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2014.10.15  取材・文/山下久猛 撮影/宋英治

任期終了後のキャリア

──任期終了後は?

いろいろと選択肢はあったのですが、池島に来たばかりのときに参加した軍艦島関連のシンポジウムで知り合った長崎大学の研究者から、地域おこし協力隊の任期が終わったらうちに来ないかと誘っていただいて、9月1日から長崎大学のインフラ長寿命化センターという研究室で、産学官連携研究員として働いています。


──インフラ長寿命化センターとは?

高速道路や橋梁など、日本の基幹インフラは今から40年前の高度成長期にできたものが多く、今その老朽化が大きな問題になっています。現在も交通の要衝や経済の大動脈となっているので、簡単には作り変えることはできません。かといって何もしなければこれからどんどん朽ちていく一方なので、その寿命をどうやって伸ばすかという研究をしているのがインフラ長寿命化センターです。こういう研究を専門にしているところって日本でもまだ2、3カ所しかないんです。

インフラ長寿命化は今後ますます社会に必要とされる、これから伸びる分野なので、いろんな人にちゃんと知ってもらう仕事っておもしろいなと。また、広報的な仕事だけどそれによって動く人が出てくるかなと思ったので、この仕事をありがたく受けたわけです。

──長崎大学は小島さんのどういうところを評価して声をかけたのでしょう?

インフラ長寿命化センターって、たぶんその名称すら聞いたことのない人がほとんどで、ましてや研究している内容なんて知っているわけがないですよね。でも今の日本にとってすごく重要な問題に取り組んでいるので、インフラ長寿命化自体の認知を上げること。そこで小島ならうまく長崎大学長寿命化センターの話題づくり、啓発をして、認知度を上げてくれるだろうと期待してくれたようです。

──池島の認知度を上げたことが評価されたということですね。

それプラス、僕のことを社会科見学時代から知ってくれていて、記事も書けるし写真も撮れるし動画編集もできるし、Webサイトも作れる。情報発信をするときに、一つのスキルだけじゃなくて、複合的なスキルをもってる点が決め手になったようです。


──具体的にはどのような作業を?

インフラ長寿命化センターでは道路を守る「道守プロジェクト」を行っていて、そのプロジェクトの企画・提案・運営や県内各地の担当者との打ち合わせ、非破壊検査の実演、講義、講師、HPの作成・管理・更新・情報発信、DVD撮影・編集、広報誌の作成、シンポジウムのポスターの作成などを行う予定です。

キャリアのわらしべ長者

──今後の目標は?

当面は長崎大学のインフラ長寿命化センターの知名度アップと啓発のために頑張ること。インフラ長寿命化といえば長崎大学というところにまでもっていきたいですね。

それと東京でも行っていたのですが「サイエンスシート」をやりたいですね。サイエンスシートとは科学者と一般の人がピクニックにでかけて一枚のレジャーシートの上で科学について楽しくおしゃべりをするイベントです。どうしても科学者というと雲の上の人と思われがちですが、その先入観を取っ払いたい。例えば八百屋さんは野菜や果物のプロ。科学者は科学のプロ。プロであることにおいて両者の間に差はないので、対等に話せばいいわけです。長崎大学の教授もそのシートに巻き込みたいなと。長寿命化センターだけじゃなくていろんな方面に手を出して行こうかなと思っています。その方がおもしろいので(笑)。


── 一見行き当たりばったりで脈絡のないキャリアに見えて、これまでやってきたことが確実につながっていますよね。

そうですね。僕は長期的な目標は立てません。というか立てられない(笑)。5年後、10年後のことなんて考えられません。いつもそのときにおもしろそうだなと思ったことを取りあえずやってみたら新しいスキルが身について、それが次にやってみたいことに活かせる。そうしていくうちに以前取り組んでいたことより、規模も社会に及ぼす影響も大きなことに取り組めるようになる。次の仕事はさらに大きなフィールドで、リアルなRPGをできそうなのでワクワクしてます。今後もキャリアのわらしべ長者みたいな感じで生きていければと思っています。

小島健一(こじま けんいち)
1976年埼玉県生まれ。長崎大学大学院工学研究科インフラ長寿命化センター研究員/元地域おこし協力隊員(長崎市池島)/見学家/フォトグラファー/「社会科見学に行こう!」主宰

大学卒業後、コンビニでのアルバイト、商社、IT企業、Web制作会社などを経て、2004年からフリーランスとして社会科見学団体「社会科見学に行こう!」を主宰。先端科学研究所や土木工事現場、産業遺産や工場などの見学をコーディネートを行い、大人の社会科見学ブームの火付け役となる。同時に工場などを一般向けにテレビ、ラジオ、書籍、WEBなどで紹介。また、トークライブやサイエンスシートなどを通して、技術者や研究者などの専門家と専門外の人を結びつける活動も。写真家として活動するほかに執筆、イベントやロケーションのコーディネートなども手掛ける。2011年10月から長崎市の地域おこし協力隊の一人として長崎の離島「池島」へ赴任。2014年8月まで「産業遺産で地域再生」を目標に地域おこしに従事。池島の認知度向上、来島者大幅増加に貢献。2014年9月からは長崎大学大学院工学研究科インフラ長寿命化センターの研究員として勤務。テレビ、新聞、雑誌などのメディア出演・登場多数。著書に『社会科見学に行こう! 』、『ニッポン地下観光ガイド』、『見学に行ってきた。』などがある。

初出日:2014.10.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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