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2013.05.01  取材・文/山下久猛 撮影/村上宗一郎

カフェ・イン・ジ・オフィスのすすめ

──ミーティングルームの隣のカフェも経営しているんですか?

はい。役員としてこのカフェの経営に携わっています。


──カフェはくつろげるいい雰囲気ですよね。1階をカフェにしてみていかがですか?

上のオフィスで仕事が行き詰まったり、社員と気まずくなると下のカフェで一杯やりながら考えるといった、モードを変えて仕事をすることができるのですごく重宝しています。そういう意味ではカフェも僕にとっては仕事場なんですよね。同時に憩いの場でもあり社員食堂でもあるんです。

隣のミーティングルームで長時間の会議をした後や取材を受けて疲れた後、「隣のカフェでちょっと一杯やりますか」とお酒を飲みながらさらに話すとまた違った発見があったりします。そういうメリットもあるんです。

一般の企業にとっても、オフィスの中にカフェがあるのはとてもいいと思いますね。というのは、カフェの店長はその会社の社員ではないけれど、社員との距離が近い人になるわけですが、そういう人には社員が愚痴やプライベート含めいろんなことを話しやすい。つまり、社長以上にその店長のところにあらゆる情報が集まり、店長に聞けばその会社の問題点が何でもわかるようになると思うからです。

Open Aの場合も社員が僕に直接言いにくいことでも店長には話しているようなので、店長に聞けば大抵のことはわかるというケースが多々あります。だから非常に助かってます(笑)。コミュニケーションの本質を見るという意味でもこういうカフェがあった方がいいと思いますね。

だからオフィス設計のプロジェクトでは「カフェ・イン・ジ・オフィス」のような企画を提案してみたりもしています。

そういう意味では自分の仕事場自体が実験なのです。東京R不動産についてはもっと実験性が高いですね。

Open Aのオフィスの1階にある「COFFEE in the HOUSE」

東京R不動産の編集・制作のマネジメントと広報を担当

──その東京R不動産について詳しくお聞きしたいのですが、東京R不動産はどのように運営されているんですか?

サイトの運営と契約の主体は不動産仲介業の免許を持ってる「スピーク」という会社で、Open Aは協力会社として編集・制作の一部を担っているという位置づけです。ちなみに僕はスピークの株主でもあります。この2社を基軸として、デザイン会社などのいろいろな会社のさまざまな人間が関わっています。


──その中で馬場さんの役割は?

言い出しっぺは僕ですが、立ち上げ当初から中心となって運営をしているディレクターは3人います。スピークの代表の吉里裕也は建築デベロッパー出身なので不動産にも交渉にも契約にも強い。もうひとりの代表の林厚見はビジネスコンサルティング会社出身なので、ビジネス構築に強い。僕は広告代理店出身で雑誌も作っていたからメディア・広報・広告分野に強い。

仕事における専門分野は違いますが、この3人はみんな建築学部出身なので建築という共通言語を持っています。だから「建築」「空間」がプラットフォーム・ベースとなって、デベロッパー経験者、コンサルティング経験者、メディア経験者で東京R不動産が組み上がっているという感じです。得意分野が重なっているところもあるけど、「ここはあいつが得意だから任せよう」というふうに役割分担ができているからやりやすいんです。

その中で僕の役割は先程も触れましたが、東京R不動産の編集・制作のマネジメントと、広報・スポークスマン的な役割です。


インタビュー後編はこちら

馬場正尊(ばば まさたか)
1968年佐賀県生まれ。建築家/Open A ltd.代表取締役/東京R不動産ディレクター

早稲田大学理工学部建築学科卒業後、博報堂へ入社。博覧会やショールームの企画等に従事。その後早稲田大学大学院博士課程へ復学、建築とサブカルチャーをつなぐ雑誌『A』編集長を務める。2003年、建築設計事務所Open Aを設立。個人住宅の設計から商業施設のリノベーション・コンバージョン、都市計画まで幅広く手がける。東京R不動産では編集・制作面を担当し月間300万PVの人気サイトに育て上げる。東北芸術工科大学准教授を務めるほか、イベント・セミナー講師など多方面で活躍。『だから、僕らはこの働き方を選んだ 東京R不動産のフリーエージェント・スタイル』(ダイヤモンド社)、『都市をリノベーション』(NTT出版)、『団地に住もう! 東京R不動産』(日経BP社)、『「新しい郊外」の家』(太田出版)、など著書多数

初出日:2013.05.01 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの