CREATOR’S VOICE 03
YAAのインクルーシブな思想が
人や社会をまざりつなげる
2025年11月、赤坂にあるオカムラのヘッドクォーターオフィスの一角が、YAAによって新たに生まれ変わりました。今回はデザインディレクターを務めたオカムラの松本祥昌に、YAAが初めて実装されたオフィス空間の魅力や、YAAを実際にレイアウトして感じた可能性についてお話いただきました。
なぜ、オカムラのオフィスをリニューアルされたのでしょうか。
今回リニューアルしたオフィス空間は、もともと大小含めて5つほどの部屋で構成されており、それぞれの場所で独立して活動が行われ、人の気配が感じられにくいという課題がありました。そこでフロアの壁を取りはらい、社員の働いている景色が連続的につながり、パノラマのように見渡せる環境を目指しました。
イメージしたのは、屋外で見られるような、街路樹の木陰や路面のカフェテーブルで自然とコミュニケーションが生まれ、人々が思い思いに過ごしている風景です。YAAが持つ高低差や曲線は、つい歩いたり、留まりたくなる街路のような空気感をつくり出すことができるため、そのような空間をつくるプロダクトとして非常に適していると感じました。
一般的な家具でオフィスをデザインすることと、YAAを起点にデザインすることに違いはありましたか。
大きな違いは、こちらのスペース、あちらのスペースと個別につくっていくだけでなく、その中間のような領域がつくりやすくなったことです。YAAはこれまで空間を仕切っていたパーテーションやシェルフよりも薄いため、スペースとスペースの間にある何もない空間も心地よい余白として感じられます。そういった中間領域が豊かになるほど、オフィス環境全体も豊かになると考え、今回のオフィスでもあえて広いところをつくったり、きゅっと集まっているところをつくったり、流れを意識しながら中間領域を設計していきました。
YAAならではの形状や機能は、どのように空間デザインに生かされたでしょうか。
水平方向の曲線や垂直方向の高さといった、YAAのもつ奥行き感を最大限に生かすことも強く意識しました。たとえば、YAAが一筆書きのようにつながって見えるように配置することで、囲まれた居場所同士がつながり、訪れた人が自然とあちらに行ってみようと思えるような流れをつくっています。また、囲まれた安心感を高めるために、空間を覆うような天井の植栽の高さもYAAの高さと連動させて段階的に変えています。席に座った時の包まれ方が場所ごとに少しずつ異なることで、集まる人数や想定されるコミュニケーションに応じた居心地が、植栽の木漏れ日とともに生まれるようにしています。
YAAを実際にフロアに配置して気づいたことはありますか。
印象的だったのは、YAAで影がデザインできるという発見です。テーブルや椅子など一般的な家具の影はどうしても塊になりがちですが、YAAはオープンフレームやロープがあるため影が線状にあらわれて圧迫感が少なく、とても美しいのです。
さらに、YAAの影が時間の移ろいとともにゆっくりと伸びていくことで、空間同士をほのかにつないだり、人の流れがつくれると考え、ライティングの位置も細かく調整しました。西側の窓にはブラインドの代わりに植物を配置し、夕方になると西日によってYAAのファブリックに草木の美しい影が落ち、まるでアートキャンバスのようになります。空間に作用する美しい影を生み出せるオフィス家具は、これまでに出会ったことがなかったので、YAAならではの可能性や面白さがあると思います。
YAAはこれからのオフィスにとってどんな存在になっていくでしょうか。
個人的なテーマとして、ワークプレイスの「ソーシャライズ」に興味を持っています。人と人、組織と組織がつながるというのはもちろん、ワークプレイスがどう社会とつながっていけるのか、というところにとても関心があります。
今回のオフィスでは、標準仕様よりさらに低いYAAを実験的につくり、レイアウトしてみました。ソファやスツールなどの低い目線でまざりつながる空間は想像以上に効果的で、車椅子の方や子どもの目線にも通じていると感じました。さまざまな人の立場になることで、もっと低くする、トップカバーだけを使うなど、新たなデザインの可能性も見えてきそうです。
「区切る」のではなく「まざりつなげる」というYAAのインクルーシブな考え方は、オフィスにとどまらずあらゆる場所において大切な考え方です。街中でも使えるアウトドア仕様のYAAをつくってみたり、被災地の避難所を心地よくするための紙製のYAAを考えてみたり、オフィスの枠を超えてYAAの思想がさまざまに広まっていくことで、ワークプレイスと社会はさらにつながっていくのではないかと思います。
松本祥昌
オカムラ デザインディレクター。リサーチやワークショップをふまえた空間デザインを通じて、多様なプロジェクトで豊かな体験づくりを行っている。2024年より、ワークプレイスデザイナーによる組織横断コンソーシアム『why work tokyo』の立ち上げに携わり、活動を展開している。