WAVE+

2015.03.19  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

弁護士事務所の代表として

早稲田リーガルコモンズ法律事務所のメンバーのみなさん

──弁護士事務所の代表としてはどのような仕事・役割があるのですか?

当事務所は複数の弁護士による共同経営で成り立っており、現在は私ともう1人の代表パートナー(前述の遠藤賢治弁護士)を含め16人のパートナーと2人のカウンセル、7人のアソシエイト、合わせて25名の弁護士が所属しています。パートナーは事務所を経営していくためのお金を出している出資者であり、経営の方向性について決定権をもっている共同経営者という位置づけです。それぞれ自分のクライアントをもっており、報酬も自分が働いた分だけ得ることができます。アソシエイトは経費負担のない弁護士で、主に弁護士経験2年以下の新人です。毎年早稲田ロースクールを修了して司法試験に合格した新人を数名採用しています。アソシエイトの所属期間は2年間で、その間に実力をつけて独立するなり、他の事務所に移るなり、次のステップへ進んでもらうということになります。

当事務所は個人事業主の集まりのような感じで、いわゆる一般の企業のようにトップに社長がいて、以下副社長、専務、部長、課長......というようなピラミッド型の組織にはなっていません。あえて例えるなら、パートナーがドーナツ状に広がって輪をなしていて、養成対象であるアソシエイトがその輪の真ん中でパートナーに包まれている、という感じでしょうか。極めてフラットな組織だと思います。

ですから私は経営者という立場ですがトップダウンではなく、経営方針など重要な議題は16人のパートナーで議論して決める合議制です。私の代表としての一番大きな役割はその場のコーディネーションですね。


──意見をまとめるのがなかなかたいへんそうですね。

そうなんですよ。最高裁の大法廷でも15人ですからね。16人もいれば当然考え方も多様ですから、合意形成にはどうしても時間がかかります。その辺りの苦労はありますが、花見やバーベキューなど定期的に事務所イベントを開催したり、部活動を推奨したり、お互いリラックスしてコミュニケーションを取れる場を設けるなど人間関係をしっかり作るような努力をしているので、今のところパートナー間で目立った対立があるわけでもなく、スムーズに運営できていると思います。

一弁護士としての仕事

──いわゆる一弁護士としての仕事もしていらっしゃるんですよね。

もちろん行っています。中小規模の事業者の方々の経営相談全般、いわゆる顧問弁護士としての仕事が多いのと、あとは相続や離婚、子どもの問題などの家事事件全般を扱うことが多いでしょうか。実際にクライアントと会って相談を受けたり、裁判所の法廷に立ったりもしていますが、事件を他の弁護士と2人で受け持つ共同受任が多いです。私自身が法廷に行くのは週に2~3回程度ですね。


──早稲田リーガルコモンズ法律事務所とSAFLANとは別なのですか?

はい。この事務所とSAFLANは別物です。ただ、SAFLANのメンバーの何名かが当事務所の弁護士で、SAFLAN副代表の福田健治弁護士や、栃木県北地域での集団ADR(代替的紛争解決手続)の団長を務めている尾谷恒治弁護士も当事務所に所属しています。

弁護士としてのモチベーション

──弁護士としての河﨑さんを突き動かしているモチベーションは何なのでしょう。

絶対にこれをやらなければならないという使命感はないんですよ。基本的には、目の前に来た球を打ち返すというスタンスです。この問題はやりすごしてはいけないなと思ったら調べてみて、自分にできることがあれば関わるという感じですね。

先にもお話しましたが、SAFLANの活動に取り組んでいるのもたまたまなんです。そもそも私は環境問題の専門家でもないし原発問題にも全然興味がなかった。もしこの時代に東京にいなかったら、また、幼い子どもがいなかったらここまで入れ込んでいなかったと思います。世の中にはたくさん問題があって、どれを選んでもいいわけですが、いまのテーマに取り組んでいるのはいくつかの偶然と人の縁が重なったからだと思います。

社会全体がこうあるべきという政治的な思想や設計主義的な考えも私の中にはほとんどありません。あるのは自分が親世代から受け継いだよいものをそのままに、悪いものはちょっとだけマシにして次の世代に繋げたいという思いだけなんですよね。だから私は自分を分類するなら「保守」だと思っているんです。周囲からはそう見られていないようですが(笑)。私たちは社会の一員なので社会をよりよい形で子どもたちの世代に伝えていくことは大人の責務だと思うんです。

河﨑健一郎(かわさき けんいちろう)
1976年埼玉県生まれ。弁護士/早稲田リーガルコモンズ法律事務所共同代表/福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN)共同代表

早稲田大学法学部卒業後、1999年、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)入社。経営コンサルタントとして人事や組織の制度設計などに従事した後、2004年に退社し、早稲田大学法科大学院(ロースクール)に入学。2007年、同大学院修了、同年司法試験合格、新61期司法修習生に。2008年、弁護士登録(61期)東京駿河台法律事務所に勤務。議員秘書も経験。2011年3月11日の東日本大震災発生直後から現地にボランティアに赴く。7月には「福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN)」を共同で設立し、原発事故に伴う避難者の方々への支援活動に取り組んでいる。2013年3月 早稲田リーガルコモンズ法律事務所を設立。経営の仕事のほか、弁護士としても活動中。得意分野は中小事業者の経営相談全般、および相続や離婚、子どもの問題などの家事事件全般。特定非営利活動法人山友会の理事を務めるなど、生活困窮者支援にも積極的に取り組んでいる。日弁連災害対策本部原子力プロジェクトチーム委員、早稲田大学法科大学院アカデミックアドバイザーなど活動は多岐にわたる。『高校生からわかる 政治の仕組みと議員の仕事』『避難する権利、それぞれの選択』『3・11大震災 暮らしの再生と法律家の仕事』など著書多数

初出日:2015.03.19 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

pagetop