大本 綾 - futureplaceインタビュー

大本 綾 株式会社レア 共同代表/クリエイティブ・プロセス・デザイナー I N T E R V I E W おおもと・あや 1985 年、京都府生まれ。高校、大学で カナダとアメリカに 2 年留学。大学卒業 後、 WPP グループの広告会社であるグ レイワールドワイドで、大手消費材メー カーのブランド戦略、コミュニケーション 開発に携わる。その後、デンマークのビ ジネスデザインスクール「 KAOSPIROT (カオスパイロット)」初の日本人留学 生として受け入れられ、 2015 年 6 月に 卒業。留学中は起業家精神とクリエイ ティブ・リーダーシップを中心に学び、デ ンマーク、イギリス、南アフリカ、日本に おいて社会や組織開発のプロジェクト に携わる。ダイヤモンド・書籍オンライン の連載記事『幸福大国デンマークのデ ザイン思考』の著者。カオスパイロット の留学経験から、クリエイティブは才能 ではなく、トレーニングによって得ること ができるスキルだと確信。企業や教育 機関をはじめ、さまざまな組織に対してク リエイティブな人材育成と組織開発プ ログラムの開発・実施を行い、好評を博 している。 -問いかけも含めたプロセス全体ですね。 問いかけがなぜ重要かというと、その答えと いう「プロトタイプ」をどんどんつくっていくこ とで、思考の質が高まるからだと思うんで す。これは「デザイン思考」という考え方に もつながりますが、試作を繰り返してフィード バックをもらう中で、結果の質が高まってい きます。そのためには、問いかけ自体の質も 大切になるでしょうね。 まずは自分から始まって 明日の素敵な関係性につながる -改めて、大本さん自身が大切にして いる考え方みたいなものはありますか? 私の好きな考え方に、「あらゆる物事は、シ ステムでつながっている」というものがありま す。例えば、「自分は、今日は気分がいい」と いうことには、よく眠れたからとか、昨日食べ たご飯が美味しかったからとか、話したこと がよかったからとか、いろいろなものが紐づ けされています。物事の原因と結果を、単純 に直線的に捉えるのではなく、多角的に捉 えるという考え方。物事や人というものは、 複雑で混沌としていますから、いろいろな角 度から見たほうが本質に迫れると思います。 -なるほど。そうした複雑さや混沌にさま ざまな角度から光を当てていくのが、先ほ どうかがった「問いかけ」なのかもしれませ んね。それでは、大本さんが好きな言葉は? 「余白」という言葉は好きですね。日本画 にも見られるように、日本文化が持っている 「余白」や「間」というものに美意識や可能 性を感じます。先ほどの休みの話にもつなが りますが、余白を一日の暮らしの中でどうつく るか。そして、その空白は自分の中でどのよ うにでも位置づけることができます。何か困 難な状況であっても余白のあることが、心の 余裕や、親切心や、行動を生む出発点にな ると思います。あえて残しておく自由なブラン クが、創造のキーになるかもしれません。 -「休みのデザイン」や「余白」などのキー ワードで、面白いお話をうかがいました。 まずは 1 人から始まるものですよね。自分か ら始まって、自分でデザインできる休みが あった上で、 10 人集まれば、お互いの休み のデザインをサポートし合うことができます。 チームの休み、部門の休みとだんだんス ケールアップしていくとどうなるか。そんな休 みを輝かせるためには、いろいろな休み方に 触れることも大切だと思います。日本という 素敵な国の中で、その人に合った働き方だ けではなく、その人に合った休み方のデザイ ンを話し合えるような環境や関係性ができる といいですね。 左上/自分で時間を管理しながら休み時間を創り出す キューブ。数字が何分間かを表し、上面の時間が経過 するとアラームが鳴るため、それまで集中できるしかけ になっている。「時間を用意して、それを細かく割って配 分しながら考えることが大事だと思います」と大本さん。 VOL.25 | NOVEMBER 2017 ています。日本の伝統と組み合わせること で、新しいクリエイティブな儀式ができない か、探求していきたいですね。 -お寺や「道」とビジネスとのつながり なんて、考えたこともありませんでした。 オフィスはどうしても欧米的なものが中心に なっていますから、もっと石庭的なものが日 本のオフィスの中にもあってもいいですね。 それがスイッチ ON や OFF のきっかけになる かもしれません。デンマークはどちらかという と「話す文化」で、とにかくよく話し、あまり間 がないんです。それが、「カオスパイロット」で 書道を使ったワークショップを行った時に、 沈黙によって内省がもたらされ、非常によ かったと好評でした。墨というものは、紙に 落とすと二度と還ってはきません。そこに働 く意思は、人のコミットメントにもつながるか もしれません。日本の「道」なるものが、もっ と普段のビジネスや働き方に使えるのでは ないかと感じています。 問いかけがサポートする 「学び」という名の「旅」 -デンマークと日本の対比から、いろん なことが見えてきますね。 ビジネスのプレゼンテーションでも、日本と デンマークとの大きな違いがあります。日本 人は「イノベーションはこうです」「働き方改 革はこうです」と定義することが多いので すが、デンマーク人のプレゼンテーションで は「私たちはどうすれば、こうできるでしょう か?」というオープンな問いかけが多いんで す。それはとても大切なことで、個人でも組 織でもいろいろな個性や風土、文化があり ますから、絶対的な答えは一つもないと思う んです。それぞれが納得する答えであるかが 重要になるでしょう。 -揺れながら考える、たくさんの問いか けの集大成が、成長につながっていくの でしょうね。 そうですね。人が「学び」という名の「旅」 をするためには、常に問いかけが必要で す。「こうありたい」という理想と、現状との ギャップを埋める「旅」。それを続けるために は、体力や意思のほかに、サポートしてくれ る存在、問いかけてくれる存在が大切です。 そうした中で、「自分がよく働くためには、何 が必要なのか」を組織や会社の中で細か く定義していくことが、最終的にはオリジナ ルな環境やモノやサービスにつながるでしょ う。そんなプロセスを設計することが、今、必 要とされていると感じます。それが、私が携 わっている仕事になります。 南青山にある「 Laere (レア)」のオフィス。自 席のほかにハイカウンターや大きなテーブルが あり、気分に合わせて働く場所を変えることが できる。なお、レアにはデンマーク語で「学ぶ」と 「教える」の両方の意味合いがある。 best practice for work place AYA OMOTO inter v iew with

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