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2017.01.06  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

葉山漁協の正組合員に

畠山晶-近影5

──準組合員と正組合員の違いは?

仕掛けることのできる刺し網の数が違うんです。準組合員は2カゴまでですが、正組合員は6カゴまで可能になります。当然仕掛けられる網の数が多ければそれだけ漁が効率的にできますし、獲れる魚の数も増えるので収入に直結します。また、ワカメ漁の解禁日が準組合員は正組合員よりも1日遅いんです。ワカメ漁は収入のメインなので他の漁師より1日でも遅いと結構痛いんですよね。でも葉山漁協の場合は正組合員と準組合員の違いってこの程度なので他の地域に比べたら全然ゆるいんですよ。

準組合員として1年間漁をして、正組合員への申請を出したのですが認められず、もう1年やって2015年3月に正組合員として認められました。これを目標にして頑張ってきただけに、もちろんすごくうれしかったです。やっと漁師になれた気がして。


──葉山には漁師さんは何人くらいいるのですか?

正式な漁協の組合員の資格をもってるのは110人くらいいるのですが、その内1年中漁に出ているという専業漁師は20人いるかいないかくらいです。ただ、私も1年中漁には出ていますが、漁師の収入だけで生活できているわけではありません。週の半分以上は近所のカフェでアルバイトをしています。ただ、意識の中では本業はあくまでも漁師です。

葉山町漁協の漁師たちと

葉山町漁協の漁師たちと

漁師の仕事

──現在の漁師としての具体的な仕事について教えてください。実際にはどんな漁をしているのですか?

畠山晶-近影7

仕掛けた刺し網から掛かった獲物を外す。この日はタカノハダイ(写真)、イシダイ、カワハギ、サザエなどが掛かっていた

季節によってまちまちですが、年間を通して行っているのが、魚の通り道に網を仕掛けて魚を獲る刺し網漁です。網にかかるのは、サザエ、イセエビ、カサゴ、カワハギ、イシダイ、メバルなど。狙う獲物によって網の目の細かさや仕掛ける水深が違うんです。仕掛ける網は基本4カゴ、多い時で6カゴ。網を仕掛けるのも引き上げるのも重労働なので、1人だとその辺が限界なんです。

冬場は船上から箱メガネを覗いて長い竿を使ってサザエやアワビを突くみずき漁と、ナマコ漁が最盛期になります。また、年末はハバノリという海草も採っています。

2月末くらいから1ヶ月間、天然のワカメ漁が解禁になります。この時期には毎朝7時に港へ行って、前日に干したワカメを取り込みます。8時30分くらいに港から船を出して13時までワカメを切ります。港に帰ってきたら大きな釜で湯を沸かして、ワカメを湯がいて干します。これを16時くらいまで行います。帰宅したら自宅でワカメの袋詰を行います。このワカメ漁が漁師としての収入のメインなのですが、去年のワカメが水温の上昇などで過去最低と言っていいくらい全然育っていなくて悲しかったです。

3月末からヒジキ漁が始まります。ヒジキは採った後、釜に入れて一晩かけて蒸すのですが、薪で蒸しているので温度調整が難しいんです。なので、師匠に教わりながらやっています。

ヒジキ漁の様子。師匠の矢嶋さんと行う

畠山 晶(はたけやま あきら)

畠山 晶(はたけやま あきら)
1985年神奈川県出身。漁師(葉山町漁業協同組合正組合員)

神奈川県立三崎水産高等学校(現・神奈川県立海洋科学高等学校)を卒業後、ダイビングショップのスタッフ、母校の教員、結婚式の司会業などを経て2011年、葉山のベテラン漁師・矢嶋四郎氏に弟子入りし見習い漁師に。2013年、 葉山町漁業協同組合の準会員、2015年、葉山町漁業協同組合の正会員として認められ、葉山漁協で初にして唯一の女性漁師に。年間を通して海に出て、刺し網漁、ワカメ漁、潜り漁などを行っている。2013年12月から漁師仲間に呼びかけて、自分たちで獲った魚介類を販売する朝市を真名瀬港で開始。好評を博している。

初出日:2017.01.06 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの