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2014年度 特集
特集2

馬搬の活用による森の健全化と林業の再生Horse Logging Furniture
プロジェクトを語る

自然環境への影響が少ない馬を使った林業手法「馬搬(ばはん=ホースロギング)」で、森から間伐材を運び出し、その木材で家具をつくる。長野県にある「アファンの森」を中心に生物多様性が豊かな森の再生活動を行っている一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団との協業により、オカムラは日本の森林の健全化と地域の林業の再生に向けたプロジェクトを進めています。

メインイメージ

プロジェクトの始まりから今後の広がりについて、C. W.ニコル・アファンの森 財団理事長の C. W.ニコル氏と、馬搬馬方(うまかた)*1の岩間敬氏を招いてお話を伺いました。

  • *1 馬方:馬に荷物を運ばせる、馬搬が可能な人、またそれを職業とする人のこと

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C. W. ニコル氏 一般財団法人 C. W.ニコル・アファンの森
財団理事長

作家、環境保護活動家、探検家。1940年、英国・南ウェールズ生まれ。1980年、長野県に居を定め、執筆活動を行うとともに、1986年より、森の再生活動を実践するため、荒れ果てた里山を購入。「アファンの森」と名付け再生活動を始める。1995年に日本国籍を取得し、2002年「一般財団法人C.W. ニコル・アファンの森財団」を設立、理事長を務めている。

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岩間 敬氏 馬搬馬方
遠野馬搬振興会
事務局長

1978年岩手県遠野市生まれ。23歳から馬搬に興味をもち、2人のベテラン馬方に師事、技術を習得。2010年、「遠野馬搬振興会」を設立。現在は農林業に従事しながら、馬搬文化と技術の継承、宣伝、普及などを目的として活動している。2011年にイギリスで開催された「馬搬技術コンテスト・シングル部門」で優勝。2012年にはこれまでの活動が認められ、岩手競馬、馬事文化賞受賞。同年、欧州馬搬選手権シングル部門で7位に入賞。

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株式会社 岡村製作所 マーケティング本部 きづくりラボ佐々木 英彦

オカムラのきづくりラボは、木材に関するあらゆることに携わる専門部署として設立されました。
家具用の新素材や製品の開発、お客様のニーズに合わせた家具の提案も行います。

  • * この記事は「エコプロダクツ2013」(2013年12月12日~14日)におけるオカムラブースでのトークイベントの模様を座談会形式で再構成したものです。

協業から生まれたプロジェクト

Q:今回のプロジェクトにいたる経緯を教えていただけますか?
ニコル:

写真エコプロダクツ2013 オカムラステージの様子

私とオカムラさんとの出会いは、2010年に長野県黒姫にアファンセンターを建てたときに、アファンの森財団が保有するアファンの森から間伐したカラマツを使い家具をつくっていただいたことがきっかけです。それ以来、東日本大震災の復興支援として「森の学校づくり」プロジェクトを行うなど多くの時間をともに過ごし、絆を深めてきました。

2012年、アファンの森財団は、アファンの森に隣接する国有林の管理を林野庁から委託されることになりました。この人工林から伐り出した間伐材を活用するために、家具のプロであるオカムラさんに有効活用をお願いしてみたのです。
Q:馬搬をやろうと思ったのはなぜでしょうか。
ニコル:

馬搬と林業復興のイメージ

この人工林は、50年前にスギを植えた後、まったく手入れをしていませんでした。間伐をきちんとしなければ、森の木は太く、大きくなることができません。なぜ間伐をしなかったのか林野庁に訊ねると、道がないから伐(き)り出せないという。
林業機械を山に入れるために道をつくらなければならず、それでなかなか間伐ができないというのですね。しかし、私は間伐のために大型の機械を入れて地面にダメージを与えることはしたくなかった。そこで思いついたのが馬搬です。馬なら整備された道がなくても木を運び出せるのではないかと。その数年前に岩間さんとお会いしていて、日本でも馬搬をしていることを知っていましたので、今回お願いして遠野(岩手県)から来ていただきました。

馬で木を運ぶことの意義

Q:世界的に馬搬は広く行われているのでしょうか。
ニコル:
海外では馬搬のことをホースロギングといいます。英国では30年前は技術者が20人ほど残っているだけだったのですが、最近は見直されて、馬搬を手掛ける会社が70社ほどあると聞きます。
岩間:
昔は日本中どこでもやっていたことなのですが、5年ほど前には、遠野周辺で馬搬ができる人、馬方(うまかた)は高齢化が進み2人にまで減っていました。今は新しく入ってきた人もいて、4人が従事しています。
Q:馬搬の特長はどんなところでしょうか。またどのくらい運び出せるものでしょうか。
岩間:
どのくらいというと「1馬力」です。よくいわれる「馬力」という言葉はここからきていますから。今回は15~20cmくらいの太さの木を一度に5、6本曳(ひ)き出しています。馬は重機と違って狭いところや斜面でも入っていけるので、育ちのよい木を残してそうでない木を伐るといった細かい選別をして間伐ができる利点があります。また、馬で搬出した後の山への影響はどうかというと、半年くらいで草が生えてどこを通って搬出したのかわからなくなるくらいの影響しかありません。真っ暗な下草も生えないような森でも、間伐されて光が差し込み、馬が歩いて掘り返すことで耕されて、新たな植物が生えてきます。馬ふんは堆肥になります。馬のエネルギー源はそのあたりに生えている草で、化石燃料も使いません。
Q:実際に木を伐り出してみていかがでしたか。
岩間:
普段は遠野を中心に馬搬をしているのですが、今回は2頭の馬と馬方で長野県までうかがいました。初めて国有林で仕事をさせていただいて、よい経験になりました。馬搬の仕事を認めていただいたことは非常にうれしかったです。

