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2015.04.13  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

運命を変えたタイの友人の一言

アショカ財団Youth Ventureのボランティアをしていた頃の亜基さん


──アショカ財団との出会いはすごく大きかったんですね。

亜基 そうですね。あのときは本当につらかったので、アショカ財団との出会いはとても大きな意味を持ちました。

ただ実はアショカ財団に関わりながらも私は1つ悩みを抱えていたんです。アショカ財団のメンバーはみんな英語を話すんですが、実際に私が向き合っているタイ人の若手の学生たちはタイ語が基本となります。私がPRに関してのアドバイスをするときも、まずアショカ財団のメンバーに英語で伝え、それをタイ語にして学生に伝えるというプロセスを何度も踏まねばならず、私が直接メッセージを伝えられないというジレンマ、もどかしさを抱えていたんです。今の状態でも自分がもっと彼らに貢献できることがあるんじゃないかという葛藤があって、そのことをメンバーと一緒に話し合いました。それと期を同じくして前編でお話した私たちのビジネスパートナーであるSunitと出会い、彼から「亜基の本当にしたいことは何なの?」と聞かれ、改めて自分の本当にやりたいことを考え直してみました。

要所要所で亜基さんに貴重な言葉を与えてくれたというSunitさんと

タイに来たときから感じていたことですが、タイのスーパーや市場には日本では見たことのない野菜や果物がたくさん並んでいます。それらは本当に食べても安全なのかという不安を感じていたので、最初の頃は日本から輸入された食材ばかり購入していました。そこでSunitには「今、何を食べたらいいか悩んでいるし、もっとタイの食材について知りたいと思っていたけどなかなか難しい。また、タイに来る前はロハスについて考える会を主宰しながら、食のあり方について毎月勉強会をやっていてタイにおいてもそうしたことを学べたらうれしい」という気持ちを話しました。それがきっかけで有機野菜を作ってる農場に一緒に行ったり、タイでシェフとしてまた栄養士として活躍するSarah(サラ)という女性を紹介してくれました。彼女は今ではタイにおいてかけがえのない親友の一人です。

Marimo5の始まり

亜基 農場を訪問したとき、日本にいたころに学んだオーガニック野菜の役割の重要性を思い出して、日本もタイも同じだなと感じました。また、タイの農家も日本の農家と同じように体にいいものを作っているにもかかわらず、それを多くの人に知ってもらう方法を知らずに困っていました。

そこで何かできないかなと思って、2008年半ばころからSunitやSarah、そして夫と一緒に食育ボランティアのグループを作っていろんな農場を訪問したり、タイ在住の日本人や欧米人の奥様方に有機野菜を販売したりレシピを教えたりする活動を始めました。これがMarimo5の前身です。

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タイでのかけがえのない親友Sarahさんと

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企業の敷地内で農園を運営する会社を訪問


インタビュー後編はこちら

大和茂(やまと しげる)
1978年東京都生まれ。Thai Health Promotion Foundation公式プロジェクト責任者/Marimo5代表

株式会社NTTドコモを経て、タイにMarimo5 Co., Ltd.を設立すると同時に、タイヘルス公式プロジェクト責任者に就任。2007年から約5年駐在員として働く一方で、チュラローンコン大学労働経済学修士課程修了。帰任後は、ICTヘルスケア事業の海外展開等に従事。 健康的な職場と企業成長の関係性を研究すべく、早稲田大学スポーツ科学研究科博士課程在籍中。

大和亜基(やまと あき)
1978年広島県生まれ。Marimo5副代表/食育アドバイザー

大学卒業後日本テレビに入社。報道カメラマンとしてキャリアのスタートを切ったが、激務のため大腸疾患を発症し入院。以来、食と健康についてワークショップを開くなど勉強に励む。広報部に所属していた2007年、夫の茂さんのタイへの赴任辞令にともない日本テレビを退社。タイへ移住。2008年頃からタイ人とともにタイの有機農家と在タイ日本人をつなげる任意団体Marimo5を発足、活動を開始。現在はタイの職場で働く人の肥満問題の解決、健康増進などのソリューションを提供している。

※2015年5月にHappy Workplace Programとオカムラのオフィス研究所が取り組んでいる日本の職場、働き方に関する最先端の研究を発表予定

初出日:2015.04.13 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの