LIBRARY[図書館]みんなの森 ぎふメディアコスモス

気持ちの良い空気がある図書館

ぎふメディアコスモス 文学のエリアから見通す。グローブのグラフィックパターンは各エリアを表すサインにもなっている。書架は高さ1450mmに抑えられ屈曲してグローブを中心に渦のように並ぶ。

ぎふメディアコスモス 2階市立中央図書館、児童書エリアのグローブ内。

ぎふメディアコスモス グローブはポリエステルを三方向に編んだものに、特殊な不織布を張り込んである。家具はエリアごとに設えを変えてあり、利用者は目的や気分に応じて使い分ける。

公園のような図書館

「これは“公園”なんだ」と岐阜市立中央図書館長・吉成信夫氏は初めて建物を見た印象について表す。「公園だからおじいちゃんもカップルも小学生もいる。全体としては同じ空気感を共有しつつ、それぞれ何をやっているかも何となく視界に入る。訪れた方にもここは“公園”ですという説明をしています」

「みんなの森 ぎふメディアコスモス」は、岐阜市の中心市街地に2015年7月、オープンした複合施設だ。JR岐阜駅・名鉄岐阜駅から北に2km程の位置にあり、岐阜大学医学部跡地(約3.1ha)を中心とした再整備計画の第1期プロジェクトとして建設されたもの。公募型プロポーザル方式によって70の応募者から伊東豊雄建築設計事務所が設計者として選定された。

およそ80×90mの四角い平面を持つ2層の建物は、1階に市民の活動・交流を支援する各種スタジオやギャラリー、ホールなどを備え、2階が移転した市立中央図書館となる。

2階の見通しのいい1フロアに、巨大なランプの笠のような「グローブ」がいくつも吊られた風景は、多くの人々を驚かせ、建築は完成前後を問わず高い注目を集めている。

ぎふメディアコスモス 「ゆったりグローブ」と名付けられた閲覧スペース。籐籠のようなベンチソファが特徴的。

ぎふメディアコスモス 言語・文庫のエリアにあるグローブ内部。高さの異なるカウンターテーブルが同心円状に配される。

流れの軸となるグローブ

グローブの下には、文学、児童、郷土、展示、レファレンス、受付などカテゴリーや機能を振り分け、それに応じた家具が設えられる。グローブを中心にして渦を巻くように書架を配置、「(図書館が)街のように常に生きているイメージ」と書架も含めた全ての家具デザインをした藤江和子氏は話す。

さらに特徴的なのは、目に映らないものの設計、環境計画だ。エネルギー消費50%削減(1990年同規模建物比)をうたう省エネ建築で、独自の空調、採光計画でそれを実現している。

居住域空調・換気という考え方で、人の活動領域に絞って最適な環境をつくり出した。長良川伏流水の温度を利用した床輻射冷暖房を採用。同時に外気(時期に応じてデシカント空調機で除湿される)を取り入れ、グローブ頂部のトップライトから抜くことで、館内に緩やかな空気の流れが生まれる。過度な室温制御をせずに、空気の流れがあることで快適に感じられる。またカップのようなグローブの三次元曲面が効果的に換気を促していて、「むしろ空気の流れから形を導き出した、空気のデザイン、と言ってもいいかもしれません」(伊東豊雄氏)。寒冷期はトップライトを閉め、グローブが暖気を溜める。天井(屋根構造)は、県産ヒノキの板材を三方向に組み合わせ、集積させた独特のシェル構造で、むくり上げることでグローブの効果を高め、強度上も有利に働いた。

グローブはまた、直下では読書に必要な光をトップライトから取り入れるとともにディフューザーの役割をして柔らかく拡散する。夜はアッパーライトや球体のペンダントの光がグローブ内で反射するとともに、大きな行燈として周囲を照らしてくれる。

こうした結果、人々を集めるアイコンであり、柔らかく包む“小さな家”は、感覚的なもののみならず、「グローブによってエネルギーを10~15%削減できている」(伊東豊雄建築設計事務所・庵原義隆氏)という。

空調機や照明器具の存在を感じず、まさに公園のように自然な光と空気がただあるということ。綿密で膨大なシミュレーションと繊細な制御やエンジニアリングで裏打ちされた21世紀的な環境づくりといっていい。

ぎふメディアコスモス 「ゆったりグローブ」にある人工籐のソファディテール。エリアの内側は座面が低く奥行きがある一方で、外側は気軽に腰掛けられるデザインだ。楕円の断面形状で巧みに操作している。

ぎふメディアコスモス 文学のエリアにあるグローブのテーブルと一体になったベンチ。円形に馴染ませるため、家具の多くはストランドボードを素材として用いた。

ぎふメディアコスモス

ぎふメディアコスモス
左/「おはなしのへや」での読み聞かせの様子。個室の空間も用意される。
上/南側の「ひだまりテラス」に接した視聴覚コーナー。テラスからは市街が見渡せる。

市民が集まり、出合うところ

「これまでの枠組みを取り払った図書館づくりが当初より目指されていた」(図書館・副館長の中島克巳氏)。市内にある岐阜県図書館との棲みわけも意識し、気軽に市民が集まり、滞在してもらえる施設を志向している。集客のためのイベントはもちろん、1階の市民活動交流センターは用がなくても立ち寄れる開放的なスペースを用意した。施設全体で様々な出合いを誘発する。

図書館長の吉成氏は『発信力』『求心力』『経営力』をキーワードに公募で選ばれた。人口40万人規模の中核市では異例だ。建物の魅力もさることながら、民間発想の新しい施策や試みも奏功、来館者数は平日約3000人、土日・祝日で約5000人と盛況で「しばらくはカード登録の行列がなくならず、累計で2万2000枚になりました。登録者は倍増です」と吉成氏も強い手応えを感じている。

ぎふメディアコスモス 児童書用の書架は高さ1200mm、天板は柔らかいエッジを求め、あえてコンクリートのまま。本の落下を防ぐため、棚板に緩やかな勾配が付けられている。

ぎふメディアコスモス 市民活動交流センターのカウンター。周囲に談話スペースや各種活動を行えるスタジオなどが並ぶ。

ぎふメディアコスモス メインエントランスのある南側外観。1階のテラスは半円形状で引き戸を開放し、内部と一体に使える。左の突出部はテナントの飲食店が入る。

ぎふメディアコスモス 夜のメインエントランス周り。

DATA

所在地
岐阜県岐阜市司町40-5
敷地面積
約1万4725m2
延床面積
約1万5295m2
収容可能数
約90万冊
座席数(図書館)
約900席
設計
伊東豊雄建築設計事務所
施工
戸田・大日本・市川・雛屋特定建設工事共同企業体(建築)
  • bp SPECIAL ISSUE掲載(2016.03発行)