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2013.06.15  取材・文/山下久猛 撮影/村上宗一郎

クリエイター専門のシェアオフィスへ

──2007年にFEEL GOOD creationを設立してからは、仕事場はどこに置いたのですか?

会社といっても最初は私ひとりでしたが(笑)、現在オフィスを構えている「co-lab(コーラボ)」というクリエイター専門のシェアオフィスに入りました。前々から独立したらここに入りたいと思っていたんです。

クリエイター専門のシェアオフィス「co-lab千駄ヶ谷」の内部

──シェアオフィスは今話題になっていますが、その当時からあったんですね。

シェアオフィスの走りでした。今でこそかなり増えてますが、当時クリエイター向けシェアオフィスは千代田区三番町にあったco-labくらいしかなかったですね。


──なぜシェアオフィスに入りたいと思っていたのですか?

会社に就職する際の志望動機の部分でもお話しましたが、元々工業製品のデザインを志望したのは大勢でひとつの物を造るのが好きだったからで、会社員時代も大きな会社で常に大人数のチームメンバーとともに仕事をしてきました。

しかし、独立したらひとりで仕事をしなければなりません。自宅か事務所でひとりきりでパソコンに向かって黙々と仕事をするなんて、寂しがり屋の私にはとても耐えられなかった。だから独立してひとりになっても、人がたくさんいてわいわい仕事をしている場所で働きたかったんです。

そう思っていたところ、シェアオフィスというのを偶然見つけて。しかもco-labに入っているのは私と同じようなクリエイターばかりで、ラフで和気あいあいとした雰囲気の中で働いていたのでここに決めたんです。最初は個室ではなく、好きなときにオープンスペースの空いている席を使用できるという一番安いプランから始めました。

シェアオフィスのおかげでどん底時代を乗り切る


──入ってみてどうでしたか?

結論からいうとすごくよかったです。当時はCMFデザインの市場がないどころか、CMFという言葉すら誰も知りませんでしたからそれはもうたいへんでした。

最初は仕事を取るために何軒か企業を回ったのですが、CMFについていくら説明しても「何それ? わかんない」と言われるだけなのですぐ営業回りはやめたんですよ(笑)。ですから独立して最初の1年間は本当に仕事がゼロでした。毎月赤字で、経済的にはもちろん精神的にかなりきつかった。もう本当にどん底にいるという気分でした。

でもco-labのようなオープンでいろいろな人がいる場だとひとりで落ち込んでいても、他のクリエイターが「玉井ちゃん、最近調子はどうよ?」とか「ちょっと一服する?」みたいに話しかけてきてくれたんです。それでずいぶん助けられました。もしあのとき、ひとりきりの部屋で仕事をしてたらノイローゼになっていたかもしれません。あのどん底時代を乗りきれたのはco-labに入っていたからだと思うんですよ。


──なるほど。独立した当初はかなりつらかったんですね。そのとき、独立しなきゃよかったと思ったことは?

それはないですね。確かに長らく、今、私はものすごいどん底にいるなあという感じはずっともっていましたよ。だけど、独立したことを今さら悔やんでもしょうがないし、後ろを振り返ったところでもうそこには戻れないじゃないですか。だからなんとかなるかどうかはわからないけれど、前を向いてやるしかないと思っていました。元々そういう性格でしたしね(笑)。

玉井美由紀(たまい みゆき)
1968年千葉県生まれ。株式会社FEEL GOOD creation 代表取締役/CMFデザイナー/CMFクリエイティブディレクター

武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科卒業、 株式会社本田技術研究所へ入社。四輪デザイン室でデザイナーとして数々の車のカラーマテリアル開発に携わる。S-MXで第1回オート・カラー・アワォードのファッションカラー賞受賞、シビックシリーズで第8回オート・カラー・アワォードの技術賞を受賞。2007年、プロダクトの表面材専門のデザイン事務所「FEEL GOOD creation」設立。日本ではほとんど知られていないCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)を日本で広め、日本のモノづくりを活性化させるため奮闘中。

初出日:2013.06.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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