横石 崇 - futureplaceインタビュー

(→次ページに続く) よ」というレイアウト。隣の先輩の所作や、 細かい部分だと電話応対する際の声のトー ンも、盗んで自分のものにできる絶好の機 会ですし、無意識のうちに吸収できますよ ね。リモートワークだと、そこを感じ取るのは 難しい。ですから、昭和を象徴するようなあ のオフィスレイアウトは「人を学ぶ」には適し ていたんじゃないかなと思います。 オフィスは必要?という問いが 生まれて当然だと思う 今のお話は、横石さんが鎌倉に開設して いる「北条 SANCI (ほうじょうさんち)」と いうコレクティブオフィスにもつながる気 がします。単なるコワーキングスペースで はない、コミュニケーションや学びを盛り 込んだオフィスという考え方です。 「北条 SANCI 」は、「~さんち」という名前に しているように、家のようなシェアオフィスで す。リラックスできて居心地もいいけれど、少 し緊張感もある。友達の家に近い感覚かも しれません。鎌倉という場所ですし、お庭も 込みで一人 100m 2 くらい広々と使ってもらっ ているのですが、いいアイデアやクリエー ションを生み出すための環境づくりに徹して います。太陽を浴びて、広々とした緑に囲ま れた自然環境づくりも大切ですし、入居メン バーを招待制にすることで、周りに知らない 人や何やっているか分からない人がいたりし ないよう、心理的安全性を担保した居場所 づくりを試みています。 「北条 SANCI 」は、人が集まるオフィスと リモートワークのそれぞれの良さを、絶妙 なバランスで兼ね備えている気もします。 オフィスではなく、ワークプレイスとしてどう いう場にしていくべきかを念頭に進めた結 果です。今回、新型コロナウイルスの問題 が拡大し、人が集まることのリスクも取り上 げられています。そこで、働くことにおいてオ フィスが絶対的な必要条件ではないことも、 多くの人が体感的に分かったはずです。僕 らも働き方や働く場所を振り返った時、ま ずはオフィスというカタチにこだわるのでは なく、オフラインとオンラインを融合させた場 のあり方から考えたことが出発点です。そし て、冒頭の話のように「 Why 」を語れる場の 設計が、オフィスではますます重要になりま す。というのも、「 Why 」を話すことが積み重 なって企業文化になっていくわけですから、 文化構築をしないままにデジタル・トランス フォーメーションだ、リモートワークだと言って も、残念な結果になるのは目に見えていま す。なんなら、オフィスはお互いの信用を育 むために雑談をする場だ、という割り切りが あっていいかもしれません。 自分自身のダイバーシティを 知る機会がもっとあってもいい 横石さんは「 Why 」を中心に、なぜ仕事を するのか、何のために未来があるのか、 もっと人は楽しく働くことができるんじゃな いかということを考えていますよね。 楽しく働きたいですよね。最近、日本人が 楽しく働けない根本の原因が分かったん です。僕は「 Why 」を語れなくなった社会の 根源は、一括採用にあるんじゃないかと睨 んでいます。一括採用というのは「 What 」 「 How 」を中心にしたコミュニケーションが 主流になり、「 Why 」を奪うわけです。その会 社にとってどのような戦力になるかが問わ れ、本来学生や若い人たちがもともと持って いる凸凹の才能や考え方は、会社というシ ステムに入っていく際に削ぎ落とさなければ いけない。凸凹というのは自分の好きなこと や苦手なこと、自分にとっての人生の傷み たいなものを含みますが、それらは就労の論 理においては問答無用なわけです。でも、こ れからの終身雇用が崩壊した世界でツルツ ルにされた状態で働かされ、先行きが見通 せない時代で会社や上司も成長の支えに ならないのだとしたら、そこには何が残るの でしょうか。ですから、自分のキャリアにハッ TAKASHI YOKOISHI 「 SHIBUYA QWS 」は、年齢や専門領域を問 わず、渋谷に集い活動するグループのための 拠点。コミュニティコンセプトは「 Scramble Society 」。利用するメンバーが黄色いパネ ルに自分の「問い」を書いて可視化するしくみ によって、お互いに対する興味も湧き、話しか けやすく、偶発的なつながりが生まれている。 4 VOL.33 | APRIL 2020 I N T E R V I E W photo & portrait: Nacása & Partners 新しい働き方を支援するプロジェクトである 「 Tokyo Work Design Week 」という祭典の発起人かつオーガナイザーであり、 7 年間でのべ 3 万人以上を動員した、稀代の活動家、横石崇さん。 渋谷スクランブルスクエア東棟の 15F にあり、横石さん自身がメンバーにもなっている 「 SHIBUYA QWS (渋谷キューズ)」という共創施設でお話をうかがった。 凸凹のままで、未来に向かえばいい 横石 崇 株式会社 &Co. 代表取締役 「 Tokyo Work Design Week 」オーガナイザー 今のオフィスの中には 「 Why 」を語れる場所が減っている 横石さんが書かれた「自己紹介 2.0 」とい う本、自分と向き合う楽しさと発見にあふ れていて、とてもためになりました。自己 紹介の中で、まだ成し得ていない自分の 未来について語ってもいいんだという視 点も、大きな気づきでした。 そもそも僕は自己紹介が苦手でして、優れ たビジネスパーソンのみなさんの自己紹介 を研究していたのです。そこで気づいたの は、自分も含めて多くの人は肩書きや役職 といった現在や過去に縛られて自己紹介 をしがちだということ。でも、人を惹きつける リーダーたちは、未来を語っていることが分 かりました。そして、未来→過去→現在の順 で自己紹介をして共感を得ているという原 則も発見しました。未来というのは「 Why 」 に当たり、「どんな未来をつくるのか。なぜそ うするのか?」という目的意識のある視点で す。過去は「 How 」に当たり、「どうやるの か?」という方法論や工夫の蓄積。そして 現在は「 What 」に当たり、「何をすればよい か?」という具体的な行動になります。ところ が、このモデルをオフィスに置き換えて考え た時、「 Why 」を語れる場所って、どんどん少 なくなっていると感じています。 すごく新しい視点ですね。面白いです。 「人生とは~」や「そもそも働くとは~」と いったような、社内の喫煙室や居酒屋で 語っていたような「 Why 」と出会う機会は 減っていますよね。これは働き方改革の名 のもとに、より合理的にスマートにやろうとし た結果、空間も働き方も「 How 」と「 What 」 が中心に進んだからかもしれません。成長 する組織には必ずチームで「 Why 」を交換 できる場があります。それは広さや予算は関 係ありません。また、会議室の使い方が 15 分単位で決められるようなパフォーマンスを 求められる働き方の中でも、さらに「 Why 」 が狭められていく。 なるほど。横石さんは以前、オフィスの島 型対向式のレイアウトが悪いわけでは ないというお話もされていましたね。それ は、居酒屋三昧みたいなものでしょうか らね(笑)。 居酒屋の宴会レイアウトですよね(笑)。先 日、勢いのある新興企業の入社数年目に なる女性社員から相談を受けました。「会 社はフルリモートワークで、いつ出勤しても いいし、ずっと家にいてもいい。ただ、それを 1 ~ 2 年続けた結果、自分が成長したかどう か分からない」と言うんです。ミレニアル世 代ならではの贅沢な悩みですが、仕事の成 長実感が湧かないというのは理解できます。 一方、島型対向式というのは、要は「盗め 3 best practice for work place

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