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2013.11.15  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

馬搬はポケットモンスターのようなもの

愛馬・サムライキングとうまくコミュニケーションを取り、木を運搬する岩間さん

──「遠野馬搬振興会」ではどんな思いでどんな活動に取り組んでいるのですか?

さまざまなイベントや研修会などを開催して、日本での馬搬振興に取り組んでいます。近年、自然との共存やエコという言葉が叫ばれていますが、馬で木を運ぶ馬搬は山を傷めずCO2も排出しないのでまさにそれを具現する働き方。「自然との共存」に興味をもつ若い人も増えているので、新しい可能性が開けると思います。実際「遠野馬搬振興会」を立ち上げてから3人の若い研修生が入会しました。

僕もそうでしたが、馬と一緒に働くシーンを実際に間近で見るとみんな驚いたり感動したりしてとても強いインパクトを受けます。だからいろんな人に見てもらいたいんですよね。特に子どもは喜ぶと思います。子どもの間ではポケットモンスターが大人気ですが、いわば馬搬はリアルポケモンのようなものなんですよね。生きている動物を意のままに使って作業を行ってますから。子どもたちがあれほどポケモンにハマっているのなら、そういう目線での見せ方もありだろうと思っています。加えて自然環境にもやさしいということを教えるとさらに興味をもつんじゃないかと。そこから将来、馬搬をやってみたいという子も出てくるかもしれませんよね。

このような活動を通してこれから里山で馬と働くという昔ながらの風景が遠野を起点に徐々に広まったらおもしろいなと思っています。遠野ならずとも全国どこにでも山はたくさんあるし、馬搬も日本中どこにでもあった文化ですからね。

また、馬搬をより環境保全に役立てるためにさまざまな企業や団体に協力していただき、環境イノベーションとしてカーボンオフセットに関する事業にも取り組みたいと思っています。やはり社会的な影響力を考えると企業と協力した方がより効果的ですからね。

ブランディングにも注力

また、馬搬に付加価値をつけるためにブランディングにも取り組んでいます。馬搬で伐り出した木で絵馬やまな板、置物、家具などを製作しているのですが、それらには馬搬の木の証として「Horse Logging Wood」の焼印を押しています。オカムラさんには馬搬の木で椅子を製作してもらいました。

馬搬材で作った置物と家

ズームアイコン

オカムラとC.W.ニコル・アファンの森財団がコラボレーションし、スギの間伐材と馬搬を活用して製作したスツール「KURA」。2013年12月より発売を開始する

また、農作物でも昔から馬糞の堆肥で作った米はうまいと言われていますし、実際に食べてみても一般的な肥料で作った米よりも確かにおいしいんですよ。科学的にも馬糞は窒素・リン酸・カリの配合がバランスよく、米のつやや輝きが通常の米よりもよいなど実証されているんです。そこで、馬の糞の堆肥でできた米を「馬米(うまい)」と名づけて販売しています。馬糞で作った野菜も、ほうれん草は「ホースレンソウ」、ピーマンは「ピー馬ン」、トマトは「ウマト」など馬糞を活用する農業では、意味のあるダジャレが数多く生まれます。

うまいと大好評の馬米

このように馬搬そのものに加え、馬搬から生まれるさまざまなものを馬搬ブランドとして商品化することで、馬搬をより広く社会にPRしたいと思っているんです。さらに将来的には、馬搬材で作った家や馬と一緒に遊べる宿、馬搬馬で林業と農業が体験できる宿などができて、馬搬がひとつの経済として成立し、馬搬で十分生活できるようになればもっとやりたい人も増え、地域の活性化にもつながるんじゃないか。その可能性は十分あると思っているので馬搬のブランディングに力を入れているところなのです。

岩間敬(いわま たかし)
1978年岩手県生まれ。馬搬馬方/遠野馬搬振興会事務局長。

高校卒業後、建築家を目指し東京の建築関係の専門学校に入学。卒業後、東京の乗馬クラブに勤務。その後遠野に戻り、乗用馬の繁殖・調教を行う会社に勤めつつ、農林業に携わる。20歳頃から馬搬に興味をもち、2人のベテラン馬方に師事、技術を習得した。2010年、「遠野馬搬振興会」を設立。現在は農林業に従事しながら、馬搬文化と技術の継承、宣伝、普及などを目的として活動している。2011年にイギリスで開催された「馬搬技術コンテスト・シングル部門」で優勝。2012年にはこれまでの活動が認められ、岩手競馬、馬事文化賞受賞。同年、欧州馬搬選手権シングル部門で7位に入賞。

初出日:2013.11.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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