大本 綾 - futureplaceインタビュー

大本 綾 株式会社レア 共同代表/クリエイティブ・プロセス・デザイナー (→次ページに続く) に対する考え方があって、 8 時間働いて、 8 時間休んで、 8 時間寝るというものですが、 私には 8 時間の休みを取るという発想があり ませんでした。休んで何もしないのを恐れる 気持ちもあるでしょう。でも、休みの時間に は今までやってきたことを振り返ったり、考え 直したり、思わぬ気づきがあったり、次にどう しようかと考えることができますよね。ですか ら、自分に合った休みをどうデザインするか は、とても大切だと思います。 5 分でも 10 分 でも、その人らしい休み方ができれば、短時 間でもリフレッシュして次の生産性につなが るでしょう。オフィスでも、休める環境を自分 でデザインすることが大切になってくるかも しれませんね。 -休める環境のデザインというのは面 白いですね。 デンマークでは、家具が人の行動や意識や 習慣をつくると考えられています。働く時の 心地よさにもいろいろあると思いますが、仕 事をしている ON の時は、シンプルでモノが 少ない環境だと集中できて心地よく感じると 思います。 OFF だと、例えば緑のある環境で は、人間が本質的にリラックスできるでしょ う。また、体を動かせる環境も大事です。デ ンマークが定める労働環境では、どのオフィ スでも上下昇降デスクを導入する必要があ ります。時々立って、時々座ってという動的 な動きのあるオフィス環境では、意識的に体 を動かすことができます。そのように、いろん な心地よさ…デンマークでは「ヒュッゲ」と言 うのですが、居心地の良い時間や空間をつ くることが大事ですね。キッチンやダイニン グにいい家具を使って、休憩することを大切 にしたり。デンマークでは大学や市役所、銀 行でも、素敵な家具を使っています。企業に おける家具はブランディングであり、そこで過 ごす人の気持ちを大きく左右しますから、そ うした点に意識を向けると企業の価値やイ メージは高まると思います。 それぞれに見つめていきたい 創造や休憩の儀式 -家具や環境が、価値や創造性を高め るのですね。 「カオスパイロット」の授業の中で面白いと 思ったものに「クリエイティブ・リチュアル」と いうものがあって、創造的な儀式を自分で デザインするんです。例えば、自分が心地よ いと思える素材や風向きや匂い…いわゆる 五感で感じるものを分析し、それをベースに しながら自分で環境づくりを行います。儀式 というのは、スポーツ選手の「ルーティン」と 呼ばれるものを見ていても、いつも「これをや る」というものがあれば、それが自分のフレッ シュなスタートにつながったりします。ですか ら、休みという視点で言えば「これをすれば 私は休憩に入る」という儀式をつくることを 考えたいですね。きっと、日本人に合った休 憩の儀式みたいなものもあると思います。 -人それぞれに異なる休憩の儀式があ るということですね。大本さん個人として はいかがですか? 私は京都の出身で、お寺や神社へ行くのも 好きです。東福寺に数々の石庭があって、 日本人の素晴らしい発明だと思いながら、よ く散策していました。先ほどお話しした「内 省」にもつながりますが、「道」に対する考え 方…書道や華道や茶道などが持っているも のを、ビジネスにも役立てられないかと思っ VOL.25 | NOVEMBER 2017 AYA OMOTO I N T E R V I E W photo & portrait: Nacása & Partners 世界的にも注目されているデンマークのビジネスデザインスクール「カオスパイロット」に留学し 帰国後はデンマークにおけるさまざまな考え方のエッセンスを日本に伝えている大本綾さん。 自身が共同代表として立ち上げた「株式会社 Laere (レア)」という 国籍や年齢を超えた学びをデザインする教育デザインファームのオフィスでお話をうかがった。 働き方だけではなく「休みのデザイン」にも目を向けたい 「内省」する時間を 大切にするという発想 -大本さんは、デンマークの「カオスパ イロット」に留学された経験をもとに、デ ンマークのさまざまな興味深い側面を日 本に紹介していますね。 それまで勤めていた広告代理店を辞めて、ビ ジネスデザインスクールである「カオスパイ ロット」に、初の日本人留学生として受け入 れてもらいました。デンマークで学んだことは たくさんありますが、まず、とても効率的な働 き方をするんです。女性を見ても、仕事をし て家庭を大事にして結婚して子どももいて 趣味も楽しんで、本当にやりたいことを楽し くやっているんです。起業家でもしっかり休 みを取りながら仕事をしていますし、「自分を どうやって楽しませるか」をよく理解していま す。こんな働き方や暮らし方ができたら幸せ だと思いました。 -デンマークは「幸福度の高い国」とし て、よく知られていますね。日本と比較する ことで新しい考え方に気づくことも、たくさ んあるのでしょうね。 デンマークを離れる時に、親しい友達から 「あなたに、どうやって休むかを教えてあげ ることができなかった」と言われたのですが、 デンマークでは働き方改革と休み方改革が いっしょになっています。これまで日本では 長時間働いてしまう傾向があり、「早く帰る ことが悪」という雰囲気もありましたが、デン マークの人は「早く帰らないで成果を出さな いことが悪」だと考えます。ワークハードでは なくて、ワークスマート。量ではなくて、質なん です。日本では多くのプロジェクトに携わると それなりに評価されると思いますが、そこか ら何を学んで、どう次につなげるかが大切に なります。 -スマートに働くためのポイントは、どん なことでしょうか? 自分は、「内省」する時間が少なかったと思 うんです。デンマークでは「 8 × 3 」という 1 日 best practice for work place

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