LIBRARY[図書館]福岡大学中央図書館

ナレッジベースとして大学の拠点施設を標榜する

福岡大学中央図書館 1階の階段から吹き抜けを見る。右側壁面には貴重書コレクションのビジュアルをディスプレイしている。左側は図書館側から、話題、推薦書などを発信するインフォメーションコーナー。1階には多目的ホールもあり、全体にロビーの機能となっている。

福岡大学中央図書館 1階のインフォメーションカウンター。

福岡大学中央図書館 1階の新聞閲覧コーナー。壁面は五十嵐威暢によるアートワークだ。

"ハイブリッド図書館"

約2万人の学生を擁する福岡大学の中央図書館が、今年7月新装なった。旧図書館は築40年を過ぎ、キャパシティや耐震性などのハード性能に加え、ソフトの部分でも時代の要請に合わなくなり、新築された。まず、「学生が入りやすい、使いやすい、人の集まる空間を目指した」(同大学図書部)という新図書館は、曰く「ハイブリッドな図書館」がコンセプトだ。

大学図書館は、静謐で落ち着いた学習環境であるとともに、学生が創造的なコミュニケーションをとれる場としても求められる時代だ。二律背反するテーマを、ここでは上質な建築で融合させた。

閲覧室や書架のあるエリアは、オーセンティックな木製家具と間接照明による「静」の空間が用意される。一方、ラーニング・コモンズやグループ学習室など、共同学習を前提とした「動」の空間も設けている。

更に、膨大とも言える蔵書を保管するアーカイブの機能も充実させ、特に地下の自動書庫は約138万冊が収蔵可能だ。図書館全体では188万冊と国内でも屈指の規模となる。

対照的に1階の展示スペースや多目的ホールなど、地域も含めた情報発信・交流の場を開いていて、これも知の収蔵・集積という「静」に対する「動」だ。

最も象徴的なのは、5階の貴重書を保存する書庫とその閲覧室で、金庫を思わせる厳重な書庫扉と、貴重書の存在を告知する展示のガラスケースは、まさに対となっている。

福岡大学中央図書館 3階の閲覧室。天井に照明器具や空調吹き出しなどはなく、自然換気を促して体感温度を下げるシーリングファンのみが見える。タスク&アンビエントを徹底した照明の効果が心地良さを増す。

福岡大学中央図書館奥の窓側へ行くほど静かな環境となるような平面計画。長時間居ることが苦にならないよう配慮した。

福岡大学中央図書館 2階の階段吹き抜けまわり。音の出やすい吹き抜けはガラスで仕切られている。正面には検索用のPCコーナー、階下に新聞閲覧コーナーが見える。

福岡大学中央図書館各種視聴覚資料を視聴できる2階AVコーナー。

福岡大学中央図書館ラーニング・コモンズは、2~4各階の明るい空間に。窓際はリフレッシュコーナーで、飲み物や携帯電話の通話はここに限られる。

重厚なエコ建築

建物自体は、その重厚で威容を誇る見た目とは裏腹に「環境配慮型建築」であることが大きな特徴だ。庇と外気取り入れ口を連携させたペリメーターゾーンに、7層にわたる建物中央の階段吹き抜けを組み合わせた自然換気システム。あるいはタスク&アンビエントの照明計画など、低エネルギーでサスティナブルを志向している。

また、ライフサイクルコストを踏まえた長寿命建築でもある。平面計画では、建物西面にコアを集約しつつ、11.7mグリッドで細身の柱を置き、効率的なフロア利用ができる。将来的なゾーニングの変更にも応じられるフレキシビリティーを持たせているのだ。外観意匠も、コンクリート研ぎ出しのPCa版やリン酸処理アルミパネルを用い、経年変化を感じさせないアンチエージング的な発想でまとめられている。

設計に当たった日建設計の赤木隆・羽月喜通両氏は、「アカデミックで、ある種威厳を感じる建築を求められた」と話す。というのも、福岡大学では長い歴史の中で増築や建て替えを繰り返していくうちに、福岡大学らしい、象徴的な建物や空間というものがないままで来てしまった経緯がある。そこで「キャンパスの再整備を見越したマスタープランから想定した」(赤木氏)といい、配棟計画から佇まいに至るまで、大学のシンボルとして相応しい建物となるよう意図が込められている。

福岡大学中央図書館 1階エントランスまわりの外観。深い庇があることで、窓のある開放的な空間がもたらされる。

福岡大学中央図書館 5階の貴重書閲覧室は主に教職員が利用するが、ガラス張りにするとともに、展示ケースも用意し、その存在自体を知ってもらう役割も担う。貴重書はデジタルアーカイブ化されていて、学生は端末で検索・閲覧が可能。

福岡大学中央図書館貴重書庫は、保存上の特性の違いから和洋書別に二つある。写真は洋書用。展示ケースと書庫扉も岡村製作所による。

知の象徴として

図書館長の則松彰文教授は「図書館は、大学の『顔』といわれる通り、その大学が持つ知的部分を象徴する存在と認識されている」と述べている。新しい中央図書館を核と据えることで、前述した「静」と「動」のハイブリッドがシナジーを生み出していけば、福岡大学がこれからの時代の"知"のあり方を描き出す大きな力となるだろう。

福岡大学中央図書館同じ建物内の1階にあるカフェテリア。

 


DATA

所在地
福岡県福岡市城南区七隈8丁目19-1
建築面積
約3892m2
延床面積
約2万4793m2
(6・7階の大学院、1階のレストラン、カフェテリアを含む)
図書館部分約1万7219m2
規 模
地下2階地上7階建て
建築設計
日建設計
家具設計
日建スペースデザイン
施 工
大林組
  • bp vol.8掲載(2012.09発行)