いてデザイナーを対象にしたプレゼン会を開催するという案内が社内であって、私も当時他の社員8~9人と聞きに行ったんです。

玉井 ああ、あのときですか!

細谷 はい。あのとき私もいたんです(笑)。それからずいぶん時間がたって、初めてお話させていただいたのは、1年半前くらいですかね。

玉井 それは覚えています(笑)。

細谷 社内プレゼン会で初めてお見かけした玉井さんは、華やかなオーラを身にまといながら力強く語ってらして、かっこいい女性デザイナーだな、と感じました。そもそも当社には女性デザイナーが少ないのですが、大手自動車メーカーでカラーマテリアルのデザインを手掛けた後、独立して会社を立ち上げCMFデザイナーとして活動してるなんてすごい方だと、強烈なインパクトを受けたのを覚えています。そのとき初めてCMFという言葉を聞いたんです。

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玉井 当時はCMFという言葉自体、デザイン業界の中でも全然知られていませんでしたからね。

細谷 私も当時は入社したばかりでしたし、もちろんCMFについては全然知らなかったので、こういう考え方があるんだというくらいでした。

独立当初はつらかった

玉井美由紀-近影1

玉井 実は、正直、当時のことは思い出したくないんですよね、つらすぎて(笑)。CMFなんて誰も聞いたことがないから、とにかく何を言っても伝わらないんですよ。聞いている相手はぽかーんとしてるのがわかるんです。それに、独立したばかりの頃だったので実績として見せる物も何もなかったですしね。

細谷 確かに私もぽかーんとしていたと思います(笑)。

玉井 そうですよね(笑)。自分がCMFの重要性についていくら一所懸命に説明しても、聞く側に全く興味をもってもらえていないというのがわかる。その挫折感たるやハンパなものではないんですよ。だからあんまり当時のことは話したくないのですが、最近それを少しずつ克服するためにあえて話してます(笑)。当時、いろんな人から「玉井さんのやってることはすごいけど、なかなか世の中に認められにくいよね」ということを言われ続けていたんですが、うまく説明できなかったんですよね。最近はCMFに興味をもっている人が聞きにきてくれるのでだいぶ楽になりましたが、2年前まではつらい状況が続いていました。

細谷 それはつらいですね。私は最初のプレゼン会ですべては理解できませんでしたが、何か引っかかるものがあって興味をもち、玉井さんが主催している「青フェス(※)」にも参加しました。

※青フェス:玉井さんが代表を務める株式会社FEEL GOOD CREATION主催。優れた技術をデザインの視点からとらえ直し、日本のものづくりの活性化を目的として開催されている、日本唯一のCMFデザイン展。優れた技術をもつメーカーの技術サンプルにFEEL GOOD CREATIONがデザインを加えてマテリアルを展示し、新規顧客に対する技術PRや他技術を持つメーカーとの協業、用途開発に繋がるニーズのヒアリングなども行われている。第1回は2011年の東京デザイナーズウィークで開催

過去に開催された「青フェス」の模様
過去に開催された「青フェス」の模様

過去に開催された「青フェス」の模様

玉井 当時、「青フェス」というイベントに興味をもってくれる人はほとんどいなかったので感動ですね(笑)。

細谷 そうやって知れば知るほどCMFが社会的に認知される時代が必ず来ると密かに思っていたんです。また、自分が実際にプロダクトデザインの仕事をすることで、CMFのような概念がものづくりにおいて重要だということがわかってくるわけですよ。奥が深いなと。そういう意味で、玉井さんが以前、WAVEにご登場いただいたのは2013年6月ですが、当時と2年4ヶ月ほど経った今とでは、CMFの社会的認知度が上がってきているような気がするんですが、その辺いかがですか?

玉井 どうでしょう。2年前はCMFは全く知られていなかったので、そのときよりは少しはましになってきたかなという感じでしょうか。といっても、知っているのはデザイン業界のごくごく一部の人で、一般的に認知されるレベルまでには到底及んでないというのが実感ですね。

玉井美由紀(たまい みゆき)

玉井美由紀(たまい みゆき)
1968年千葉県生まれ。株式会社FEEL GOOD CREATION代表取締役/CMFデザイナー/CMFクリエイティブディレクター

武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科卒業後、 株式会社本田技術研究所へ入社。四輪デザイン室でデザイナーとして数々の車のカラーマテリアル開発に携わる。2007年、表面材専門のデザイン事務所「FEEL GOOD CREATION」設立。さまざまな企業から依頼を受けての商品開発や、CMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)デザイン・コンサルティングなどを通じて日本のモノづくりを活性化させるため奮闘中。


細谷らら

細谷らら(ほそや らら)
1985年神奈川県生まれ。株式会社岡村製作所 CMF推進室 デザイナー

筑波大学芸術専門学群デザイン専攻プロダクトデザイン領域卒業後、株式会社岡村製作所へ入社。プロダクトデザイナーとして商品開発に携わる。玉井さんとの出会いでCMFの重要性に気づき、2015年からCMF専門のデザイナーとして商品開発に取り組んでいる。


初出日:2015.11.02 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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