MUSEUM[美術館・博物館]龍谷ミュージアム

古都における仏教の発信と交流の拠点

龍谷ミュージアム受付カウンター側から見たエントランスホール。地下に設けることで、長めのアプローチと高い天井をとることができ、ゆとりの感じられる空間だ。天井は杉角材のルーバー。右手の中庭には、銘石とされる庵治石が大胆にあしらわれている。

街に開かれた仏教の総合博物館

「仏教の本質を若い世代にもっと知っていただきたい」と龍谷大学龍谷ミュージアム事務部部長の熊谷睦史氏は話す。同大学創立370周年の記念事業の一つである博物館建設。約10年にわたる長期計画において熊谷氏は中心的に携わってきた。

「そのために、いろいろな意味でバリアフリーでオープンな存在にしようと努めました」

立地は学内ではなく西本願寺と正対する堀川通に面しており、観光客の往来もある。また、名称も「大学」の文字をあえて外し、展示やコンテンツを狭く限定しないよう「ミュージアム」とした。学究という観点だけでなく、仏教の総合博物館として、広く多くの人々に仏教の歴史に触れ、理解してもらいたいという意志を感じとれる。

"門前町"として、古くより仏具を始めとした工芸品を扱う店舗・産業が広がっている。「京都の伝統や文化が詰まっているところ」(熊谷氏)だ。そうした地域の活性化を図るために、ワークショップやレクチャーを行える多目的ホールも1階に設けた。ガラス張りで通りからも様子がわかる。

そして、堀川通から一本奥の油小路通まで敷地内を抜けられる動線もつくった。その途中には中庭を据えていて、ミュージアムに入らなくても利用できる。中庭は大通りの喧騒から隔絶した空間だ。

龍谷ミュージアム

龍谷ミュージアム左/簾のようなセラミックのルーバーが目を引く。景観条例により軒高が制限されている中、展示室のある2~3階の階高を確保する一方、1階は地下へとつながる奥行きのある空間とした。
上/油小路通から見た通り抜けのできる通路。中庭にも降りられる。

体感を重んじた展示と建築

僧侶の養成機関である「学寮」を起源とする龍谷大学は、数百年に及びアーカイブされた貴重な学術資料を潤沢に持ち備えている。そうした豊かなコンテンツを存分に体感してもらうことを展示計画でも目指したという。

新疆ウイグル自治区・トルファンの「ベゼクリク石窟」を原寸大でデジタル復元した仏教壁画の大回廊は、その象徴的な存在。また、展示のハイライトでもあるミュージアムシアターは、4K(4096×2304ピクセル相当)画質で制作された映像がそのクオリティーのまま上映される、世界でも希少な場所だ。上映終了後にはスクリーンが上がり、西本願寺を望めるサプライズも用意されている。

龍谷ミュージアム2階の展示室。岡村製作所の製作によるフルハイトのガラスケースは、20m以上続き、途切れないで展示を見られる。

龍谷ミュージアム3階のミュージアムシアターではフルハイビジョンの4倍以上の超高解像度を持つ映像が体験できる。上映終了時にはスクリーンがせり上がり、西本願寺の境内を望める。

龍谷ミュージアム「ベゼクリク石窟」にある仏教壁画の回廊を復元した展示。


龍谷ミュージアム 3階の展示室。



最新のデジタル技術に引けを取らず、建築の意匠も趣向が凝らされている。コンクリートやセラミックなどを用いつつ、簾や下見板を模した外壁には、伝統的な建築の佇まいを持たせている。用いられる素材も非常に多彩で、建物自体が美術展示という言い方もできるほどだ。

特に「波紋」というコンセプトに基づいた、建物の各所に見られる波模様のモチーフは興味深い。ここでの体験が広がりやつながりとなって、作用していくことを祈願しているようでもある。

龍谷ミュージアム堀川通越しに見る外観。ルーバーを照らす照明は閉館後も道灯りになっている。

DATA

所在地
京都府京都市下京区堀川通正面下ル
敷地面積
約1670m2
延床面積
約4410m2
規 模
地上3階地下1階建て
建築設計
日建設計
建築施工
淺沼組
展示設計・施工
丹青社
  • bp vol.4掲載(2011.09発行)