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2013.09.17  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

マイノリティ目線で常に考えている

──そういったさまざまな企画は須藤さんが考えて企業や団体にプレゼンしているのですか?

いえ、そうではありません。僕ひとりでやっているわけではなくて、ネクスタイドやピープルデザイン研究所に関わってくれている大勢の人びととの対話からさまざまなアイディアが生まれます。それをまたプロジェクトごとにかかわってくださる社内外の人たちで実現可能な企画レベルにブラッシュアップします。ただ、それらを実施するかしないかの最終的な決断と企業へのプレゼンは代表である僕の役目です。あくまでチームとして活動しているんです。


──とはいえ須藤さんご自身が思いついたアイディアもたくさんあるわけですよね。

ネクスタイドを立ち上げてから10年間、障害児の父としてマイノリティの人たちがこの社会で生きる上で感じている問題・課題をリサーチしてきたともいえます。いわゆる数の上では少数派に分類されるマイノリティの方々とのネットワークもできました。だからマイノリティ目線で混ざり合う状況を実現するためにはどうすればいいかということを常に考えているので、その解決策のアイディアも次々と湧いてくるわけです。特に次男が障害者なので彼の成長にともなって、就労に関する課題も当事者として興味が高まってくるんです。

大学の講師も務める

──須藤さんはいくつかの大学で講師としてもご活躍されてますよね。

はい。国内では慶應義塾大学商学部の牛島ピープルデザイン研究室や滋賀大学経済学部で学生たちにピープルデザインについて教える機会をいただいています。これまでの僕らの活動の実例で、目の前にある社会課題の解決という行為を経済に直結させて考えていくということを主にレクチャーしています。最近の学生は社会的な活動に非常に関心が強いので伝え甲斐がありますね。

滋賀大学経済学部の講義にて

海外ではオランダのデルフト工科大学のMBA下期マスター取得コースでピープルデザインの授業を行なってきました。


──オランダでの授業は英語で行なっているんですよね。

もちろんです。生徒はオランダ人、フランス人、イタリア人、ギリシャ人、台湾人、中国人、韓国人、アメリカ人など世界各国から来ていて授業は英語で行います。みんなピープルデザインという哲学に強い興味をもってくれて、僕の授業を全身全霊で聞こうという姿勢で来ています。英語という言葉はあくまでも考え方を伝えるツールにしかすぎません。オランダをはじめとする先進国では「ダイバーシティ」の思想は必要不可欠なものです。また、社会問題の解決策を法律のみに頼ることなく、市民レベルでどうクリアしていくか、その方法論を常に模索しています。そこでこれまでのネクスタイドの活動実績を元に「ピープルデザイン」という思想、それを具現化するプロダクトデザインやシステムデザインの創出に、世界中から集った彼らは前のめりで取り組みます。彼らの本気度を目の当たりにすると「ピープルデザイン」という日本製の概念に大きな手応えを感じています。

デルフト工科大学にて

そもそもピープルデザインという考え方は特にヨーロッパの国々からの関心が高く、2007年からフィンランドのアントレプレナーたちにピープルデザインについて伝えているんです。

また、今はまだ詳細は言えないのですが、北欧のある国から高齢化の問題を解決するための思想的ツールとしてピープルデザインを取り入れたいというオファーもいただいています。


──なぜ国内よりも外国の方が関心が高いのでしょうか?

一番の違いは、政治家や国民が当事者としてその国の未来を考えているということだと思います。デンマークとオランダって社会貢献性やジャーナリズムへの関心度が先進国の中でも常にトップクラスなんです。その理由のひとつとして、その2国は国としての規模が小さいということが挙げられるかもしれません。デンマークは人口600万、オランダは1700万くらいの規模しかないがゆえに、国民一人ひとりが自分の国の未来を真剣に考えているんですよね。その証拠にその2つの国の投票率は80%を超えています。

方や日本は震災後の対応や反応を見ていても、この国の未来を国民一人ひとりが真剣に考えているとはとてもじゃないけど言いがたい。考えていたとしても言わない。その当事者意識や国民性の違いだと思いますね。

須藤シンジ(すどう しんじ)
1963年、東京都生まれ。有限会社フジヤマストア/ネクスタイド・エヴォリューション代表、NPO法人ピープルデザイン研究所代表理事。

大学卒業後マルイに入社。販売、債権回収、バイヤー、宣伝、副店長など、さまざまな職務を経験。次男が脳性まひで出生したことにより、37歳のとき14年間勤務したマルイを退職。2000年、マーケティングのコンサルティングを主たる業務とする有限会社フジヤマストアを設立。2002年、「意識のバリアフリー」を旗印に、ファッションを通して障害者と健常者が自然と混ざり合う社会の実現を目指し、ソーシャルプロジェクト、ネクスタイド ・エヴォリューションを設立。以降、「ピープルデザイン」という新しい思想で、障害の有無を問わずハイセンスに着こなせるアイテムや多業種の商品開発、各種イベントをプロデュース。2012年にはダイバーシティの実現を目指すNPOピープルデザイン研究所を創設し、代表理事に就任。

初出日:2013.09.17 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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