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2013.11.01  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

仕事の実感が得られる

馬で運んだ丸太の数々。1度に最大6本運ぶことができ、1日だいたい20往復する

同時に、馬で木を運ぶ行為がとても合理的でおもしろいなと感じました。当時やっていた馬車もおもしろかったけれど、馬搬を繰り返すと運び出した木がたまっていきます。仕事の成果が目に見えてわかるので働いたという実感がもてます。それで馬で何かをやるなら馬搬がやりたいなと思ったんです。これが馬搬を始めたきっかけです。ですから最初は山を傷めないからとかエコだからという理由ではなかったんです。

それで早速2人に弟子入りしました。馬搬のやり方は人によって違うので、1人じゃなくて2人の馬方に教えてもらった方がより幅広い技術を身につけられると思ったからです。

師匠のひとり、見方さんと

馬搬をするには丸太を運ぶそりや、馬とそりをつなぐ器具などが必要なのですが、それらの道具は馬搬をやめた人を訪ねて譲ってもらいました。それから師匠と馬とともに山に通う日々が始まりました。

馬と人間の共同作業

──岩間さんが馬搬をするところを見せてもらったときは同じように驚きました。馬って人間の言葉をあれほどよく理解していうことを聞くんですね。一人前になるまでどのくらい時間がかかりましたか?

僕の場合は自分で馬を持っていたし、師匠も近くにいて毎日のように山で教わることができたので、半年もかかりませんでした。それほど難しいことではないので僕のような環境ならすぐできるようになりますよ。ちなみに馬搬が盛んなイギリスでは馬搬の研修コースがあり、期間は3年です。まったくの未経験の場合は3年から5年といったところでしょうね。

──馬搬の実演を見て、すごいと思ったのと同時に細心の注意を払っていると感じました。

木が密集した林の中で馬を操り重い丸太を運ぶわけですから、まずは危険がある作業だということを頭に入れる必要があります。だからこそ師匠は例えば馬と木の間に挟まらないために立ち位置をどうするかなど、まずは危機管理の技術を徹底的に教えてくれるんです。


──木を伐るのも自分で行うのですか?

はい。自分で伐ります。その方が馬で運びやすいように考えて伐れるので。ただ、馬搬が盛んだった頃は木を伐る担当の人もいたようです。

岩間敬(いわま たかし)
1978年岩手県生まれ。馬搬馬方/遠野馬搬振興会事務局長。

高校卒業後、建築家を目指し東京の建築関係の専門学校に入学。卒業後、東京の乗馬クラブに勤務。その後遠野に戻り、乗用馬の繁殖・調教を行う会社に勤めつつ、農林業に携わる。20歳頃から馬搬に興味をもち、2人のベテラン馬方に師事、技術を習得した。2010年、「遠野馬搬振興会」を設立。現在は農林業に従事しながら、馬搬文化と技術の継承、宣伝、普及などを目的として活動している。2011年にイギリスで開催された「馬搬技術コンテスト・シングル部門」で優勝。2012年にはこれまでの活動が認められ、岩手競馬、馬事文化賞受賞。同年、欧州馬搬選手権シングル部門で7位に入賞。

初出日:2013.11.01 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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