OFFICE[オフィス]東京むさし農業協同組合 本店オフィス

自然に移ろう光とともに、人々がつながるオフィス

JA東京むさし執務エリアの中央に設けられた、「マルチストリート」と呼ばれる多目的空間。ホワイトボード仕様とガラスの移動間仕切りによって、空間の透過性を保ったまま、さまざまな形態の打ち合わせや作業に対応できる。

余分な刺激のない光環境が心地よいオフィス環境をつくり出す

三鷹、小平、国分寺、小金井、武蔵野の5つの農業協同組合が合併し、東京むさし農業協同組合(JA東京むさし)が発足したのは1998年のこと。当時は1つの本店だったが、その後、本店と3つの支店に分散して基幹業務を行っていた。事業が順調に推移し、新規部門の開設や職員の増加から手狭になったこともあり、拠点を統合しようという動きが本格化。2012年5月、新しいJA東京むさし本店が誕生した。

オフィスの大きな特徴の一つは、執務エリアに導入された家具付け照明である「次・オフィスライティングシステム」。高性能LEDと自動プログラムによって、人の1日周期の生体リズムであるサーカディアンリズムに則って明るさ (照度)が変化し、季節や時間帯によって移ろう自然光に同調するように色み(色温度)が変化する。天井照明は一切用いず、アッパーライトによる天井間接光によって室内全体の明るさを確保。必要に応じて、個人の手元はタスクライトで明るさを補うことができるタスク・アンビエント照明としている。従来に比べて省エネ ルギーであるとともに、健康的かつ快適な作業環境を実現している。

自然とともに営む「農業」をサポートするJA東京むさし。そのオフィスは、自然と調和し共存しながら明日へと向かう、新たなオフィスの姿だといえる。

JA東京むさし東棟2F総務部の執務エリア。執務エリアには「次・オフィスライティングシステム」を導入。朝から昼にかけては色温度の高い白色の明るい光となっている。執務エリアの標準デスク幅は1400Wに統一。部長はデスク席、一般職員は人員や組織変更に対応しやすいベンチテーブル席を用意した。

JA東京むさし西棟2Fの指導経済部の執務エリア。夕方から夜にかけては余分な刺激のない温白色の、低照度の光環境となっている。

JA東京むさし人事課の執務エリア。奥に見えるのは内部監査室の執務エリア。部署のセキュリティレベルに応じて、個室やセミクローズな空間となっている。

 

温かみのある空間がつながりながら働く場になる

オフィスのカラーコンセプトとして、久米設計から提案されたのは「タキシード」。ほとんどが白と黒とグレーでシンプルに構成されている。その一方で、職員の憩いの場となる食堂には、やさしい木質系のカラーを採用。新たなコミュニケーションの場が部門間のつながりを生み、拠点を統合した効果を高めている。中心となって移転プロジェクトを進めた総務部の本多聡氏は、こう語る。「オフィスにはガラスパネルを多用していますから他部門の様子が見えますし、建物が東棟と西棟に分かれていますが、階段を昇り降りする時に目が合ったりして、自然にコミュニケーションがはかられていると思います。また、西棟の3つの部門は、以前は拠点が分かれていたのですが、移転して一つのフロアにまとまることができ、情報の伝達もしやすくなりました。食堂が新しい交流やリフレッシュを生んでいますし、このオフィスから新しい発想が生まれてくるといいですね」

オフィスには過剰なものがなく、先進性を感じさせるのに、温かみがある。家具のデザインや、天井・壁などの素材・仕上げにも、一つひとつていねいにこだわっているからこそ、オフィスに対 する愛情が感じられる。ここはまるで、職員みんなの、一つの「家」。利用しているというよりも、ここで暮らしているかのようである。

JA東京むさし東棟3Fの食堂。天井のルーバーと床には木材を用い、黒の壁面には櫛目コテによる塗り仕上げを施し、リング型のLED照明や、脚の細い家具などとともに独特の美しい空間をつくり出している。なお、食堂は西棟の2Fにも設けられている。

JA東京むさし西棟2Fの食堂。階段の上から食堂を望む。キッチンの機能があり、さまざまな使い方に対応。役員も職員とともに食事をとり、楽しい話題に花が咲いている。

JA東京むさし西棟2Fの食堂。中2階のような一段低いフロアレベルに設けられているため、階段を昇り降りするのも楽しい。ガラスパネル越しには「マルチストリート」と執務エリアを望むこともできる。

自然と真摯に向き合うオフィスは地域の人々の信頼の砦でもある

建物には多様性があり、西棟の1Fにはトラクターなどの修理も行える農機センターや、肥料・資材倉庫なども設けられている。単なるオフィスではない、さまざまな機能を有していることが、オフィスづくりの難しさにもなった。

「ここは農業に関わる人々の組織ですから、環境保護に真剣に取り組む必要がありまし た。ですから、空調負荷を低減する日除けルーバーと、タスク・アンビエント方式の照明は、とても効果的な良い取り組みだったと思います。効率的な自然換気によって、空気の流れを感じられるのもいいですね」(総務部・本多氏)他にも太陽光発電や屋上緑化、氷蓄熱方式による空調などを採用し、トイレの洗浄水などには井戸水を利用している。吹抜上部の熱は、冬には食堂の暖房に利用できる。さまざまな環境対策技術を結集させたオフィスにもなっているのだ。

「信頼が心をつなぐJA東京むさし」というキャッチフレーズがあるが、さまざまな災害対策も、信頼を高めていると言える。耐震性能の高い建物には、非常用発電機や防火水槽などを設置。敷地北側の空地は、地域住民の避難場所にもなる。新たな本店が、人々の信頼の場となる...その第一歩として、「オフィスが心をつなぐJA東京むさし」の姿が、今、いきいきと立ち現れたところである。

JA東京むさし東棟1Fのエントランスロビーは、白を基調とした明るい空間。ATMも設置されている。

JA東京むさし各棟の1Fに設けられている「かまくら」と呼ばれる応接コーナー。東棟の1Fでは、ガラスパネル越し に執務エリアを望むことができる。

JA東京むさし個性的な建物は、昔から農作業に欠かせない「竹かご」をイメージしたもの。「ECOかごルーバー」と呼ばれる、まるで編まれているような日除けが、直射日光を大幅にカットし、空調負荷の低減に貢献している。

 

DATA

所在地
東京都小金井市貴井北町1-10-1
オフィス対象面積
4,003.61m2
オフィス対象人員
150名
建築設計
久米設計
インテリア竣工
2012年4月
オフィス設計・デザイン
久米設計
オフィス家具
岡村製作所
  • bp vol.7掲載(2012.07発行)