MUSEUM[美術館・博物館]三重県総合博物館 MieMu

三重の多様さを学ぶオープンな新拠点

三重県総合博物館 MieMu 3階の学習交流スペースからこども体験展示室の方向を見通す。「ミエゾウ」の全身復元骨格は、同じく県内で発見された足跡の化石とともに展示されている。電子端末ではライブラリ、展示室、まちかど博物館など外部の施設と連動した情報の検索を行える。

 

三重県総合博物館 MieMuガラス張りで「ミュージアムフィールド」に面した学習交流スペース。ワークショップなどにも活用される。展示室は午後5時まで、交流創造エリアは午後7時まで利用できる。

三重県総合博物館 MieMu北東側から見た外観。「ミュージアムフィールド」は広場や野外学習スペースとなっており、里山と一体にランドスケープが整備されている。

多様性の力を見せる

三重県は南北に約180kmと細長く、東に伊勢湾、南に熊野灘(太平洋)と面し、陸側は6府県と接している。その多様な地形から自然に恵まれるとともに、伊勢神宮に代表される歴史的なスポットにも欠かさない。古くから東西交流の要衝として多彩な人材、文化が集まってきた地域でもある。

三重県総合博物館、愛称MieMu(みえむ)は、その「多様性の力」をテーマとした施設だ。一般に博物館といえば、科学や歴史、芸術などのカテゴリーに分けられた展示を行う。もしくは建物ごと専門分化するのが最近の傾向だ。ここでは三重の事象をさまざまな視点で見せ、誰が来ても楽しく学ぶことができるコンセプトを持っている。基本展示室と呼ばれる常設展示は象徴的な存在で、三重の地勢をなぞらえながら自然科学、歴史、文化それぞれの観点から紹介し、同じ空間の中で見せている。また、潮干狩りで人気の海岸や地元の和菓子などを引例して、県民がより身近に感じられる工夫も多彩だ。

三重県総合博物館 MieMu学習交流スペースは展示室につながるホワイエ的な役割も担う。ライブラリは図書館的な分類にこだわらず、学芸員のおすすめや展示のアイデアソースが置かれる。

三重県総合博物館 MieMuこども体験展示室は衝立状の造作の裏表で情報量を大きく変えて、子供たちの興味を引くようにした。

コンパクトな展示室

「中心にあるのは"暮らし"。多様で豊かな三重にあるものが自分たちの暮らしにどう関わっているかという視点で展示をしています」と同館館長・布谷知夫氏は話す。「(展示室は)入り口に過ぎず、ここをきっかけに地域を知ってもらいたい」という言葉通り、基本展示室は延床面積1万779m2に対し、約7.6%の820m2で、「普通は3割はとる」(布谷氏)とされる博物館の常設展示としては異例にコンパクトだ。隣接する企画展示室(912m2)を合わせても2割にも満たない。その分大きく割かれているのは学習交流スペースやレクチャールームなど、一般に開放された交流創造エリアだ。

三重県総合博物館 MieMu基本展示室の導入展示はグラフィカルに三重を紹介。

三重県総合博物館 MieMu御師(おんし)屋敷の模型。御師とは伊勢参詣をサポートしたとされる下級の神職。

三重県総合博物館 MieMu鈴鹿山脈に生きる動植物の生態をジオラマ展示した。

三重県総合博物館 MieMu伊勢湾を介した交易の様子を伝える。展示什器はパーティションとして高さ2100㎜で統一され、展示室のどこにいても壁面の三重の俯瞰写真がパノラマとして感じられる。

三重県総合博物館 MieMu熊野灘の海洋生物を模型展示で見せる。

三重県総合博物館 MieMu原生林も残る大台ヶ原山や大杉谷の自然。

知のネットワークをつくる

布谷氏が「"たまり場"となるようにつくった」という学習交流スペースは、展示設計を担ったトータルメディア開発研究所が共用部のデザインにも積極的に関わり、展示のエッセンスが溢れ出たような演出がなされている。施設のシンボルとなっている「ミエゾウ」の復元骨格は代表的だ。また展示される動物や鳥のシルエットを、トイレなどの壁面や階段吹き抜けのモビールに施した。同社西日本事業本部事業推進部チーフプロデューサーの島村昌志氏は「展示物の情報に濃淡を付けた」と話す。

基本展示室は、周回できる平面計画にあえてエスケープ動線をつくり、企画展示室と行ったり来たりできる。リピーター対策も兼ね、「限定的な動線にせず、来るたびに違う見え方ができるようにした」(島村氏)。

東海地方初の総合博物館として、1953年に開館した旧三重県立博物館は90年代から老朽化が進み、建て替えの検討は幾度も行われた。「長く地元として新しい博物館を待ち望む声があった」と布谷氏。それを裏付けるようにオープン間もない4月中、すでに平日でも入館者が1200人を超える盛況ぶりだ。「内覧会などでも展示が支持されている実感がある」といい、今後の抱負として「まず来てもらって、どこかを好きになってもらう。また視点を外に開いて、まちかど博物館※や県内で活動するグループなどと三重全体で緩やかなネットワークをつくりたい」と語った。

三重県総合博物館 MieMu企画展示室。企画ごとに基本展示室から更に掘り下げ て展示する。展示ガラスケースは独立型、壁面型ともに岡村製作所によるもの。壁面型は床面からの高さ4.8mという大判の高透過合わせガラスが用いられている。

三重県総合博物館 MieMu 3階階段からエントランスのある2階を見下ろす。正面は「三重の実物図鑑」。吹き抜けにあるモビールはいろけんの作品。さまざまな展示物をデザインした。

三重県総合博物館 MieMu「三重の実物図鑑」は自然と歴史・文化の資料を標本や剥製などで見られる。無料で利用可能。

三重県総合博物館 MieMu歩行者デッキで繋がる三重県総合文化センターから見た北西側外観。伊勢型紙の縞彫りをモチーフとしたテラコッタの縦ルーバーが特徴だ。1階は調査研究用の諸室と収蔵庫になる。歴史的公文書なども含めて収蔵は約42万点におよぶ。


DATA

所在地
三重県津市一身田上津部田3060
開 館
2014年4月19日
建築設計
日本設計
建築施工
鹿島・鉄建・生川特定建設工事共同企業体
展示設計・施工
トータルメディア開発研究所
  • bp vol.14掲載(2014.05発行)