CREATOR’S VOICE 01

つくり手もつかい手も
まざりつながって進化する家具

ブレンディングファニチュアYAAという新しい形態の家具は、どのようなアイデアから生まれたのでしょうか。開発プロジェクトメンバーであるオカムラの齊藤健太、鈴木孝寛、廣瀨りほに加え、外部アドバイザーとして監修を担当していただいたAthenaのインテリアデザイナー北村紀子さんの4名にYAA誕生の背景をお聞きしました。

YAA が生まれたきっかけについて教えてください。

鈴木出社することが当たり前ではなくなったことで、オフィスの価値があらためて問われるようになりました。特にオフィスでの交流に重点が置かれたことで、空間をオープンにしようという潮流が根付き始めていました。そんな中、私もオカムラ社内で比較的オープンにつくられているオフィスへ異動することになったんです。基本的には開放的で気持ちがいいのですが、「もうひと工夫あればもっと仕事がしやすくなるのに」という違和感が拭えず、齊藤と一緒にどうしたら良くなるかを考え始めました。

YAAのデザインはどのようなプロセスを踏んで固まっていったのですか。

斉藤開発チームであれこれ話し合う中で、開放的な空間が重要であることに変わりはないのですが、その中でも人と人が出会いやすい場所や話しやすい場所、視線を合わせやすい仕掛けなどをつくってみようという方向性が定まりました。今までのパーティションは何かを隠すためのものでしたが、そうではなく空間をゆるやかに仕切ったり、動線によって人の動きを混ぜたりしたいという考えを実現できないかというリクエストをプロダクトデザイナーの廣瀨に託しました。

廣瀨人が集まりやすい場所はどのようなところなのか?自問自答しながら手を動かしていました。その中で間口を広く構えたくぼみのようなスペースがあれば、一緒に働く人たちを拒まずに、心地よく受け入れられる場所がつくれるのではないかという考えにたどり着きました。
その次に、今のオフィスに馴染むパーティションデザインとは何なのかを真剣に考えていきました。曲線の重要性から3種類のRパネルを考え、閉塞感を生まないよう、抜け感のあるパネルも3種用意しました。限りなく薄く、流れるようにつながるパネルのトップキャップやエンドカバー。巾木がないシンプルなデザインとすることで、多様なオフィス空間に馴染み、周りの家具を引き立たせるような存在になったと思います。

鈴木できる限り低くしたいし、視界を遮らずに人の流れをつくりたいとも話していましたよね。「仕切りたいけど分断したくない」という矛盾があったから、高さの低いパーツや柔らかいRのような既存のパーティションにはなかった特徴が生まれたんだと思います。

アドバイザーである北村さんはYAA を初めて見たとき、どのような印象を感じられましたか。

北村私はインテリアデザイナーの目線から意見がほしいと相談を受けたのですが、オカムラさんの検討している新製品がパーティションだとは夢にも思わなかったです。今の時代、ほとんど注目されていないカテゴリーですよね。でも、だからこそいいなと思いました。世の中に知れ渡っているニーズにあわせるのではなく、まだ誰も気づいていないオフィスの可能性にみなさんが挑んでいてワクワクしました。
近年のオフィスは(ABWの採用によって)バラエティに富んだ場所が求められているので、いろいろな家具が置かれます。デスク、カフェテーブル、ソファなどさまざまな家具が同じスペースに存在しているので、ガチャガチャとした空間になってしまいがちです。それらを空間として調和させるのがインテリアデザイナーの仕事なのですが、YAAを初めて見た時に、適度なゾーニングによって自然と統一感が生まれそうだと感じました。

廣瀨北村さんからいただいたアドバイスにはハッとする視点がたくさんありました。開発の途中で、北村さんのような立場の方からの意見をお聞きすることができ、相談に乗ってもらえたということが、新鮮でとても大切だったと思います。

北村はじめ、フレームのビスを樹脂カバーで隠していましたよね。それはすぐに「いらないと思います」とお伝えしました。異素材が入ると統一感がなくなってしまいますし、オカムラさんにはディテールを仕上げる技術力があるから、黒いビスがむき出しでもきれいになると直感しました。

最後に、企業やインテリアデザイナーの方々にはどのように使っていただきたいでしょうか。

齋藤働く人たちがまざりつながってコミュニケーションが増えることで、いい意味でオフィスがうるさくなってほしいと思います。ゆるいコミュニケーションの延長線上に濃いコミュニケーションが生まれると思うので、その土台にYAAがなってほしいです。
また、環境配慮の観点からも魅力はあるかもしれません。YAAを使えばオフィスの造作壁を減らすことができるからです。造作壁はレイアウトを変更しようとすると、解体して廃棄となりますが、YAAは組換えが可能なのでフレキシブルであり、サステナブルです。

廣瀨やっぱりインテリアデザイナーの方々に楽しんでレイアウトしていただきたいですね。YAAにはこう使わないといけないという縛りはないので、自由にレイアウトしていただいて新しい発見や驚きが増えるといいなと思います。

北村たしかにそうですね。インテリアデザイナーからもっとこうなってほしいという声があがって、YAAがどんどん進化していく。YAAのつくり手とつかい手もまざりつながっていくといいですね。

オカムラ デザインチーム
齊藤健太

齊藤健太

企画担当

鈴木孝寛

鈴木孝寛

開発担当

廣瀨りほ

廣瀨りほ

デザイン担当

北村紀子

北村紀子・Athena Inc. 代表

ワークプレイスを専門とした設計事務所SL&AJapan代表として17年活動後、2025年にAthenaを設立。企業の文化や成長戦略に寄り添い、ワークプレイスを経営の原動力へと変えるデザイン&ストラテジーコンサルティングを展開している。