LIBRARY[図書館]明治大学和泉図書館

若い感性のコミュニケーションにあふれる次世代型図書館

明治大学和泉図書館 3階の閲覧室を見通す。開放的なキャレルデスクが並ぶ。間接照明主体の空間で、行灯型のデスクライトはPC画面などへの映り込みを防ぐもの。

人や情報と交流できる図書館

「コンセプトは、人と人・人と情報を結ぶ『架け橋(LIAISON:リエゾン)』なんです」と明治大学図書館総務事務室の折戸晶子氏は話す。建て替えの議論が始まったのが2002年。以後、協議のためのワーキンググループや部会などで検討を重ね、およそ10年越しで新・和泉図書館が完成した。

明治大学和泉図書館吹き抜けに面して、2階から4階まで連なるガラス張りの積層集密書庫。一部が、本の表紙を向けて収納できるようになっており、ギャラリー的な使い方も可能だ。

明治大学和泉図書館 1階の書架は主にリファレンスブック(辞典など参照・参考用の書物)が置かれる。



同大学和泉キャンパスは、文系の1~2年生が主に利用するため、研究主体の重々しいイメージの図書館ではなく、「若い人が魅力を感じる、コミュニケーションや情報発信を重視した空間を目指した」(折戸氏)。教育・研究・学習という図書館としての基本的な用途に加え、「交流」という新しい機能が組み込まれた。

かつてない新しい図書館のあり方を求め、折戸氏を始めとした図書館運営と、大学の施設課、そしてプロポーザルで選定された松田平田設計によるプロジェクトチームが組まれた。「互いにフラットな関係で意見を出し合うことができた。このプロセスを経られたことがとても大きい」と松田平田設計の第三建築設計部・田中義之氏は振り返る。

明治大学和泉図書館 2階、雑誌書架のエリア。建築平面に合わせて斜めに配置された書架は、本の存在感を高める。開架書架はすべて岡村製作所による。

明治大学和泉図書館 3階にある円形のAVブース。3階のキャレルデスクには集中できるようなブース形状のものもある。

明治大学和泉図書館 3階階段室の脇、窓際にはソファが連なる。館内では様々なタイプのソファが各所に配される。

音でゾーニングする

平行四辺形のプランを持つ、地上4層の図書館は、「音のゾーニング」という考え方で、フロアごとにレイヤーを重ねたような構成になっている。エントランスのある1階は、ガラス張りで内部の活動を表出させた。カフェラウンジやホールなどの付帯施設も外部に開いていて、学生の興味をいざない、入りやすいように設えている。もちろん、賑やかさはある程度許容される。そして2階、3階、4階と上がるにつれて、空間の静寂が増していくつくりだ。

同時にそれは館内のアクティビティと連動していて、例えば、2階にはコミュニケーションラウンジが、3階にはパーティションのあるキャレルブースが、4階には研究者用の個室が用意される。利用者が目的に応じて、レイヤーを乗り換えていけるわけだ。内装の仕上げも、「上階に行くほど落ち着いた色調とした」(松田平田設計インテリア部・古澤美登里氏)。

このゾーニングを基本に、館内は文字通り多様な場が提供されていて、「一人で」「友人 と」「グループで」、あるいは「お茶をしながら」「議論しながら」「PCを用いて」など、あらゆる動機やオケージョンに対応する。学生の創造的な学習・活動を全方位的にサポートできるような環境整備がなされている。また「滞在型図書館」を志向し、パーソナルで快適な学生の“居場所”を各所に設けた。「書架を近い位置にして、本の存在を意識できる空間としている」(田中氏)。

明治大学和泉図書館 1階貸出・レファレンスカウンター。

明治大学和泉図書館
1階、アーティフィシャルグリーンのある窓に面したベンチ。

明治大学和泉図書館コミュニケーションエリアにあるグループ閲覧室。ネット予約でき、電子黒板などの設備も整う。

明治大学和泉図書館
2階のコミュニケーションラウンジは、友人と話しながらの利用も可能。

若々しい建物

資料を収集・収蔵するアーカイブの役割のみならず、いかにより多くの知や人との交流を若い 学生たちに促すことができるか。徹底してユーザー目線でつくられた空間は、多岐に及ぶアウトレット(受け口)で若い感性を吸い込んでいく。その甲斐もあってか、twitterを始め、インターネット上でも若い世代に好意的に受けとめられている。

社会状況の変化に伴って、知識や情報のみならず、学生のソーシャルな活動も、実社会とオンラインで交錯する。「今後も、学生の要求やアイデアに対応できるような図書館であり続けたい」と折戸氏は言う。環境に応じて機能更新を続ける和泉図書館は、常に新陳代謝する“若々しい建物”といえるかもしれない。


明治大学和泉図書館外観夕景。水平基調のピロティ型建築を基本とし、学内にある既存建物との調和を図った。校門をくぐってすぐの位置にある。

明治大学和泉図書館ガラス張りで外部環境と一体になったホールは、情報発信を担う。イスは岡村製作所による。


DATA

所在地
東京都杉並区永福1丁目9-1
敷地面積
約53237m2
延床面積
約8856m2
配架可能図書数
60万冊(うち集密書庫40万冊)
建築設計
松田平田設計
建築施工
清水建設
  • bp vol.8掲載(2012.09発行)