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2015.05.07  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

新たな軸「REFARM会議」

──Webサイトを拝見したのですが、すごくたくさんの活動をされていますね。

そうですね。確かに立ち上げてからこれまでの5、6年でいろいろな活動をやってきて、実際に実家に帰って農家を継いだ人もいます。しかし、正直なところ、どこまで農家のこせがれの背中を押せたかというと、とても僕が満足のいくレベルには達していないので、成功とはとても言えないと思っているんですね。だから今年は本当の意味で農家のこせがれの役に立つ存在になるために農家のこせがれネットワークのゼロからのスタートと位置づけ、メインの活動を3つに絞る予定です。その軸となる活動の1つが「REFARM会議」です。

第1回REFARM会議に参加した農家のこせがれの方々と一緒に

──「REFARM」にはどんな思いが込められているのでしょうか。

農家のこせがれネットワーク時に掲げたミッションである
・農家のこせがれが実家に戻る(REturn FARM)
・地域の農地を有効活用する(REused FARM)
・実家と地域の農業を変革する(REmake FARM)
・尊敬される農業を実現する(REspect FARM)
という意志が込められています。

REFARM会議では以上のミッションを改めて踏まえ、東京での暮らしを続けるか、帰農するかで悩んでいる農家のこせがれが帰農をあきらめず、一歩を踏み出すため仲間を得て自信をつける場を作ることを目指して2015年3月15に第1回を開催しました。


──REFARM会議では具体的にはどのような活動を?

こせがれたちの現在の心境や漠然と考えているプランをプレゼンテーションしてもらいます。さらに実際にこせがれの実家が作っている農作物を食べてその特徴やこだわりを聞く中で、参加者は自分の知見をフルに活用して悩めるこせがれにアイディアを提供します。その中で支援をしたい人や同じ想いをもつこせがれと一緒にチームを結成してプロジェクトがスタートすることもあるでしょう。

第1回ではバーベキューを楽しみながら開催しました。4人のこせがれを軸に4つのグループにわけ、各グループにファシリテーターをつけて、活発な議論が展開されました。農家のこせがれのほかには、現役の農家、農業関係で起業した人したい人、ITと農業を融合させたビジネスをしたい人、純粋においしいものを食べたい消費者などなど総勢50人ほどのさまざまな人たちが参加して大いに盛り上がりました。今後もバーベキューに限らずさまざまな形で定期的に開催していく予定です。

農家のこせがれを囲んで活発な議論が繰り広げられた

最大のメリットは業界業種を問わずさまざまな人たちに出会えて交流することで、生産者が作った農作物のファンが増える可能性が高まることだと思います。近年、みやじ豚の売り上げが伸びたのも、いろいろな人と出会ったことが大きい。やっぱり食べ物は顔の見える、信頼できる知り合いから買いたいと誰しも思うものですからね。農家のこせがれや新規で農業をやる予定の人はもちろん、僕らの思いに共感して協力したいと思ってくれる人は業界・業種を問わずぜひREFARM会議に参加してもらいたいです。

「農家のこせがれ交流会」

こせがれ支援に特化した活動としては、こせがれ限定の「農家のこせがれ交流会」を2カ月に1回開催しています。農家のこせがれは親の高齢化や農地の相続、あるいは処分など跡継ぎ問題で特有の悩みをもっています。こういう悩みは特殊すぎて会社の上司や友人に相談しても理解してもらえないし、適切なアドバイスももらえません。また農家のこせがれが夢と希望をもって実家に帰ったはいいけれど、父親と全くそりがあわなくて辞めてまた都心に戻ってしまうというケースもよく聞きます。お互いにとって非常に不幸なことだし、農業界全体の損失ともいえます。

もちろん我々が親父さんの考え方を変えることはできないけれど、この交流会には同じ境遇の人しかいないので、悩みを共有し安心できるし、有益なアドバイスをもらえるかもしれません。相談できる人を見つけて独自で勉強会を開くこともできるでしょう。そうすればもう少し踏ん張れるかもしれない。そんな農家のこせがれにとって心の支えになる有益なネットワークづくりの手助けをしたいと考えて全国各地を回って交流会を開催してきたんです。

農家のこせがれネットワーク関西の交流会にて

このような農家のこせがれネットワークの設立発表会やこせがれ交流会などで全国の農家のこせがれに僕らの思いを伝えてきました。その結果、その思いに共感してくれた人たちがその地域で地方版の農家のこせがれネットワークを立ち上げてくれているんです。現在は「農家のこせがれネットワーク北海道」「宮城のこせがれネットワーク」「農家のこせがれ千葉」「農家のこせがれ群馬」「農家のこせがれネットワーク東海中部」「農家のこせがれネットワーク関西」の6つの地域ネットワークが立ち上がっています。今後は悩めるこせがれを支えるために、この地域ネットワーク間の連携をより強化していきたい。これが今年から取り組む2つ目の活動の柱です。

地域ネットワークの重要性

──農家のこせがれネットワークと6つの各地域のネットワークとの関係性は?

各地域のネットワークは農家のこせがれネットワークの支部ではなく、各自で独立した集まりになっています。僕らは地域でネットワークを作ることを推奨はするけれど、無理矢理設立させて活動させるというようなことはしていません。そもそも各地域や作っている農産物によっても活動の内容は違ってくるし、メンバーやリーダーによっても特色が出ますからね。ですので各団体で自由に活動してもらえればいいというスタンスでやっています。

ただ、ネットワークを作る際に僕が提唱しているのが農家だけの集まりになってはダメだということです。なぜなら農家だけが集まってもイノベーションは生まれないし、お客様の獲得にはつながらないからです。わかりやすい例でいうと、農家が集まるコミュニティの中に飲食店の経営者がいたら、「君は実家に帰って親父さんの跡を継いだのか。頑張ってるみたいだからうちの店で君が作ってる農産物を買うよ」と取り引き先を一軒獲得できる可能性もあるし、実際にこういうことは起きています。だからいろんな職種の人が参加する地域ネットワークの重要性を説いているわけです。

3つ目の活動として、今年は全国100名のこせがれ就農組と全国主要都市在住1500名のこせがれのアンケート調査を行い、こせがれの実態を正確に把握します。そしてこせがれの手本となる今後の農業モデルの実践研究を行い、情報提供をしていく予定です。


インタビュー後編はこちら

宮治勇輔(みやじ ゆうすけ)
1978年神奈川県生まれ。株式会社みやじ豚代表取締役社長/特定非営利活動法人農家のこせがれネットワーク代表理事

2001年、慶應義塾大学総合政策学部卒業後、株式会社パソナに入社。営業・企画・新規プロジェクトの立ち上げなどを経て2005年6月に退職。実家の養豚業を継ぎ、2006年9月に株式会社みやじ豚を設立し代表取締役に就任。生産は弟、自身はプロデュースを担当し、兄弟の二人三脚と独自のバーベキューマーケティングにより2年で神奈川県のトップブランドに押し上げる。みやじ豚は2008年農林水産大臣賞受賞。日本の農業の現状に強い危機意識を持ち、最短最速で日本の農業変革を目指す「特定非営利活動法人農家のこせがれネットワーク」を設立。一次産業をかっこよくて・感動があって・稼げる3K産業にするため、新しい農業標準作りに挑戦する。農家とこせがれのためのプラットフォーム作りに取り組むほか、農業に力を入れる地方自治体のPR活動の支援、若手農業者向けの研修、講演などで全国各地を飛び回る。2014年10月には悩める農家のこせがれが帰農をあきらめず、一歩を踏み出すため仲間を得て自信をつける場「REFARM会議」を開催。2015年3月に第1回を開催した。2009年11月、初めての著書『湘南の風に吹かれて豚を売る』を出版。2010年、地域づくり総務大臣表彰個人表彰を受賞。

初出日:2015.05.07 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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