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2015.09.15  取材・文/山下久猛 撮影/大平晋也

曲の作り方

──ニコルズの曲の作詞作曲はすべてわたなべさんということですが、曲はどのようにして作るのですか?

わたなべだいすけ-近影3

わたなべ 曲は高校3年生の頃から書き始めたのですが、曲と歌詞のどちらを先に書くかはそのときどきによって違います。常にメロディの断片は探してストックしているし、歌詞として使いたい言葉のストックもたくさんあります。しいて言うなら歌詞を書く方が好きですかね。いかにその歌詞を多くの人にちゃんと伝えるか、そのために曲を書くので、優先順位としては歌詞の方が上ですね。


──バンドのためだけではなく、企業から依頼を受けて曲を書くこともあるのですか?

わたなべ ありますよ。一番有名なのは「日本和装」の着物の歌です。あと「誰だって波瀾爆笑」というトークバラエティ番組(日本テレビ系列で毎週日曜朝9:55‐10:55に放送中)のエンディングテーマも番組のために書き下ろしました。僕は誰かに求められて曲を書くのが好きなんですよね。相手の構えているミットの真ん中に球をズバッと投げられたとき、すごくうれしいんです。作曲のヒントはもちろんあって、その企業が人びとにどう映っているのかを考えれば自ずと曲のイメージが浮かんできます。そういうこと自体も楽しいので、今後もどんどんやっていきたいと思っています。あとはメンバーからもこういうタイトルでこういう曲を書いてみてと言われて書くこともあります。

決して埋まらない溝

──曲を書けるってすごいと思います。普通の人にはできない、特殊能力ですよね。

わたなべ よくそう言われるんですが、そう難しいことではありません。みんなやればできると思いますよ。ただ、不思議だなと思うのが10年やってていまだに埋まらない「溝」があるんです。


──どういうことですか?

わたなべ 自分が書いたうたと他人が書いたうたの間にある溝です。それが一向に埋まらない。例えばお米なら、もちろん農家や作り方、品種によって味は大きく違いますが、お米はお米ですよね。でも僕の場合、自分のうたと他人のうたではお米とパソコンくらい違う。完全に別物なんです。だからCDショップでニコルズのCDと他のバンドのCDが一緒に並んでいるのを見るとすごく違和感を覚えるんです。それが不思議なんですよね。自分でもなぜそう感じるのかわからない。いつになったらその溝が埋まるのか楽しみにしているのですが、10年やってても一向に埋まらないんです。


──その溝というのはもう少し具体的に言うとどんな感じなのですか?

わたなべ 決して嫌な溝じゃないんですよ。ただそこに溝があるというだけで。どっちの曲が上とか下とかじゃなくて、水と油みたいなもの。それはカラオケに行ったときに如実に出てくるのですが、カラオケで自分のうたを歌っているときにも違和感を覚えるんです。他の曲と全く乖離した世界にあるものが同じ空間にある不思議。うまく説明できないんですが......。

千葉 だいちゃんが自分で曲を書いてるからそう思うのかな。

D.W.ニコルズ-近影3

わたなべ そうだと思う。

岡田 確かに私にとってもニコルズの音源は他のバンドのものとは別物で、同じようには聴けないな。溝は埋まらないと思う。

千葉 私はどっちも普通に聴けちゃう(笑)。

わたなべ 単純に曲だけじゃなくて、ライブでもそうで、例えばフェスに出演したときも自分と他の出演者との間にやっぱり超えられない溝を感じるんですよね。


──同じ土俵に立つミュージシャンとは思えないということですか?

わたなべ そうですね。別に「自分たちは他のバンドとは違うぜ」と斜に構えてるということではなくて、一緒に楽しく喋っていてもどこか別の世界にいるみたいな感じなんです。不思議ですよ。特にデビュー前からずっと個人的に好きなミュージシャンに対しては、同じステージに立っているという実感は10年やってもまだないですね。でもみんなそうなんじゃないかな。

鈴木 確かにその実感はないね。いつまでたっても仲間入りできないという。

千葉 それはわかる(笑)。何か壁があるのかな。

岡田 一緒に音を出したらその溝は埋まるんだろうか。

わたなべ 埋まらないと思う。

千葉 難しいね。

わたなべ でもみんなそんなこと感じないで音楽を楽しんでいるから、別に考えなくていいんですが、ふと僕らと彼らは別だなあと感じるときがあるんですよね。

好きなことを仕事にするということ

──みなさんは10代の頃から音楽が好きで、目指していたプロのミュージシャンになっているわけですが、好きなことを仕事にするということはどうですか?

わたなべ すごくいいことですね。

千葉 毎日楽しいし、幸せだよね。

岡田梨沙-近影3

岡田 仕事なのでもちろん楽しいことばかりじゃなくて大変なことやつらいこともあるのですが、自分が好きなことだから頑張れるんですよね。ニコルズにはこの先もっと大きなバンドになるという夢があるので、そのためならどんなに大変でも頑張れる。その先にはきっと楽しい結果が待っていると信じられるから。

わたなべ 好きなことを仕事にするというのは簡単なことじゃなくて、ある種の覚悟を決めてやっているわけです。その時に大事なのは、好きなことを仕事にすることで嫌いになったら本末転倒なので、そうならないようにすること。


──本当に好きなことはあえて仕事にしないで趣味にするという人も多いのはそのリスクがあるからですよね。

わたなべ そうですよね。音楽なんて特にそういう人が多いです。だから僕は好きなことを仕事にすると決めた時点で、それを嫌いにならないようにどうすればいいかを考え、好きなことを楽しんでできることが大事だと思いました。楽しければ嫌いにならないですからね。じゃあそのためにどうすればいいかと、一つひとつ考えてひたすら実践していった結果、好きな音楽が嫌いになったことはこの10年間で一度もなく、楽しく音楽活動を続けることができているんです。


──具体的にはどういうことをしたのですか?

わたなべ 例えば、「○○をしなければならない」という義務のようなことはどんどん排除していきました。何日までに曲を書かなきゃいけないと思うと義務感がどんどん強くなってつらくなるので、なるべくそうは思わないようにする。日頃の考え方や発言含め、こういう細かいことを1つひとつやっていくと、好きなことをずっと好きなまま楽しく続けられると思うんです。

他のメンバー (深く頷く)。

D.W.ニコルズ

わたなべだいすけ(ボーカル、アコースティックギター)、千葉真奈美(ベース)、鈴木健太(ギター)、岡田梨沙(ドラムス)の4人で構成される音楽バンド。2005年、ライブハウスで働いていた千葉真奈美がわたなべだいすけの弾き語りライブを観て「バンドでやろう!」と誘い、D.W.ニコルズを結成。都内でバンドとしての活動を開始。わたなべだいすけのイニシャルがD.W.であることからC.W.ニコル氏を連想。自然を愛するニコル氏に共感と敬意を示し、D.W.ニコルズと命名(C.W.ニコル氏公認)。2007年、鈴木健太と岡田梨沙が加入し現在の編成に。2009年、ミニアルバム『春うらら』を携え“うららかツアー”として初めての全国ツアーへ。9月、メジャーデビューを果たすも、2011年、インディーズに。2013年、EMI Records Japanから再メジャーデビューを果たす。2015年4月には結成10周年を記念したD.W.ニコルズのオールタイムベストアルバム、「ベスト オブ D.W.ニコルズ『LIFE』」を発売。好評を博す。CD制作やライブの他にもラジオやイベント出演など幅広く活動中。10月11日には結成10周年記念ライブとして、破格の入場料1000円の「感謝の1000円ブリッツ!」@赤坂BLITZを開催。

初出日:2015.09.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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