WAVE+

2013.06.15  取材・文/山下久猛 撮影/村上宗一郎

必要なときに、必要な人と

──働き方についておうかがいしたいのですが、独立してよかったと思う点はどんなところですか?

毎回プロジェクト単位で仕事をしているので、クライアント、案件、メンバーなどの集合体はその都度違います。プロジェクトによって集合体の中身も変わり、必要なときには大きくなり、そうじゃないときは個で活動するということが自由にできます。必要なときに必要な人と組めるというのがいいですね。大きな企業の中の一員から個になったことで、集合体として働くということのおもしろさをすごく感じています。

そこが独立して一番変わった点で、企業の中の社員チームと個が集まってる集合体のチームは全然違うと思いますね。大きな組織の中にいると、その組織に対して自分のスタンス・動きを決めなきゃいけませんよね。でも集合体は大きくなってもあくまでも個が主体なので働く上でのスタンスが違います。「何のために、誰のために、どう仕事をするか」という考え方ががらっと変わりましたね。つまり「自分が所属する組織のために」から、「クライアントのために、ひいては最終顧客のために」というふうに変わったということです。


──例えばどんな職種の人たちとプロジェクトを動かすのですか?

例えば建築家、インテリアデザイナー、プロダクトデザイナー、カラーデザイナー、グラフィックデザイナーなど、各分野のプロフェッショナルが集まります。当然ですがプロジェクトによって集まる人が違います。そして時にはCMFデザイナーである私が中心となり、全体をディレクションすることもあります。

会社組織の中のチームの場合、その上に部長や役員などデザインの専門家ではない人がたくさんいます。現場のチームメンバーの想いやスタンスは同じでも、決定権を持つのは彼らなので、その壁を突破していかなければなりません。そういう障害は少なく、CMFデザインだけに集中できる点が最大の違いです。


──ほかに独立してよかったと思う点はありますか?

すべてよかったですよ。私は過去も否定していないので、会社を辞めなければよかったと思うことは一切ありません。独立したことのデメリットも思いつかないですね。

仕事を自宅に持ち込めない派

──独立してから生活はどう変わりましたか?

あまり変わりませんね。私は家で仕事ができないタイプなので、仕事をするならco-labに来ます。根がぐうたらで、家にいるとだらけてしまうので(笑)。家では仕事は絶対にしません。そう決めているわけではなくて、単純にできないんです(笑)。

自宅で仕事ができる人は素晴らしいと思います。ちゃんと自分で自分を管理できる、オンとオフを切り替えられるということですから。

ただ、私もプライベートでも常にデザインのことを見たり考えたりはしています。それは仕事というか趣味みたいなものなので全然苦にならず、楽しくやってます。元々デザインが好きなんでしょうね。


──毎日のざっくりとしたスケジュールを教えてください。

大体月曜日から金曜日までの平日は9時から9時半に出社して、帰りは終電ギリギリくらいまで働いています。生活のスタイルは会社員時代とあまり変わりませんね。

土日はよほどのことがない限りは休んでいます。サーフィンが趣味ですが去年(2012年)は忙しすぎてあまり行けなかったので今年はもっと行きたいと思っています。

趣味のサーフィンは会社員時代から続けている

玉井美由紀(たまい みゆき)
1968年千葉県生まれ。株式会社FEEL GOOD creation 代表取締役/CMFデザイナー/CMFクリエイティブディレクター

武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科卒業、 株式会社本田技術研究所へ入社。四輪デザイン室でデザイナーとして数々の車のカラーマテリアル開発に携わる。S-MXで第1回オート・カラー・アワォードのファッションカラー賞受賞、シビックシリーズで第8回オート・カラー・アワォードの技術賞を受賞。2007年、プロダクトの表面材専門のデザイン事務所「FEEL GOOD creation」設立。日本ではほとんど知られていないCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)を日本で広め、日本のモノづくりを活性化させるため奮闘中。

初出日:2013.06.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの