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2015.09.15  取材・文/山下久猛 撮影/大平晋也

プロを目指すことの不安・葛藤

──メンバー全員、就職活動を一切せずに高校や大学を卒業後、アルバイトをしながら音楽の道に入ったわけですが、将来に対する不安はなかったのですか?

D.W.ニコルズ-近影2

わたなべ もちろん不安だったし、今も常に不安ですよ。そもそも生きてくこと自体に不安があるので、生きていて不安じゃないときはないですね。それがその時期によって大きいか小さいかの違いだけ。ましてや音楽でメシを食って行こうと思っていたらずっと不安だし、メジャー契約をしたり、CDを出したり、ライブに何百人もの人が来るようになっても、常に不安はあります。でも多分、他の仕事をしている人も同じだと思いますよ。どんな仕事をしている人でも不安なんて全然ないという人はなかなかいないんじゃないでしょうか。


──とはいえ、プロの音楽バンドとして成功する可能性は確率から考えてもかなり低いと思うのですが、例えば何歳までにものにならなければあきらめるといった線引きはしていなかったのでしょうか。

わたなべ さっきも話したように、僕は30歳までにメジャーデビューすることを目標にしていました。それが叶っちゃったから今まで続いちゃったということなんですよね。その後の線を引くのを忘れたという(笑)。ただ、今35歳なので40歳まで続いたらそのままこのバンドでずっと行けると思うので、この5年が勝負だと思っています。この間にプロとしてこの先もやっていくために、地盤をしっかり固めたいなと。

鈴木 僕は27歳をひとつの目安にしていました。僕が上京したのが25歳のときなので、上京してから2年でなんとかプロのミュージシャンとしてやっていけるというめどをつけたいと漠然と思っていました。でも実際は、27歳のときにはもうニコルズの一員になっていて、全力で打ち込めるいいバンドでやれていたから、年齢での線引きなどということは考えなくなったんですよね。すでにメンバーみんなが向いている方向が一緒で、ニコルズで何とかしたいとみんな思っていたので。もしそのときに思うように音楽をやれていないとか、メンバーが固まっていないというような状況だったらどうなっていたかわかりません。

音楽活動の魅力・やりがい

──では、音楽をやっていてよかったなと思う瞬間は?

わたなべだいすけ-近影2

わたなべ おお、今までそういうことは考えたことはないですね(笑)。通常僕らが受ける音楽媒体のインタビューでは主に作品について聞かれるのですが、今回は僕ら1人ひとりという人間について質問していただいているのですごく新鮮で楽しいです。本題に戻ると、先ほどお話した通り、そもそも僕は教師になって子どもたちにいろいろなことを教えたいと思っていたんですが、今、それを音楽を通してやれているような気がするんです。僕が、ふと気づいたことをうたにする、あるいは、明るくて楽しいうたを作って多くの人に音楽の喜びを感じてもらうことで、人生の不安が少し軽くなるということもあると思うんですよ。教師になってやりたかったことを、曲を作ることやライブ活動を通して、少しかもしれないけれどできているような気がするので、音楽の道を選んでよかった、D.W.ニコルズというバンドで音楽活動ができてよかったと心底思っているんです。

鈴木 僕は、音楽をやっててよかったと思うのはライブをやってるときかなあ。ニコルズというバンドでギターを弾くことそのものが楽しいし、ライブに来てくれた大勢の人たちが泣いたり笑ったり盛り上がったりしているのを見るとさらにうれしい。自分がこんなに楽しいと感じることを何百人もの人たちと共有できる、一緒に感動を分かち合える。こんな素晴らしいことってないなとつくづく思うんです。

生きている意味をリアルに感じられる

D.W.ニコルズ-近影3

岡田 私もライブですかね。観に来てくれたオーディエンスたちが本当に楽しそうで、私の前で演奏している3人のメンバーもいつも楽しそう。それを見てると私もうれしいしテンションが上がります。私がニコルズでドラムを叩くことで大勢の人びとが喜んでくれる、つまり、人のために生きている実感を得られて、私の生きる意味はここにある、生きててよかったとすら思えるんです。それを最も感じられる場がライブなんですよね。音楽をやっててよかったと思える瞬間ですね。


──そんなことを感じられる職業ってなかなかないですよね。

岡田 そうなんですよね。世の中のすべての仕事は誰かのためになっているのは確かなことなのですが、それをリアルタイムで実感できるのはすごく稀で幸せなことだなと思います。

このバンドに救われた

千葉真奈美-近影2

千葉 私はそもそも暗い人間で友だちもあんまりいなくて、ちょっと心の闇みたいなものを抱えていたんですが、まずだいちゃんに出会って歌を聞いた時、ちょっと救われた気がしたんです。そしてだいちゃんに声を掛けて一緒に音楽を始めて、私自身も人に音楽を届けられるようになった。そしてニコルズというバンドを始めてから私自身も生きることに前向きになれたので、それ自体が音楽をやってて一番よかったと思うことなんです。

ニコルズのファンの中にも意外と私と同じような人もいて、ニコルズの音楽に救われているという声をもらったりすると本当にうれしいんですよね。ああ、昔の自分とおんなじだって。だから自分のためになってるし、誰かのためにもなっているということが実感できるのがすごくうれしいし、そんなときニコルズで音楽をやっててよかったとすごく思います。それがリアルに感じられるのが、みんなの顔が観られるライブなので、私もすごくいい場所だと思います。


──何百人もの人が自分たちのパフォーマンスを観に集ってくるというのはすごいことですよね。

千葉 そうなんですよね。ニコルズを求めてそこに来てくれるというだけでもすごいことじゃないですか。その上盛り上がったり喜んでくれたり感動して涙を流してくれるわけですからめったにあることじゃないですよね。

岡田 そんなこと、10年前にはとても考えられなかったのでやっぱりすごくうれしいです。音楽続けててよかったなと一番思う瞬間ですよね。

D.W.ニコルズ

わたなべだいすけ(ボーカル、アコースティックギター)、千葉真奈美(ベース)、鈴木健太(ギター)、岡田梨沙(ドラムス)の4人で構成される音楽バンド。2005年、ライブハウスで働いていた千葉真奈美がわたなべだいすけの弾き語りライブを観て「バンドでやろう!」と誘い、D.W.ニコルズを結成。都内でバンドとしての活動を開始。わたなべだいすけのイニシャルがD.W.であることからC.W.ニコル氏を連想。自然を愛するニコル氏に共感と敬意を示し、D.W.ニコルズと命名(C.W.ニコル氏公認)。2007年、鈴木健太と岡田梨沙が加入し現在の編成に。2009年、ミニアルバム『春うらら』を携え“うららかツアー”として初めての全国ツアーへ。9月、メジャーデビューを果たすも、2011年、インディーズに。2013年、EMI Records Japanから再メジャーデビューを果たす。2015年4月には結成10周年を記念したD.W.ニコルズのオールタイムベストアルバム、「ベスト オブ D.W.ニコルズ『LIFE』」を発売。好評を博す。CD制作やライブの他にもラジオやイベント出演など幅広く活動中。10月11日には結成10周年記念ライブとして、破格の入場料1000円の「感謝の1000円ブリッツ!」@赤坂BLITZを開催。

初出日:2015.09.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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