材の特性を踏まえてデザイン・機能を追求

Q:そうして伐り出した木を材としてつくられた家具が
「Horse Logging Furniture(ホースロギングファニチャー)」なのですね。
佐々木:
第一弾として「KURA(クラ)」というスツールの製作に取り組みました。しかし、伐り出した木は、残念ながら木材としてはあまりよい状態ではありませんでした。森の手入れを一切していなかったので、全体に細く、まっすぐでないものがたくさんありました。枝が残って節になっていたり、節が抜けて穴が開いてしまったりしている状態でした。無垢材として用いるのは難しかったので、使える部分を集めて集成材としてよみがえらせました。250本ほどあった材のうち、使えたのは体積にして5%くらいです。一般的なよい材だと30%くらい使えるのですが。
ニコル:
家具の材料として使わなかった部分も、一切むだにはしていません。一部は細かいチップにして、馬搬で馬が通ったルートにまきました。馬が通るのは木を運び出しやすい道ですから、おのずと起伏が少なく、人にも歩きやすい道になります。
そしてこの道を使って、森に入り手入れをすることができるようになりました。チップにもできなかった部分は、バイオマス燃料として使いました。
Q:「KURA」をつくる際にはご苦労がたくさんあったそうですが。
佐々木:

写真ニコル氏を交えた製品企画会議の様子

オカムラがつくる以上、デザイン性も機能性も完成度の高い製品にしたい。しかし、もともとスギは柔らかい木なので、あまり家具向きではない。また、材が薄く小さいので経年変化でひびが入ったり、反りやよじれが生じたりする可能性がありました。このため、集成材にする際に木目を縦横に交差させて重ね、変形をおさえています。一方で、馬搬で得られた木材を使用したスツールとして、何か馬にちなんだデザインにしたいという考えもありました。そこで今回は、座面は馬の鞍、脚は馬のあしをイメージしたデザインにし、強度を補うためにアルミとスチールを使用しました。

馬搬の広がりと地域の林業振興に向けて

Q:できあがりをご覧になっていかがでしょうか。
岩間:
「KURA」の脚の先端には鉄がありますね、馬の足裏にも蹄鉄がついていますのでまさに馬のイメージです。木と鉄、馬と鉄、そういう組み合わせがおもしろいと感じました。また「Horse Logging Wood」と焼き印が入っているのですが、馬搬で運び出したことをブランドとして利用した家具は世界で初めてだと思います。そういうことがどんどん広がってほしいですね。
ニコル:
スギはきれいであたたかい。でもちょっと柔らかいから本当は家具には適していない。だからオカムラさんはこういうハイブリッドなものをつくったのですね。頑丈できれいであたたかいスツールになりました。
佐々木:
「KURA」をつくらせていただいて、森の手入れをしていないと木材は利用が難しいものになってしまうこと、林業者とともに材を育てていくことの重要性に気づかされました。今回は材料が限られており、加工にもさまざまな工夫が必要だったこともあったので、生産数は限りがあり、また、商品としての価格は決して安いものではありません。しかし、まずは商品として世に送りだし、存在を知ってもらうことが重要です。それによって林業への理解が広がって間伐などの手入れがされるようになり、将来的には林業振興につながっていくことを期待しています。

「南会津馬搬フェス」への協力

写真「南会津馬搬フェス」に参加した
岡村製作所 専務取締役 岩下 博樹

福島県南会津地方の林業の再生と、かつて行われていた馬搬の観光資源としての活用を通じて、地域を活性化することを目的に、「南会津馬搬フェス」が2014年3月15日・16日に開催されました。
オカムラは、15日に行われたシンポジウムで馬搬から生まれた「Horse Logging Furniture」製作の過程を紹介し、C.W.ニコル氏や岩間氏とともにパネルディスカッションに登壇しました。2日目は雪が多く残るスキー場近くの森で馬搬の実演が行われ、子どもを含むたくさんの見学者が集まりました。

Horse Logging Furniture「KURA」ができるまで

図

「KURA」のデザインポイント
座面は馬具の一つ「鞍」、脚は馬のあしをイメージしたデザイン。
  1. 写真Point 1欧州では幸運のしるしとされるニコル氏発案の蹄鉄をかたどったマーク(左)、アファンの森財団が管理する森からの木材であることを示す「Afan」の焼き印(中央)、馬搬による木材であることを示す焼き印は馬が木を引くデザイン(右)

  2. 写真Point 2節が入っているのもこの材ならでは

  3. 写真Point 3使わないときはスタッキングできる(重ねておける)形状