WAVE+

2017.01.17  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

漁師という仕事

畠山晶-近影8

──仕事観についておうかがいしたいのですが、畠山さんにとって仕事とはどういうものですか?

仕事とは何かなんてあまり深くは考えていません。漁師という仕事は第一に楽しいからやってて、それが微々たるものだけど収入につながっているという感じなので、仕事をしているという意識はあんまりないんですよね。そういう意味では、漁師は趣味だといえなくもないかも(笑)。


──ということは、あまり漁師の仕事で儲けたいとは思ってないということですか?

いえいえ、もちろん、漁師の収入をもっと増やしたいとは思っていますよ。今、もう少し大きい新しい船を探しているところなんです。船が大きくなれば獲れる魚の漁も増えますしね。今はこの業界も高齢化で廃業する漁師が増えているので、船を安く購入しやすいんですよ。


──では、生きる上で大切にしていることは何ですか?

畠山晶-近影9

過去にこのWAVE+に登場した川崎直美さんなど、環境のことを考えて活動している人と多く繋がっていることもあり、持続可能な社会を目指して自然を大切にしようと思いつつ日々生きています。漁師の仕事においても、禁漁のものを獲らないのは当然として、魚でもサザエでも小さいものは海に返すなど、小さいことですが実践しています。毎日自然の中で仕事をしているので、自分のことだけじゃなくて自然のことも考えながら生活しようとは思っています。新しく買う予定の船も環境のことを考えてバイオディーゼル、天ぷら油で走らせる船を検討中なんです。


──プライベートについてお聞きしたいのですが、この先、結婚とか出産については考えていますか?

あまり深くは考えていません。漁師になってからは恋愛に割く時間がないので今は独身なのですが、結婚したいと思う人と出会ったらするという感じですかね。子どもについては積極的にほしいという感じでもないですよね。ただ、もし産まれたら3歳までは自分の手で育ててあげたいなと思っています。そうすると漁師の仕事ができなくなるので、当分考えられないですね(笑)。

今後の目標

──今後の目標を教えてください。

畠山晶-近影10

やっぱり究極の目標は漁師の仕事だけで食べていけるようになることですね。そのためには新しい船を買ったり網の数をもっと増やす必要があると思っています。

先程もお話しましたが、漁にはセンスが必要で、私にはセンスがないわけじゃないと思ってるので、これからもっと経験を積んでどこに何がいるかわかるようにセンスとスキルを磨きたいですね。どこかに絶対、イセエビのパラダイスがあると思ってるのでそれを探し当てたいんですよ(笑)。

ただ、経験を積めばもっと魚が穫れるようになるとは思うのですが、一方で、温暖化などで年々魚が獲れなくなり、魚の価格も下がってきているので、漁師だけで自活することが果たして可能なのだろうかと不安になることはあります。でも葉山で獲れた魚を地方発送したり、加工品を生産するなど、付加価値をつけることに葉山の人たちと一緒に取り組んで、街全体で漁業を盛り上げたいと思っています。そうすれば葉山が活性化するし、私の収入にもつながるのかなと。

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とにかく漁師は死ぬまでずっと続けたいですね。おばあちゃんになって体が思うように動かなくなっても、潜りと海草漁はできますから(笑)。それだけ漁師という仕事が好きなんです。

インタビュー前編はこちら

畠山 晶(はたけやま あきら)

畠山 晶(はたけやま あきら)
1985年神奈川県出身。漁師(葉山町漁業協同組合正組合員)

神奈川県立三崎水産高等学校(現・神奈川県立海洋科学高等学校)を卒業後、ダイビングショップのスタッフ、母校の教員、結婚式の司会業などを経て2011年、葉山のベテラン漁師・矢嶋四郎氏に弟子入りし見習い漁師に。2013年、 葉山町漁業協同組合の準会員、2015年、葉山町漁業協同組合の正会員として認められ、葉山漁協で初にして唯一の女性漁師に。年間を通して海に出て、刺し網漁、ワカメ漁、潜り漁などを行っている。2013年12月から漁師仲間に呼びかけて、自分たちで獲った魚介類を販売する朝市を真名瀬港で開始。好評を博している。

初出日:2017.01.17 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの