角 勝 - futureplaceインタビュー

I N T E R V I E W photo & portrait: Nacása & Partners 公務員からの転身によって会社を立ち上げ、さまざまなオープンイノベーションを支援しながら 人と人とをつなぎ、世の中を一歩進める取り組みを行っている角勝さん。自身がプロデュースしている 大阪のコワーキングスペース&ファブスペース「 THE DECK (ザ・デッキ)」でお話をうかがった。 「ワクワクするね!」の想いを、みんなで分かち合いたい 角 勝 株式会社フィラメント代表取締役 CEO (→次ページに続く) スピードを大切にしながら 既成概念を打ち破る -角さんは、公務員を辞めて独立し、フィ ラメントというご自身の会社を立ち上げた のですね。 そうなんです。私は大阪市役所の職員として 20 年、福祉や固定資産などのいろいろな仕 事に携わってきました。そんな中で、職員から 新しいアイデアを公募する「職員提案」とい う制度を利用して提案を行った時に、かなり 評価が高かったんです。それで、自分は企画 をする才能はありそうだなと気づきました。 -どんな提案をされたのですか? 大阪市が抱える大きな課題として生活保護 の問題があって、市の予算額も非常に大き く、当時は年間 3,000 億円くらいでした。そ の資金を、電子マネーを使いながら上手に 運用するアイデアを考えて評価され、後にテ スト実施にまでつながったそうです。もう一つ は、違法駐輪対策。自転車ごと撤去する労 力を減らし、サドルだけ撤去するというアイデ アでした。これも入賞して、新聞にも取り上 げられたんです。そんなこともあって、「自分 がやりたいことを、やりたい職場へ行ってや るべきだ」と気づきましたね。それでセクショ ンの異動願いを出して、「大阪イノベーショ ンハブ」というビジネスの創出支援拠点を立 ち上げるメンバーになりました。 -「大阪イノベーションハブ」は、どんな 場所だったのですか? それまでの産学連携にこだわらず、もっと幅 広くオープンイノベーションやスタートアップ などを支援しようと活動を進めました。ここで 大切なキーワードは、「スピード」でしたね。 世の中のトレンドも変わるし、何が重要かも どんどん変わります。そのことにフレキシブル に対応する必要があります。それでスタート アップも、大企業も、中小企業も、大阪に拠 点のない人までも来てもらえる拠点にして、 スピード感を持って新しいことを生み出せる ようにしました。 コンテンツに魅力を与えるのは ヒューマンスキルかもしれない -大阪に活力を生み出す、画期的な取 り組みですよね。 行政が何かをする時って、だいたい箱物 を作って失敗するイメージがありますよね (笑)。だからその背景を探って、成功に結 びつけたかったですね。重要な要素は大き く 3 つあって、 1 つは「立地」です。空いてい る場所があるから、そこに何かを建ててしま うというパターンは多いです。 2 つめは、「体 制」。役所の仕事は、建てたら終わりと思わ れているふしがあります。本当は建てた後が 大事なのに、愛を持って運営するのが難し い。ディズニーランドや USJ などは、キャスト の一人ひとりまで愛を持っているから、うまく 行くんですよね。 3 つめは、「コンテンツ」。そ こで何をするのかが、考えられていない。コ ンテンツを作って、魅力を高めるという発想 がないんです。この 3 つが、失敗の大きな原 因かなと思っています。 -「大阪イノベーションハブ」では、そうし たことをどう払拭したのですか? まず、立地は梅田のグランフロント大阪な ので、とても良かったんです。体制は、運営 は委託事業者に任せたのですが、職員もオ フィスを同じ場所に移して、一緒に取り組み ました。いちばん難しかったのは、コンテンツ を認知してもらうこと。「これは、ドブ板式に やるしかない!」と感じ、 IT の勉強会などの場 に足を運んで、ビラを配ったり名刺を交換し たり。それで SNS で友達になったりして、 1 年 間で 1 千人くらいとのつながりができて、イベ ントの告知をしても人が集まるようになりまし た。東京のようにたくさんのメディアがない 街では、自分がメディアになればいいんだと 感じましたね。コンテンツには、人がなんとな くそこへ行きたくなるヒューマンスキルが大 切なのかもしれませんね。「この人に会いた い」とか「つながりを得たい」というものが、そ の場所にあるといいのでしょう。 -そんなつながりの中で、角さんとの関わ りで、新しい製品やサービスがたくさん生 み出されていますね。 大阪市で企画し開催した「ものアプリハッ カソン」という出会いの場では、そこでつな がりのできたチームが起業して、子どもが手 首に付けたバンドの動きにアプリが反応する 「 Moff Band 」という玩具が製品化されま した。また、同じハッカソンで出会ったシャー プの人たちとつながりができたことから、 ツンデレの妹が掃除をする「プレミアムな COCOROBO 〈妹 Ver. 〉」という掃除機も生 まれました(笑)。ハッカソンの成果物が大 手家電メーカーから製品化されるのは、たい へん画期的なことでした。 インプットできる環境整備や 客観的評価のしくみづくりへ -面白いですね。お話ししていると、 ヒューマンスキルという言葉がとても響いて きます。 右/大阪市中央区、「堺筋本町」駅直結の好立地に設 けられた、コワーキングスペース&ファブスペース「 THE DECK 」。キッチンやドリンクバーなども用意されている。 下/ファブスペースには 3D プリンターやレーザーカッ ター、刺繍ミシンなどが備えられ、さまざまな工具を使いな がらプロトタイプ製作などもできる。 best practice for work place VOL.23 | APRIL 2017 MASARU SUMI

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