開催終了

居心地のよさはどうつくられるのか。
海を越えて見つけた空間と素材のリアル

  • 2026年6月24日

当イベントにご来場いただき、誠にありがとうございました。

4月にオープンしたオカムラの新たな素材ライブラリー「MATERIUM(マテリウム)」にて、第2 回のイベントを2026 年6 月24 日に開催しました。
本イベントでは、「居心地のよさはどうつくられるのか」をテーマにトークプログラムを実施。オフィスや店舗、住宅などの空間デザインやインテリア設計を手がけるデザインスタジオFLOOAT,INC.(フロート)の吉田裕美佳さんと、株式会社オカムラCMF推進室 室長の中西真己が登壇しました。
Milano Design Week(ミラノデザインウィーク)やデンマークで開催された3daysof design(3デイズオブデザイン)など海外デザインイベントの事例から、空間と素材のリアルについての深い議論が交わされました。

空間にそっと、感情を吹き込むCMFとは

なぜ今、空間において素材や色が重要視されているのでしょうか。

「CMF」とはイタリアの工業デザイナーClino Castelli 氏が提唱した概念。Color(色)、Material(素材)、Finish(仕上げ)の頭文字をとった言葉で、「形」にとらわれない人間の五感や環境に訴えかける「かたちのないデザイン」を意味します。
主に車や家電業界から広まった概念であり、オカムラでは2015 年にCMF 推進室が設立されました。

中西
中西

CMF推進室 室長

ただ働くだけの場所からの転換。働く人の感情に寄り添うデザインへ

これまでのオフィスは、機能性と効率性が何より重視されてきました。しかし昨今のオフィスでは、「リラックスして働ける」「オフィスに来た時にワクワクする」「このオフィスで働くことに誇りを持てる」といった、働く人の感情に寄り添う役割が求められています。CMF はまさに、その場の空気や雰囲気を形づくり、活動をよりパワーアップさせるエモーションの部分を担っています。

オカムラでは、CMF の考え方を取り入れたことで、製品単体としての魅力だけでなく、「どのような空間に置きたいか」という視点から開発を行っています。パネルや机、椅子などを俯瞰的に見て空間全体での調和を目指すため、「CMF VISION(ビジョン)」という道しるべを策定し、開発メンバー間で共通認識を持っています。

海を越えて見つけた、心揺さぶるデザインの現在地

人々の感情を動かす空間づくりは、世界最前線のデザインイベントでどのように表現されているのでしょうか。15 年以上にわたり毎年足を運んでいるというFLOOAT,INC.の吉田さんとオカムラの中西が、感情を揺さぶられた展示を中心に紹介してくれました。

ミラノで見つけた、予想を裏切られる体験と高度なスタイリング力

毎年4 月にイタリア・ミラノで開催される世界最大の展示会Milano Design Week は、グローバルな未来のデザインの発信地です。

今年、特に話題を集めたのがGUCCI の展示。入場用QR コードをかざすと飲み物がもらえる自動販売機が現れます。ランダムな柄の缶にはレモン味などのフレーバーが書かれています。

GUCCI の展示で貰える中身の違うドリンク缶
中西
中西

CMF推進室 室長

そのラベル、本当に合ってる? 記号化された世界をゆさぶる仕掛け

実際に缶の中身を口にしてみると、全く違うコーヒー味だったりするんです。これは「人は他者をミレニアル世代というように、すぐに記号化(ラベル付け)してしまいがちだけれど、本当の中身は一人ひとり違うよね」というメッセージを表現していたんです。こうした予想を裏切る体験が、すごく新鮮で面白いなと感じました。

また、RED DUO(レッドデュオ)というデザイナー夫婦による展示も注目を浴びました。自分たちが実際に住んでいる居住空間を舞台に、彼らがデザインしたプロダクトと、今のイタリアのデザインやビンテージ家具をミックスした高度なコーディネートを展開していました。

吉田裕美佳さん
吉田さん

デザインディレクター

色と素材で遊ぶ。大人のスタイリング力

例えば寝室は、水色と薄い黄色という、下手したら少し幼稚な印象になってしまいがちな色使いなんです。ですが、そこに差し色として濃い紫をスッと効かせたり、スチール素材を入れて引き締めたりと、絶妙なバランス感でとても大人っぽく仕上げていました。単にプロダクトを並べるだけではない、生活空間としての圧倒的なスタイリング力には感動させられましたね。

コペンハーゲンで出会った、新しいデザイナーや作品たち

一方、毎年6 月にデンマーク・コペンハーゲンで開催される3 Days of Designは、単なるモノではなく関係性と体験を展示する、ミラノとはまた異なる魅力を持ったデザインイベントです。

ここでは、大量生産品ではない、コレクタブルデザインの展示が多く見受けられました。最も注目を集めたother circle(アザーサークル)というイベントでは、日本人を含む世界中のデザイナーが参加。今人気のデザイナーからこれから注目されそうなデザイナーによる家具やオブジェなど、新しい視点を持った作品が魅力的に展示されていました。

こうしたモノの展示だけでなく、遊び心のある体験が用意されているのもこのイベントの魅力です。

怪獣の手が出てきて抹茶を出してくれる展示
吉田裕美佳さん
吉田さん

デザインディレクター

ボタンをポチッと押してみたら。壁の向こうから届く、インスタレーション

今、海外で「抹茶」がすごく流行っているのですが、それをユニークな体験型展示に落とし込んでいました。壁には穴が開いていて、その横にあるボタンを押すと、なんと中から怪獣の手がにゅっと出てきて抹茶を出してくれるんです(笑)
ただモノを見せるだけでなく、そのブランドの世界観を体験を通して記憶に残させるすごくうまい展示の方法でした。

探し、足を運んで、勉強する

このように膨大な情報が溢れる海外の展示会ですが、吉田さんはどのように情報を集め、何をインプットしているのでしょうか。

吉田裕美佳さん
吉田さん

デザインディレクター

仲間とともに作戦会議。プロが求める唯一の目的

ミラノは、大量の情報の中から気になるヴィジュアルやデザイナーのものをピックアップし、そこから皆でマップや情報を見ながら「次はここ、その次はあそこ」と作戦を立てて回る、まさに情報戦です。 一人では多分無理ですね。そうして選び抜いて足を運んだ展示で期待するのは、やはりスタイリングが気になります。
自分たちでは思いつかない色や素材の組み合わせ、空間の構成力のある表現は、空間デザインの引き出しとして非常に勉強になっています。

ノイズを削ぎ落としたその先に。
引き算から生まれる居心地のよさ

これらのインプットは、実際に今回の会場であるMATERIUM の空間デザインにも活かされています。

吉田さんは、MATERIUM 設立の提唱者であり設計に携わった人物です。空間設計の意図について「プロダクトを見せるショールームであるため、いかにノイズをなくすかを考えた」と語ります。 この思考はMATERIUM だけでなく、吉田さんがグランドフェア2026に向けて2025 年に改装したオカムラガーデンコートショールーム全体にも通じています。

セントモリッツ教会
セントモリッツ教会

インスピレーションの源となったのが、John Pawson氏が改修を手がけたセントモリッツ教会。最小限に削ぎ落とされた空間で、ガラスではなく薄く削ったオニキスを通して光を取り入れるなど、光の捉え方が非常にうまい建築に感銘を受け、要素を最小限にして表現する空間の魅力を再確認できました。

この素材感の組み合わせや、Donald Judd氏のグリッドの表情などもどことなくイメージしながら、MATERIUMの設計に落とし込みました。

MATERIUM(© Nacása & Partners Inc.)
ガーデンコートショールーム YAAエリア(2026年9月時点)(© Nacása & Partners Inc.)

こうして、プロダクトを際立たせながらもノイズを感じさせない、居心地のよさが体現されました。

居心地のよさを探求する旅は、これからも

居心地のよさにおけるCMF と空間、素材の重要性、そして最前線の熱気を肌で感じることができた本イベント。ここで語られたような最新の海外トレンドは、今後のオカムラの空間づくりにもしっかりと活かされていきます。

トークプログラム後は懇親会が開かれ、登壇者や参加者が居心地のよい雰囲気で盛り上がっていました。

MATERIUM では今後も、空間や素材をきっかけに、新たな視点や出会いが生まれるイベントを開催していきます。人・素材・知識がつながり、より良い選択につながる場を目指しています。

編集
ノオト、オカムラMATERIUM
執筆
西村重樹

イベント概要

開催日時
2026年6月24日(水) 18:00〜20:00
開場:17:30 懇親会:19:00〜20:00
申込締切
2026年6月24日(水)  16:30まで
場所・会場
東京都千代田区紀尾井町4-1 
ニューオータニガーデンコート3F
MATERIUM Google MAP
定員
50名
参加費
無料
プログラム
18:00 吉田氏 / 中西 
講演
19:00 懇親会
吉田 裕美佳 氏

吉田 裕美佳 氏
(FLOOAT,INC.デザインディレクター)

オフィスを中心に、店舗や住宅など国内外の多様なプロジェクトを手がけ、日常に寄り添う上質で心地よい空間を創出している。日本発のインディペンデントなデザインジャーナル『Ilmm』の発行にも携わる。主な仕事に2023年「三井物産都市開発本社オフィス」など。

甲斐 蓉子

中西 真己
(株式会社オカムラ CMF推進室 室長)

各種展示会の空間デザインや、オフィス空間における色彩・素材の研究を経て現職。2015年よりCMFを専門とするデザイナーとして、商品開発や素材開発に携わる。はたらく人の感性に働きかけるCMFデザインを通じて、「はたらき心地」のよい空間のあり方を探り続けている。

イベントレポート

CMF