COMMUNITY SPACE[交流施設]えんぱーく 塩尻市市民交流センター

建物と人々のアクティビティーを支える壁柱

えんぱーく

3層吹き抜けとなった図書館内の「森のコート」。円をつなげたシンボルマークは家具や備品にも生かされている。

えんぱーく

児童書のコーナーにある「太陽のコート」。トップライトの太陽光パネルがパターンの影を落とす。壁柱は6mmの鋼鈑が構造補強として貼られており、マグネット式の書棚なども設置できる。

人工の森をつくる

塩尻市・大門地区。かつては賑わっていた駅前商店街のある一画だが、駅の移転(1982年)に伴って閑散としつつある。「えんぱーく」は中心市街地活性化の拠点として構想され、市民とのワークショップや図書館や子育てなどの各専門家との議論を経て、図書館を中心に、子育て支援施設、商工会議所、役所の分室、オフィスなどさまざまな機能を複合した交流施設として計画された。公開設計競技を経て、選出されたコンテンポラリーズ代表の柳澤潤氏は、周辺の、あまり密度が感じられない漠然 とした街並みから「市民の拠り所、塩尻の“骨格”となるような設計をコンペでは試みたわけです」と話す。

具体的には、厚さ20cm、高さは11.4mにおよぶプレキャストコンクリートの板を97本立てることで建物の主要な構造とし、適切な密度感をつくることとした。一般的な柱や梁で出来た骨組みはなく、「壁柱」と呼ぶこの板が3階まで貫いている。これが縦横無尽に配されることで、建物を支えながら、いろいろな大きさの“たまり”や“抜け”をつくっている。

「“人工の森”をつくりたいと思っていました」(柳澤氏)。人は木にもたれかかって休んだり、木陰でくつろいだりする。そんな風景をイメージした。

全体では大きな建物だが、内部の空間の単位をまわりの住宅や建物に合わせ、街並みのスケールと連続して、そのまま施設内に延びていくように設えている。外部のウッドデッキは1階の床と同レベルでつながり、ガラス張りでテラスやピロティを持つ外観は、巨大な建物の威圧感を減らしている。

えんぱーく

上/大門地区のメインストリートに面している。4〜5階は商工会議所やオフィスなどのビジネス支援施設。
右/ウッドデッキが貼られた1階。隣接する市営駐車場と3階レベルでブリッジが渡されている。

えんぱーく

関わりを誘う施設

四つの大きなトップライトの下には、それぞれ特徴のある吹き抜け空間をつくり、開放的な広場や落ち着いた日だまりとなっている。床と天井は階ごとに一定の仕上げとし、壁柱がつくる陰影が空間に濃淡を作る。そして、使う人々がそれぞれの居場所を自由に見つけられるようになっている。

書架やオリジナルの家具は、ケイティアーキテクチャーの小池ひろの氏が設計を担当し、岡村製作所が製作にあたっている。市側とは徹底してコミュニケーションをとりながらデザインされたといい、「床から浮いているようなデザインで、ほとんどが簡単に移動できる家具です。実際、非常にフレキシブルな運用をしてもらっています」(柳澤氏)。

サイン計画・グラフィックは建築家の寺田尚樹氏(テラダデザイン)によるもので、二つの円がつながったシンボルマークは、家具のデザインなどにも反映されている。アイコンが施されたサインは愛着を感じさせ、壁柱には地元に関心を持つような仕掛けが施されている。

柳澤氏は「家具や備品、サインまで含めて建築」と考え、小池氏や寺田氏とともに全体のコーディネーションが計られている。

街の再生というと、公共施設には新しい「シンボル」が求められる。塩尻でもそれは同様だった。しかし、柳澤氏は、地域の素材や意匠を引っ張り出すのでもなく、モニュメンタルな造形を作り上げるのでもない、非常に現代的な感覚のもと、市民の共感や関心を得て、使ってもらえる施設となることを目指した。

工事中に11.4mの壁柱が屹立していく風景は、いわゆる骨組みから立ち上がっていく一般の建築工事とは様相を違え、街の人々を驚かせたという。

建築というハードや施設のプログラム、さまざまなインターフェースのデザインなどあらゆる面で市民の関わりや興味を誘うようつくられた「えんぱーく」。その出自を象徴するエピソードではないだろうか。

えんぱーく

えんぱーく

えんぱーく

えんぱーく

3階はフリースペースである「市民サロン」を中心に、会議室や音楽練習室、多目的ホールなどの部屋が配される。テラスや吹き抜けの光と、壁柱がつくる影が多様な光景を生む。

 

えんぱーく書架は床から120mm浮かせた設計。壁柱には塩尻を始めとした地域にまつわる豆知識がつづられている。

DATA

所在地
長野県塩尻市大門一番町12−2
敷地面積
約4,937m2
延床面積
約11,902m2
設 計
コンテンポラリーズ
施 工
北野建設・松本土建特定建設工事共同企業体
主な施設
図書館、会議室、イベントホール、商工会議所、
ハローワーク、民間オフィスなど
  • bp vol.2に掲載(2011.05発行)