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2017.02.15  取材・文/山下久猛 撮影/大平晋也 イラスト/フクダカヨ

参加者に大好評

椅子製作風景

佐藤 参加者は全部で11組、22名の親子連れの方々で、お子さんは下は3歳から上は高校生までいました。みなさん普段木に親しんでおらず、木がどういうものなのかがわかっていないように見受けられました。だからこそ、実際に木を触って切って組み立てるという一連の作業を通して、木とはどういうものなのかを体感し、喜びを感じ、かつ自分の作りたい椅子ができたので楽しかったと、非常に喜んでいただけました。木育イベントとしては大成功だったと思います。

参加者の制作した椅子

角田 本当は1組につき椅子は1脚だけつくってもらう予定だったんですが、みんな楽しくなっちゃって2脚3脚と作ってくれたのがすごくうれしかったですよね。用意した素材が全部なくなっちゃいましたからね。

浅野 みなさんが作ったのはちゃんと座れるような椅子だったんですか?

佐藤 日常生活で充分に使える椅子だよ。

森田 かなりレベルの高い椅子ができてましたね。

佐藤 そうそう。最初はちゃんとできるかなと思って心配していたんだけど、その心配は全くいらなかった。次回はもっとレベルの高いものを作らせても大丈夫ですね。

随所でサポートに入った角田さんと森田さん
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随所でサポートに入った角田さんと森田さん

角田 多分、みなさん、単に大きな板材や長い角材が置いてあるだけだとどこから椅子を作っていいのか悩むでしょうけど、あらかじめ木材を「これは脚に使えるかな」とか「座面に使えるかな」と容易に想像できるようなサイズにカットしておいたので、小さなお子さんでもその場でブロックのように組み合わせることで椅子づくりが楽しめたのではないかと思います。

森田 お子さんとご両親だけだと、作る過程で行き詰まってしまった時にどうしようと不安になりますが、その場に我々家具メーカーという専門家がいたので安心感があったと思います。

浅野 なるほど。確かにそれは大きかったでしょうね。

木育は子どものためだけのものにあらず

森田 あとこの時すごく印象的だったのが、木育というと子どもに対してするものというイメージだったのですが、実際にワークショップ形式でやってみるとお父さんお母さんの方が盛り上がっていたんですよ。もしかすると木育といっても、対象年齢はもっと上、大人なのかなと思うほど、子どもそっちのけで盛り上がってどんどん作っていた人もいてびっくりしました(笑)。

佐藤 そうね。意外と大人が盛り上がってたね。原木に接することなんてめったにないだろうからね。今後は大人も木育の対象にすべきかもしれない。

角田 イベントの翌週に、できあがった椅子を武蔵溝ノ口駅のコンコースに飾ったのですが、結構盛況で、たくさんの人が見てくれてたのでよかったですね。

このイベントで完成した椅子は武蔵溝ノ口駅のコンコースに展示された

このイベントで完成した椅子は武蔵溝ノ口駅のコンコースに展示された

佐藤政満(さとう まさみつ)

佐藤政満(さとう まさみつ)
1956年東京都出身。株式会社岡村製作所 マーケティング本部 企画部長

大学でプロダクトデザインを専攻後、岡村製作所に入社。オフィス製品やホームインテリア製品のデザイン、パブリック製品やオフィス製品の企画開発などを経て、現在はマーケティング本部にてプロジェクト単位の製品開発支援、また個別営業物件の製作調整、支援などに従事している。


角田知一(かくた ともかず)

角田知一(かくた ともかず)
1964年神奈川県出身。株式会社岡村製作所 きづくりラボ チーフデザイナー

大学でインダストリアルデザインを専攻後、岡村製作所に入社。ホームインテリア家具やオフィス家具のプロダクトデザインを担当。現在は木に関する研究や木製家具の開発と地域創生に繋がる産学官研究などに従事している。


浅野裕一(あさの ゆういち)

浅野裕一(あさの ゆういち)
1968年東京都出身。株式会社岡村製作所 マーケティング本部 パブリック製品部

大学で機械工学を専攻後、岡村製作所に入社。製品設計や特注製品のデザイン業務を経て、現在は教育施設向け家具の企画開発を担当している。


森田舞(もりた まい)

森田舞(もりた まい)
1978年東京都出身。株式会社岡村製作所 マーケティング本部 オフィス研究所 主任研究員

大学、大学院で建築学を専攻後、岡村製作所に入社。オフィス製品の企画開発を経て、現在は教育施設を中心として、よりよい空間・環境のあり方に関する調査・研究に従事。専門は建築計画。博士(工学)、一級建築士。

初出日:2017.02.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの