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2015.09.01  取材・文/山下久猛 撮影/大平晋也

ドラムス加入で現在の4人体制に

鈴木健太-近影2

鈴木 プロとして本気でやっていくのであればドラムを変えた方がいいんじゃないかという話をしていたとき、僕はかねてからドラマーとして知っていたりっちゃんをまず候補として考えて、水面下でそれとなくアプローチをかけていました。

岡田 健太君に声をかけられた2007年当時、私も仕事とバンドをいくつか掛け持ちしていました。自分のバンドも持っていたし、色んなバンドのサポートでもドラムを叩いていたんです。健太君ともその中で知り合って意気投合し、何かの形で一緒にやれたらいいねという話はずっとしてたんです。まなんとも、彼女が働いていたライブハウスに出演していたので繋がっていました。そしてある日、健太君が「最近サポートで始めたいいバンドがあるんだよね」と当時のニコルズのライブDVDを持って来てくれて、それを観たらすごくよくて。だいちゃんの声も曲も歌詞もすごくいいと思ったし、健太君のギターもすごく好きだったし、まなんのベースも上手だし、いいメンバーがそろったバンドだなと。このメンバーの中で私がドラムを叩いている姿が自然とイメージできて、すごくいいバンドになりそうな気がすると思ったんです。その時に健太君から「ドラムを探しているんだけどニコルズで叩いてみない?」と言われたので、やりますと即答しました(笑)。でも私も複数のバンドを掛け持ちしていたので、最初はサポートとして入りました。

鈴木 僕とりっちゃんはしばらくサポートメンバーだったのですが、他のバンドを少しずつやめていって、2007年3月にニコルズに正式に加入したんです。

デビュー後しばらくはトントン拍子

──4人体制となってからは、翌年の2008年1月にインディーズで6曲入りミニアルバム『愛に。』を発表。10月には初のワンマンライブを下北沢のライブハウスで開催してチケットはソールドアウト。2009年2月には初めての全国ツアーを開催。9月にはメジャーデビューと、4人体制になってからはトントン拍子という感じですね。

千葉 そうですね。割とすぐにワンマンライブや全国ツアーができるようになり、CDも最初の頃は自主制作で作ってライブ会場だけでコツコツ売っていたのが、全国流通に乗るようになったりしましたしね。

岡田梨沙-近影3

岡田 最初に出したミニアルバム『愛に。』が好評で、ラジオで流れたりもして色んな人に届くようになり、そのうちにメジャーデビューの話もいただいて、という感じである意味トントン拍子ではあるかもしれないですね。

千葉 少なくともバンドメンバーを集めることに関してはトントン拍子ですね。何といってもメンバー集めが一番大変なことなのに、ギターもドラムもけんちゃんとりっちゃんにしか声をかけてないし、すんなりと入ってくれたのですぐ今の形になりました。普通、こんな簡単にいいメンバーは見つからないんですよ。

わたなべ でもメジャーデビューした後も一度インディーズに戻ったりして、いいことばかりではなかったんですけどね。

軌道に乗る最初の火種

──ではこの10年間を振り返って、一番印象に残っていることは?

鈴木 僕は2008年にインディーズで出した最初のCD『愛に。』が、狭い下北沢という界隈でしたが、ちょっとした話題になったことですね。どうして盛り上がったんだろうね。

千葉 ほんと何でだろうね。口コミかなあ。当時私たちは下北沢を拠点にライブやイベントなどを行っていたのですが、その下北沢にあったインディーズ専門のCDショップで『愛に。』がたくさん売れたんです。

わたなべ 初めてそのショップの売上チャートの上位にも入ったよね。

鈴木 そのショップでインストアライブをやったときに、店の外まで入場待ちの行列ができたんです。その後初めてのワンマンライブを開催したとき、チケットがソールドアウトしたことにも驚きました。その時のオーディエンスが、僕たちをワクワクしながら観ているのを感じました。いろんなことがうまく転がり始めて、僕たちを取り巻く環境がいい方向に変わりつつあると実感したことがすごく印象的ですね。僕たちイケるんじゃないかと。下北沢という狭い界隈ではあったんですが、それが今の僕たちに繋がる最初の火種だと思うので、一番印象に残っています。

初めてのファンクラブ

岡田 私はここ1年がとても濃くてその印象で頭がいっぱいで、もちろんこの10年でいろんなことがあったのですが、あまり昔のことが思い出せないんです(笑)。しいて言えば、結成10周年記念イベントの一つとして、初めてファンクラブを作ったことですね。ファンクラブに入ってくれる人は大勢のファンの中でもより濃いファンで、私たちにとってすごく大きな存在です。ファンクラブ会員限定のイベントを開催したときも異様に盛り上がって、ファン同士で仲良くなってくれたこともうれしかったですね。また、先日ワンマンライブをやったときもすごく盛り上がって、ファンクラブ会員もそれ以外の人たちからも、ニコルズをどうにか盛り上げたい、応援したい、という愛をひしひしと感じて感動しました。今やファンも一緒にニコルズを動かしていると言っても過言ではありません。それがここ最近一番の変化で、10年続けてきてよかったなと強く思うことです。

千葉真奈美-近影3

千葉 私が一番印象に残っているのは、2009年の最初のメジャーデビューですね。そもそもバンドとしてプロを目指すと決意したときから、メジャーデビューは最初の大きな夢でした。このバンドなら必ずいつか人気が出ると思って始めたので、メジャーデビューが決まったときはまず1つ夢が叶った気がしてすごくうれしかった。また、メジャーデビュー曲『マイライフストーリー』が全国31のラジオ局でパワープレイを獲得して、だいちゃんと一緒に全国のラジオ局を挨拶とお礼のため回ったのですが、これまで行ったことのないいろいろな土地に行けたことも大きな思い出ですね。今まで下北沢というすごく狭いエリアで活動していたので、見知らぬ土地でニコルズの曲が流れているということだけでもすごいと思ったし、ニコルズを知らない人がたくさんいるところに私たちの曲を届けられることがうれしかった。その時いろんなラジオ局の人と仲良くなって、いまだに関係が続いている人も多いんです。自分たちだけで活動していたら絶対にここまでは広がらないけれど、たくさんの人たちが力を貸してくれることで私たちの曲が全国に届いていく、ということを実感して、メジャーデビューの力の大きさを感じました。この経験は今にすごく繋がっているし、一番思い出に残っています。

D.W.ニコルズ

わたなべだいすけ(ボーカル、アコースティックギター)、千葉真奈美(ベース)、鈴木健太(ギター)、岡田梨沙(ドラムス)の4人で構成される音楽バンド。2005年、ライブハウスで働いていた千葉真奈美がわたなべだいすけの弾き語りライブを観て「バンドでやろう!」と誘い、D.W.ニコルズを結成。都内でバンドとしての活動を開始。わたなべだいすけのイニシャルがD.W.であることからC.W.ニコル氏を連想。自然を愛するニコル氏に共感と敬意を示し、D.W.ニコルズと命名(C.W.ニコル氏公認)。2007年、鈴木健太と岡田梨沙が加入し現在の編成に。2009年、ミニアルバム『春うらら』を携え“うららかツアー”として初めての全国ツアーへ。9月、メジャーデビューを果たすも、2011年、インディーズに。2013年、EMI Records Japanから再メジャーデビューを果たす。2015年4月には結成10周年を記念したD.W.ニコルズのオールタイムベストアルバム、「ベスト オブ D.W.ニコルズ『LIFE』」を発売。好評を博す。CD制作やライブの他にもラジオやイベント出演など幅広く活動中。10月11日には結成10周年記念ライブとして、破格の入場料1000円の「感謝の1000円ブリッツ!」@赤坂BLITZを開催。

初出日:2015.09.01 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの