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2013.05.15  取材・文/山下久猛 撮影/村上宗一郎

非正社員であることを誇りに思うべき

──具体的にはどうすればいいのでしょう?

仕事も、いろいろな複数のクライアントと関係性を保ち、たとえひとつの会社と関係性を絶たれたとしても大丈夫というタフさを身につけていなければいけないんじゃないかと特に感じています。例えば東京R不動産のメンバーのように個人事業主と組織帰属の中間みたいな人は強いと思います。彼らはまさに自律している存在ですよね。

これからは企業もそれほど大量に正社員を雇えないので、非正規雇用や個人事業主が増えていくと思います。そのときに、正社員でないことを不幸だと思わない方がいいですね。東京R不動産のメンバーたちはそれを不幸だなんて少しも思っていませんし、それどころかハッピーだと思っています。サムライ契約を結んでいる人は、「おれたちはサムライだ」とむしろ誇りに思っていますよ。さらに副業・兼業オッケーなわけだから、東京R不動産で稼ぎながら、他でも仕事をして稼ぐぞと思えば、いくらでもできる。そうなるとむしろ非正社員でハッピー、ラッキーですよね。

それが自律した個人なはずで、その発想の転換がなかなかできない人が多いですが、そこはこれから僕らが逆に価値観の転換のスイッチを押してあげるべきなんでしょうね。仕方なく非正社員じゃなくて、積極的に非正社員で、複数の仕事で複数の収入がある働き方の方がかっこいいんだと。

近い将来「え、きみ、いまだに正社員なの? カッコ悪い」みたいな時代が来るべきだと思いますよ。そうなったら国力もすごく上がると思いますね。

公共空間を変えていきたい

──馬場さんの今後の夢・目標を教えてください。

建築家としては今後、特に公共空間を変えていきたいと思っています。例えば町の公園で清掃と管理さえやれば誰でもカフェを出店してもいいことになったとしましょう。店主にとっては安い家賃でカフェが出せる。親は子どもを遊ばせてる間においしいコーヒーなどを飲める。また、砂場もカフェの人が見張っててくれるから安心して子どもを遊ばせられる。子どもは安全が確保されていることによって砂場に柵がなくなるから伸び伸びと思い切り遊べる。行政だってカフェから継続的に家賃が取れるし、カフェの人が掃除もしてくれるから清掃業者にお金を払わなくてもいい。行政も、カフェも、市民も、子どももハッピーになるわけですよ。

でも今の法律ではそれができないんです。なぜかというと現状の公園法ではカフェのような営利目的の施設は禁じられているからです。

そういう意味で公園をリノベーションしなければならないと思うわけです。これまでのシステムを疑って、ハッピーなデザインを考えて、変えるということしていかなければならないと思うんですよね。とはいっても政治運動をして法律を変えるのは僕の仕事ではありません。ただ、公園をこう使えばいいよねと幸せな物語とスケッチを描いて、行政の人に提示することはできる。それによって公園が変わる可能性が生まれます。こういうちょっとしたことで社会の一端が変わるかもしれないし、そこに関わりたいんですよね。

公共空間をリノベーションするということは、硬直した日本の行政システムをリノベーションすることにつながっていくのではないかなと思うんです。公園だけじゃなくて役所や図書館など、新しい公共空間のあり方を開発・発明・提示することによって、システムや組織を動かすことができるんじゃないかという仮設を立てていて、その提案をアイデアブックに書いてるところなんです。


──ご自身の働き方に関してはいかがですか?

それは本当に悩ましいんですよね。いろいろと手を広げすぎちゃってひと言でいえば時間が全然足りない(笑)。自分の時間配分のバランスの取り方をすごく悩んでいて、どれかは手を引かなきゃいけないかなとかいろいろ考えています。今はギリギリのバランスで保ってますね。

東京R不動産みたいなものや大学の先生をやるなんて夢にも思ってなかったし、意外なことばかり起こりますからね。今後も思ってもみなかったことが起こるんじゃないかと戦々恐々です。でもそうなったらそうなったで、楽しんじゃうんでしょうけどね(笑)。

馬場正尊(ばば まさたか)
1968年佐賀県生まれ。建築家/Open A ltd.代表取締役/東京R不動産ディレクター

早稲田大学理工学部建築学科卒業後、博報堂へ入社。博覧会やショールームの企画等に従事。その後早稲田大学大学院博士課程へ復学、建築とサブカルチャーをつなぐ雑誌『A』編集長を務める。2003年、建築設計事務所Open Aを設立。個人住宅の設計から商業施設のリノベーション・コンバージョン、都市計画まで幅広く手がける。東京R不動産では編集・制作面を担当し月間300万PVの人気サイトに育て上げる。東北芸術工科大学准教授を務めるほか、イベント・セミナー講師など多方面で活躍。『だから、僕らはこの働き方を選んだ 東京R不動産のフリーエージェント・スタイル』(ダイヤモンド社)、『都市をリノベーション』(NTT出版)、『団地に住もう! 東京R不動産』(日経BP社)、『「新しい郊外」の家』(太田出版)、など著書多数

初出日:2013.05.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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