OKAMURA VISPLAY Design Competition

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審査員総評

審査委員長

北川原 温 (東京藝術大学 教授/株式会社 北川原温建築都市研究所 主宰)

スイスでデザインされたVisplayという高品質のモジュラーシステムは、プロポーションがシャープで美しく、洗練されたセンシティヴなディテールでありながら実に機能的で充分な強度を発揮する。
こういう優れモノを使えば、実はそれを使うデザイナーにそれほどセンスがなくても結構いいインテリアができてしまう。つまり、今回のコンペの事例部門では、結構いいというレベルよりさらに上の、挑戦的で思いがけない使い方に成功している作品が求められた。

そうした点で江原まゆみさんの仕事はとても魅力を感じる。また小梶吉隆さん他の仕事もなかなか上手だ。
一方、アイディア提案部門では自由で面白い案が数多く寄せられた。なかでもグランプリの久保貴史さんの作品は不思議な空間性を生み出していて大変印象的。石村晃通さんの案はLEDの使い方が評価された。今井裕平さんの案は軽やかで楽しい。
学生部門は大変新鮮で、実際つくってみたら面白いだろうなと思う案がいくつもあった。そういう点でグランプリになった伊勢崎勇人さんの提案はとくに注目された。
小笠原正樹さんの作品は可愛らしく夢がある。
他にも魅力的な案がいくつもあり、審査委員のあいだで活発な議論が交わされた。こうしたコンペがスプリングボードになって、Visplayが次々と美しく刺激的なスペースを生み出してゆくことを期待したい。

審査委員

西脇 一郎 (株式会社 西脇一郎デザイン事務所 代表)

このたび、「オカムラVisplayデザインコンペティション」がスムーズに対象作品がすべて決まり、嬉しく思います。
日頃、リアルタイムにVisplayの商品等を設計に組み込む作業を心がけている立場なため、今回の作品群にどのようなアイデア、実施例等が提案されているかがとても興味もあり楽しみでもありました。
このシステムを本来の使い方、設定の仕方にて計画されている答えは当然のことながら、おそらく一ひねり二ひねりされ自由な発想にてアイデアを考察されている答えも多分に予想していたため、どちらかというと後者を特に楽しみにしていました。予想通り、学生部門では、構造、予算等を超えた提案が大半でしたが、中でも今回の入賞作品はとても近い将来に、現実に存在することが想像すらできました。
それぞれのVisplayのパーツを組み込むディテールも大切ですが、その機能が空間に構築された際に、さらなる骨格として現れてくる風景をインテリアデザインとして提案されていることがポイントでした。

Visplayの商品は、開発から製品に至るまでかなりの時間をかけてのハイテクパーツですが、その答えの中にエコ、環境への優しさやパーツのシャープさと反比例する柔らかさの表現を機能としてのアイデアも現在の環境へ配慮したものづくりとして共感できる一面もあり、賞の対象にもなったと思います。
プロ部門の提案実例としては、本来の製品のもつ極限なまでに機能美を構築した例と、さらにその機能を整列させた際に見えてくる方向性に光の要素を組み入れ、一層の骨格を明確に表現させ、その共存している素材とともに対局例として選択に至ったと思います。
シンプルかつミニマムな完成度をもつ製品なだけに、設計段階での選択肢は多分に考えられますが、それだけに改めてその実例空間を記憶に残すものとしての答えとしては、本来のデザイナーの発想力が今後ポイントになることと思います。

山本 恵久 (日経BP社/日経アーキテクチュア プロデューサー)

審査に際しては、(1)モジュール式システム什器としてのVisplayの特長を引き出し、新しい陳列・展示のアイデアを示していること。(2)製品ブランドにふさわしい質の高い空間の創出を表現していること、の両立を重視した。総体としては、(1)の面で現実に応用しやすい提案になっていながら空間のデザインとして昇華できていないもの、逆に(2)の面で魅力的なプレゼンになっていながらこの製品を用いる必然性が弱いもの、も多くあった。その中をくぐり抜けて選ばれたのが、各入賞作品である。

グランプリの「見えない什器」は、他の案に棚型・島型が目立つ中、グリッド状の透明壁面に等価に商品をディスプレイする単純な操作ながら、楽しげな空間を生み出している。課題に正対し、何よりも商品を売る環境としてエキサイティングである点で評価が一致したと考えている。
もう一つのグランプリ「Forest of Visplay」と優秀賞「フラワーショップ」は捨て難い同傾向の提案と競り合ったが、“詩情”の勝る作品を推すことにした。議論の過程では“夢”を感じさせることを大切にしたいとの話も出て、実施例はやや後退する結果になった。
選外の中にも「こう工夫すればもっと魅力的になる」といった意見が出るなど審査側を触発する作品がかなりあった。このVisplay製品のコンセプトを深く理解した実施例や新しいアイデアがさらに多く登場することを期待したい。

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